アート

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  • 2024.05.21

不気味なのになぜかハマる! 日本ホラー漫画家を代表する存在・伊藤潤二の大規模展 | ananweb – マガジンハウス

緻密なタッチでグロテスクな世界を描くホラー漫画家・伊藤潤二。彼の作品は世界30の国と地域で翻訳され、漫画のアカデミー賞とも呼ばれる米アイズナー賞を4度受賞。2023年からNetflixでは彼の漫画をアニメ化した『マニアック』の配信もスタートするなど、今や日本ホラー漫画家を代表する存在だ。 世界が認めるホラー漫画家の不気味と滑稽の世界観に迫る。 そんな伊藤初の大規模展「伊藤潤二展 誘惑」が話題を呼んでいる。「当館には伊藤作品のファンもおり、念願の企画展が実現しました。伊藤作品にはホラー漫画という枠では語り尽くせない面白さがあります。怖さとユーモアを自在に行き来する展開、ユニークなキャラクター造形、何といっても美麗な作画に圧倒されます」(世田谷文学館学芸員・加藤信元さん) そんな魅力を伝えるため、会場では様々なアプローチで空間を演出。序章で伊藤の海外での輝かしい受賞歴に触れた後は、第1章に代表作「富江」を中心に美醜が共存した作品を、第2章では、「死びとの恋わずらい」「うずまき」「双一」「首吊り気球」など、ごくありふれた日常に存在している恐怖をテーマとした作品を取り上げる。第3章では「中古レコード」「アイスクリーム・バス」「血玉樹」などを中心に迫力ある扉絵を、最終章では「伊藤潤二の猫日記 よん&むー」「ノンノン親分」などの作品を通じて、5歳から楳図かずおや古賀新一らの怪奇漫画に熱中し、自らも怪奇漫画を描き始め、歯科技工士から漫画家へと転身した伊藤の幼少期から現在までを、愛用品なども含めて紹介する。 特に今回はメインビジュアル《富江・チークラブ》や《禍々しき桐絵》など描きおろしも多数。また「うずまき」をモチーフとした体験型メディアアートや、作品に登場する身長2m超えの激痩せファッションモデルの“淵さん”と遭遇できるコーナーもユニークだ。 不気味なのになぜかハマる伊藤作品。かつてない規模で開催される本展を見ればさらに、その特異性、唯一無二の世界観の虜になりそうだ。 精緻な画力を満喫できる代表作「富江」。入り口ではメインビジュアル《富江・チークラブ》がゲストを迎える。富江 ©ジェイアイ/朝日新聞出版 「富江」は美しい黒髪とホクロが印象的な妖艶な美女。彼女の魅力に狂った男たちは、異常な殺意を向けるが…。富江の世界 ©ジェイアイ/朝日新聞出版 級友の首吊り自殺後、突然自分そっくりな首の気球が迫ってくる。2023年Netflixでアニメ化された傑作。首吊り気球 ©ジェイアイ/朝日新聞出版 意味もなく謝罪する転校生が来た。彼が土下座するとなぜか脳が溶け出す生徒が続出。謝罪の真意とは…。溶解教室 ©伊藤潤二(秋田書店)2014 伊藤潤二展 誘惑 世田谷文学館 2階展示室 東京都世田谷区南烏山1‐10‐10 開催中~9月1日(日)10時~18時(入場は閉場の30分前まで) 月曜(7/15、8/12は開館)、7/16、8/13休 一般1000円ほか TEL:03・5374・9111 いとう・じゅんじ 1963年、岐阜県生まれ。ホラー漫画家。代表作の「富江」シリーズや「うずまき」など映像化された作品も多数。2023年、第50回アングレーム国際漫画祭で特別栄誉賞を、サンディエゴ・コミコンでインクポット賞を受賞。©東川哲也/朝日新聞出版 ※『anan』2024年5月22日号より。文・山田貴美子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/549131/ Source: ananweb

  • 2024.05.05

モフモフ系ワンコぬいや地獄図ステッカーも…! 東京駅エリアで絶対欲しい美術館グッズ | ananweb – マガジンハウス

現在、東京駅エリアで開催中の展覧会を2つピックアップします。静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)の特別展「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」と、アーティゾン美術館の「ブランクーシ 本質を象る」です。それぞれのミュージアムショップで買えるユニークなグッズもご紹介! 特別展「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」 展示室入り口 ※本記事の写真は、主催者の許可を得て撮影しています。 【女子的アートナビ】vol. 332 静嘉堂@丸の内で開かれている本展では、幕末明治期を生きた天才絵師・河鍋暁斎(1831~89)と、探検家や著述家など多彩な才能を持つ松浦武四郎(1818~88)の二人にフォーカス。暁斎の絵画を中心に、武四郎が集めた古物などの文化財や資料も展示しています。 河鍋暁斎は、7歳のとき絵師の歌川国芳に入門。さらに10歳で狩野派の絵師に師事し、40歳前後で絵師としての地位を確立。「画鬼」と呼ばれた絵師で、あらゆるものを描くことができ、出版物の挿絵から写実的な作品まで幅広く手がけ活躍しました。 松浦武四郎は、蝦夷地(北海道)の調査を6回行った探検家で、北海道の名付け親としても知られています。明治新政府から開拓判官に任命されていましたが、政府の政策に反対して職を辞したあと、いっそう古物蒐集に情熱を注ぎました。 武四郎は暁斎の画力を気に入り、自分の出版物に挿絵を依頼。さらに、本展の必見作で今では重要文化財になっている《武四郎涅槃図》も、武四郎が暁斎に注文して描いてもらったものです。 中央:重要文化財 河鍋暁斎《武四郎涅槃図》明治19年(1886) 松浦武四郎記念館蔵 プレス内覧会では、本展の企画を担当した静嘉堂文庫美術館学芸員の吉田恵理さんが、《武四郎涅槃図》について次のように解説しています。 吉田さん 本作品は、武四郎が存命中に自分自身をお釈迦様に見立てて河鍋暁斎に描かせた大胆不敵でユニークな絵画です。作品のなかでは、トレードマークの大首飾りをかけ、幸せそうな顔をして寝ている武四郎の姿が描かれています。武四郎の周りには、彼が集めた観音様のお像やさまざまな彫刻、人形なども描かれています。さらに、本作品のなかに登場する大首飾りや古物の一部も、今回一緒に展示しています。武四郎の理想の世界を存分にお楽しみください。 欲しい…!《地獄極楽めぐり図》ステッカー 河鍋暁斎《地獄極楽めぐり図》 明治2~5年(1869~72) 静嘉堂蔵 ※会期中場面替えあり 本展では、河鍋暁斎の《地獄極楽めぐり図》も展示されています。 本作は、日本橋の小間物問屋・勝田五兵衛の愛娘である田鶴(たつ)の追善供養のために描かれたもの。14歳で亡くなった少女が、地獄を見物したり、閻魔大王と宴会したりしながら極楽にたどり着く奇抜な物語です。現世と同じようにあの世でも楽しく過ごす少女の姿が生き生きと描かれた本作品は、暁斎の代表作のひとつです。 《地獄極楽めぐり図》ステッカー 2種 各¥700 静嘉堂のミュージアムショップでは、この《地獄極楽めぐり図》をモチーフにしたステッカーも販売中。「旅立ち~再会編」と「冥界見物~極楽往生編」の二種類あり、仏様に見守られながら極楽に向かう田鶴のさまざまな姿がステッカーになっています。小さなグッズですが、暁斎の鮮やかな色も再現され、画力の高さが感じ取れます。 「ブランクーシ 本質を象る」 コンスタンティン・ブランクーシ《接吻》1907-10年、石膏、石橋財団アーティゾン美術館蔵 JR東京駅の八重洲中央口から徒歩5分で行けるアーティゾン美術館では、現在「ブランクーシ 本質を象る」が開かれています。 本展では、ルーマニア出身の彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシ(1876~1957)の彫刻作品を中心に、絵画や写真作品も展示。ブランクーシ・エステートをはじめ、国内外から集められた作品約90点が紹介されています。 20世紀彫刻を代表する作家のひとりであるブランクーシは、ブカレスト国立美術学校に学んだあとフランスに渡り、ロダンのアトリエで助手を務めます。しかし約一か月でロダンのもとを離れ、独自の造形を追求して前衛的な作品を生み出し、アメリカなどで高く評価されました。 アーティゾン美術館学芸員の島本英明さんは、本展について次のように解説。 島本さん ブランクーシは、まとまった数の作品を集めるのが簡単ではないアーティストです。今回は国内外の美術館や機関、個人コレクターなどからお借りし、彫刻作品を23点揃えることができました。特に、早い時期の作品が充実しています。また、ブランクーシにとっては写真も大切な要素のひとつでした。彼は自分の作品を写真に撮り、創作を再解釈していました。会場では、彫刻を中心に、関連する写真や絵画をあわせて展示しています。 かわいい…!モフモフ系ワンコのぬいぐるみ アーティゾン美術館ミュージアムショップ 美術館のミュージアムショップでは、本展のオリジナルグッズが充実。アーティゾン美術館が所蔵するブランクーシの傑作《接吻》のグラスやTシャツ、キーホルダーなどもあります。 ぬいぐるみ¥1,650 ちょっと変わり種のグッズは、モフモフ系ワンコのぬいぐるみです。これはブランクーシの愛犬をモチーフに製作されたもので、お顔もキュート。 ブランクーシは「白」にこだわりがあったそうで、アトリエの床も壁も白く、自分の服装も愛犬も白でした。本展の会場では、彼のアトリエをイメージした展示室もあるので、ぜひそちらで「白」へのこだわりも体感してみてください。 Information 特別展「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎 『地獄極楽めぐり図』からリアル武四郎涅槃図まで」会期:2024年4月13日(土)~6月9日(日)場所:静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)開館時間:10:00~17:00※土曜日は 18:00、第4水曜日は20:00 閉館※入館は閉館の30分前まで休館日:月曜日、5月7日(火)※ただし4月29日(月・祝)、5月6日(月・祝)は開館入館料:一般 ¥ 1,500、大高生 ¥ 1,000、中学生以下無料  「ブランクーシ 本質を象る」会期:2024年3月30日(土)~7月7日(日)場所:アーティゾン美術館(6階展示室)開館時間:10:00~18:00(5月3日を除く金曜日は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで休館日:月曜日(4月29日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日入館料:ウェブ予約チケット¥1,800円、窓口販売チケット¥2,000(予約枠に空きがあれば、美術館窓口でもチケットをご購入いただけます) 学生無料(高校生以上要ウェブ予約) 同時開催:石橋財団コレクション選(5・4階 展示室)特集コーナー展示 清水多嘉示(4階 展示室) https://ananweb.jp/anew/544100/ Source: ananweb

  • 2024.05.01

矢部太郎「気軽にOKしたのですが… (笑) 」 初の大規模展覧会のために約100点描き下ろし! | ananweb – マガジンハウス

お笑い芸人としての活動はもちろん、平安時代を舞台にした大河ドラマ『光る君へ』の出演や、週刊漫画雑誌での連載「楽屋のトナくん」など、以前にも増して活躍の場を広げているお笑い芸人・矢部太郎さん。そんな彼の新境地ともいえる初の大規模展覧会が、ついに始まった。 大切な人とのふたりの時間を思い起こす展覧会になれば。 「実は展覧会なんて考えたこともなかったんです。オファーをいただき、今まで僕が描いた漫画をまた違った形で紹介するというコンセプトだったので、じゃあ僕が何かすることはなさそうだなと。あ、いいですねと気軽にOKしたのですが…(笑)」 東京・新宿区の外れにある一軒家で暮らす、矢部さんと大家のおばあさんとの交流を描いた漫画『大家さんと僕』。会場には物語の名場面とともに、矢部さんが同展のためにアクリル絵の具で制作した約100点の描き下ろしイラストが展示される。 「冗談で100枚くらい描き下ろします? と言ったら、ぜひやりましょうと即決されてしまって(笑)。でもデジタルで描くのと違って、絵の具で描くのは手を動かすのが楽しすぎて、アドレナリンが出ちゃってもう眠れなくなるほど。きっと紙だから失敗できない緊張感があるんでしょうね。だから毎日早起きして絵を描いて、その後、平安時代(大河ドラマの現場)に行っていました」 また会場では、漫画の中にある「ライトとおやき」の紙芝居が上映されるほか、「空飛ぶふたり」も映像化されるなど、作品をあらゆる方法で体感できるインスタレーションがそこここに。もちろんこの中には、矢部さん発案のプランもあるという。 「僕が大家さんとよく行った蕎麦屋にあった、10円玉を入れて使う昔の公衆電話。これが会場に設置されていて、来場者はその電話を取ると受話器からランダムに僕からのお礼の言葉が聞こえてくる仕掛けです。他にも大家さんの家に設置されていた、思い出の感知ライトも登場します」 と、来場者は作品の名場面を追体験できる演出に。漫画を読んだことがない人でも楽しめる内容だ。 矢部さんが絵を好きになったのは、絵本作家である父・やべみつのり氏の影響が大きい。そこで本展では、彼の作品『ぼくのお父さん』に関するコーナーも展開。父による家族絵日記「たろうノート」や、幼い矢部さんが父の勧めで始めた「たろう新聞」の現物が初公開され、当時住んでいた東京・東村山市での暮らしぶりを体感できる映像インスタレーションも設置。ユニークな矢部さんの生い立ちも知ることができる。 そんな矢部さんの創作意欲をかき立てるものとは一体何なのだろう? 「創作の源は? と聞かれれば、やっぱり大切な人のことが思い浮かびます。例えば大家さんには大家さんなりの人生があって、彼女が大切にしているものがあった。それは世間の価値観とは少し違うかもしれないけれど、すごく素敵だなと僕には思えた。もしかすると、単身で高齢のおばあさんと売れない芸人の話は幸せではないと捉えられることもあるかもしれないけれど、そこには本人が実感している幸せがある。こういったことこそ、描く価値があることなんじゃないかと思うんです」 漫画家になりたかったのではなく、心温まる人との思い出を自分なりの方法で伝えようと思った。そんな思いから絵を描き始めて早7年。そのアプローチは画業のみならず、お笑いや俳優業とも共通していると語る。 「出来上がったものを見てもらう以上に、僕は純粋に創作の過程が面白いタイプ。それはお芝居も同様で、稽古が一番楽しい、みたいな。この展覧会でも初めての経験ができて、一番楽しい思いをしているのは僕なんじゃないかな。観てもらう人には申し訳ないけど(笑)。『ふたり』というタイトルは、僕が漫画を描く時に一番大切にしているキーワード。大家さんやお父さんのように、僕の大切な人との二人の思い出を描いた漫画なので、観る人にとっても、大切な人との二人の時間を思い出すきっかけになれば嬉しいですね」 『大家さんと僕』(新潮社)2017年「おかえりなさい」より 『マンガ ぼけ日和』(かんき出版)2023年「お金盗ったでしょう?」より ふたり 矢部太郎展 PLAY!MUSEUM 東京都立川市緑町3‐1 GREEN SPRINGS W3 2F 開催中~7月7日(日)10時~17時(土・日・祝日~18時、入場は閉館の30 分前まで) 会期中無休 一般1800円ほか TEL:042・518・625 ©Taro Yabe やべ・たろう 1977年生まれ、東京都出身。芸人、漫画家。’97年に「カラテカ」を結成。処女作『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。新刊『プレゼントでできている』(新潮社)も好評発売中。 ※『anan』2024年5月1日号より。写真・土佐麻理子 取材、文・山田貴美子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/546204/ Source: ananweb

  • 2024.04.27

90歳のレジェンドイラストレーター・宇野亞喜良「夢中になって日3枚描くこともあります」 | ananweb – マガジンハウス

日本のイラストレーションを牽引してきた立役者、宇野亞喜良さん。グラフィックデザイン、舞台美術、絵本、俳句など活動は多岐にわたり、現在、過去最大規模の「宇野亞喜良展」が開催中。今年90歳になったレジェンドにお話を聞いた。 ――『anan』は宇野亞喜良さんに長年お世話になっており、1970年、創刊間もない頃は「美術」としてファッションページにも関わっていらしたんですね。 (’70年11月発行の17号を見ながら)懐かしいですね。フェリーニの映画が好きだったので、“不思議の国のアリス”というテーマで人工美を追求するようなイメージで作りましたね。ダンサーや自称「女優」の男性や演劇実験室天井棧敷の役者などにモデルになってもらいました。 ――創刊第2号では宇野さんのアトリエにてファッション撮影。ご自身も登場なさっています。 そんなこともありました。写真の中の、壁にかけてあるのは横尾忠則の作品です。’60年代に買ったのだけれど、彼はこの絵が気に入って展覧会にしょっちゅう出すものだから、ほとんど僕の家にはなかったんです(笑)。 ――横尾忠則さんとは’60年代に一緒にイラストレーターの事務所を作られた仲。和田誠さんとも交流があったそうですね。 横尾君と僕はその前に日本デザインセンターというデザイン会社にいました。当時のボスは東京オリンピックのポスターをデザインした亀倉雄策さん。和田君は広告制作会社のライトパブリシティに勤めていて、勤務先がみんな銀座だったから、昼にはよく一緒に食事をしたりお茶を飲んだりしていましたね。 ――その後、3人でアニメーション映画も作られました。そうそうたるメンバーですね。 デザインセンターを辞める話を横尾君としていた頃、銀座に「みゆき族」というのが出始めていたんです。喫茶店で話をしていると、セーラー服の女の子が紙のバッグ(紙袋)を持って店に入ってくる。そしてトイレに入って出てきたら違う衣装になっているんです。長いスカートの裾にフリルがついていたり、装飾的でした。ヒールは履いていなかったな。お母さんに作ってもらったのか、知り合いの洋裁店に頼んだのか、オリジナルの服装ですごくかわいかった。銀座という街に適したファッションをして遊んで、制服に着替えて帰る。場に合わせて日常とは違う姿に変容する様が面白いなと思って見ていました。そんな時代です。 エロティック、背徳的なものに惹かれた。 ――宇野さんは名古屋のご出身。小さな頃から絵を描き、お母様が経営していた喫茶店に作品がたくさん飾られていた。16歳のときに新聞に取材されたのだとか。 坊主頭に学生服を着ている写真が新聞に載りました。父親が今でいうインテリアデザイナーをしていて、それを手伝っているうちにビジュアル系の仕事に興味が湧くようになったんです。お店の装飾をするときに、辞書で調べながら、看板の文字を僕が描いたり。名古屋って、喫茶店で時間を過ごす人が多いんですよね。 ――喫茶店文化の街と聞きます。 当時、母の店は小説新潮や文藝春秋、週刊誌や新聞各紙を揃えていて、お客さんはそれらを読みながらコーヒーを飲むんです。僕も子供の頃から、週刊誌に載っていた舟橋聖一の好色な小説を読んだりしていました。 ――「子供は読んではダメ」と言われなかったのですか? 僕のウチはそういうことは全く言われませんでしたね。 ――絵を描き始めたのはいくつくらいだったのでしょう? どこを描き始めというのかわからないけれど、名古屋が空襲にあうというので、小学2年生~6年生に疎開をしていたんですね。疎開先から家に葉書を出すのに、文章を書くのが苦手で、その日に食べたさつまいもなんかの絵を描いて送ってました。僕はサウスポーなので、小学生の頃は「左団子郎」なんてあだ名をつけられていました(笑)。顔が丸かったんです。 ――宇野さんの絵は細部に不思議な要素が加えられていて、様々な物語を想像させられます。そしてエロティックな魅力があります。 エロティックなものは好きですね。子供の頃から、雑誌の連載小説の裸の挿絵や、週刊誌のヌード写真を目にしていました。中学から高校まで大人に交じって「クロッキーの会」に通っていたんです。会費を払って、女性をモデルにデッサンをするのですが、ベレー帽をかぶったおじさんがいて、さぞかし上手だろうとスケッチブックをのぞいてみたらすごく下手だった。つまり、絵描きのふりをして、ストリップよりも安い料金で女性の裸を見に来ていたんです(笑)。 ――オマセな少年だったんですね。 ませていたのでしょうかね。中学の同級生に不良が一人いて、娼婦の家に泊まって、そこから登校していました。カッコいいなあと憧れました。背徳的なニュアンスがあるものが好きですね。 ――勉強はお好きでしたか? いや、ダメだったと思いますよ。疎開先からの葉書も絵で誤魔化すくらいですから。母の店にはいろんな雑誌が置いてあったので、いわゆる絵画よりも挿絵に惹かれていましたね。あらゆる挿絵をたくさん模写していました。雑誌名と何年何月号の何ページまで書き写して、自分なりのビジュアル辞書のようなものを作ったんです。「絵の辞書」と書くのもカッコ悪いから、和英辞典で調べて初めて「イラストレーション」という言葉に出合い、「Dictionary of Illustration」と英語で書きました。 ――当時からグラフィックデザインやレイアウトに意識が向いていたのですね? そういうところもあったのかもしれません。『少年』と『少年倶楽部』という雑誌をとっていて、妹は『少女』と『少女倶楽部』をとっていたんです。僕はその両方を読んでいました。そのうち妹は中原淳一さんの『それいゆ』を読み始めた。中原さんや内藤ルネさん、長沢節さんらの絵を見ていました。デザイナーになって上京してから、そういう方々にお会いできたのは嬉しかったですね。幼少期から出版物にたくさん触れていたから、イラストレーションを描くようになったのでしょうね。 ――作品が印刷物になるときに原画に忠実であることを求める画家が多いのに対して、宇野さんは印刷物として魅力的であればいいというお考えだと伺いました。 もともと印刷物が好きというのもありますが、印刷技術によって、絵が変わって見えたり、変容していくことが僕のテーマの一つでもあると思います。 ――演劇のポスターや、舞台美術も多く手がけてこられましたが、演劇に興味を持つようになったきっかけは何だったのでしょう? 父親は昔、NHKの放送劇の劇団員だったことがあったらしいです。僕はその姿を見聞きしていないのですが、昔の写真を見ると、父が菊池寛全集を手にしていたり、本棚にはたくさんの戯曲がありました。子供の頃は、知り合いのつてで、御園座という劇場の照明室から歌舞伎を観せてもらったりしていたんです。劇団民藝が戦後最初にやった公演も観に行きましたし、疎開から名古屋に戻ってから上京する21歳まで、歌舞伎、松竹新喜劇、前進座などあらゆる種類の舞台を観ていましたね。 ――演じてみたいと思ったことはないのですか? 役者の側に回ろうと思ったことはないですね。芝居が好きで、若い頃、演劇をやっている先輩に頼まれて絵を描いたのだけれど、「君の絵はセンチメンタル。これからの日本を建設的に考えるときに、こういうセンチメンタリズムではダメだよ」と言われた。自分の思想で日本をどう組み立てていくかなど考えないで、スポンサー付きの、人の言いたいテーマを請け負ってやっていくデザイナーだったら文句はないだろうというふてくされた気持ちが芽生えました。 ――宇野さんは、’70年代の演劇や雑誌に社会的影響力があり、とても熱かった時代を第一線で体感されています。今や全てがスマートフォンの中で完結しているような時代。現在のカルチャーについてはどう思われますか? 社会を俯瞰する人にとっては当然いろんな思いがあるのでしょうが、その気になって情報を集めればきっとどのジャンルも面白い現象は生まれているのだと思います。ただ僕は不勉強で携帯も持っていないので(笑)。でも、先日『ゴジラ‐1.0』が米国アカデミー賞(視覚効果賞)を獲りましたよね? 日本の映画がアメリカで認められるようになるなんて思いませんでした。初代の『ゴジラ』は当時の同僚だったデザイナーの木村恒久と観ました。彼はすごく興奮していたけれど、僕はもっとゴジラを巨大に見せるアングルで撮ればいいのにと不満があった。新しいゴジラは進化しているそうなので、観に行きたいと思っています。 ――70年以上描き続けてこられて、絵に対して興味を失うことはなかったのでしょうか。 きっとあったのでしょうけどね。そういう気持ちをうまく誤魔化して通用しちゃったのでしょうね。演劇や映画が好きで、虚構を創ることが好きだったから、なんとかやっていきたいという一種の芸人根性のようなものもあったのかもしれません。木村恒久が僕のことを書いた文章があって、谷崎潤一郎の小説の『刺青』の清吉に似ていると。女を眠らせている間に刺青を彫る男です。最後に「宇野亞喜良は幇間(ほうかん)がいちばんピッタリだろう」と締められていた。いわゆる太鼓持ちです。媒体がお座敷。スポンサーを喜ばせ、女性たちも楽しませて、自分も結構それが気に入っている。うまい比喩だなあと思いましたね。 ――制約なしに自発的に絵を描かれることはあるのですか? それが案外ないんですよ。スポンサードされ、テーマを与えられて、それをどう表現するか考えるのが好きです。 ――描くことは今も楽しいですか。 アイデアがまとまるまでは時間がかかりますけど、楽しい地点まで辿り着くと面白いです。夢中になって日3枚描くこともあります。アナログなので、絵をいろんなサイズにコピーして、切り貼りしながら、こうして遊ぶみたいに一枚のポスターを作り上げています。 宇野さんのこれまでの膨大な仕事を振り返る「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」が東京オペラシティ アートギャラリーにて6月16日まで開催中。学生時代のスケッチから、グラフィックデザイナーとしての仕事、アニメーション映画、ポスター、絵本、版画、装丁、立体作品やプロデュースした舞台関係の作品まで幅広く展示。美しく耽美な世界を堪能できる。TEL:050・5541・8600 うの・あきら 1934年生まれ、愛知県出身。’55年に上京。カルピス食品工業、日本デザインセンターなどを経てフリーに。’60年代には寺山修司主宰の演劇実験室天井棧敷などのアングラ演劇ポスターや舞台美術を担当。’90年代は舞台の美術監督を務めたり、「左亭」の俳号で俳句とのコラボレーション作品を発表。’60年日宣美展会員賞、2008年日本絵本賞、’15年読売演劇大賞選考委員特別賞ほか受賞多数。1999年に紫綬褒章、2010年に旭日小綬章を受章。 ※『anan』2024年5月1日号より。写真・玉村敬太 インタビュー、文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/546192/ Source: ananweb

  • 2024.04.24

アートな街“東京丸の内”に最新アート作品が集結! 無料で楽しめるGW穴場スポット | ananweb – マガジンハウス

東京・丸の内の行幸地下ギャラリーで、若手アーティストの作品が集まる展覧会「ART AWARD TOKYO MARUNOUCHI(アートアワードトーキョーマルノウチ) 2024」が開催。入場無料で最新アートを見られる注目の展覧会をご紹介! 最新アート20点が集結! アートアワードトーキョー丸の内 2023 グランプリ受賞作品 浅野克海「この世界、魂を震わすモノ」 【女子的アートナビ】vol. 333 「ART AWARD TOKYO MARUNOUCHI(アートアワードトーキョーマルノウチ) 2024」(以下、AATM)とは、若手アーティストの発掘・育成を目的とした現代美術の展覧会です。 今年で18回目の開催となるAATMでは、日本全国にある主要な美術大学・芸術大学・大学院18校からノミネートされた147点の作品から選ばれた20点を展示。初日となる4月25日(木)には、グランプリなど各賞が発表され、丸ビル1Fマルキューブで表彰式が行われます。この表彰式は、オープンスペースで開かれるので、誰でも観覧可能です。(詳しい日時は、最後のInformation欄でご確認ください) AATMの会場となる「行幸地下ギャラリー」は、JR東京駅の地下道と直結。地下鉄丸ノ内線の改札を出てすぐの地下通路にあります。まさに駅チカで、しかも入場無料。東京に遊びに来たついでに、気軽に立ち寄れる場所です。 アート界のプロが厳選! 会場イメージ(昨年の様子) 本展で審査員を務めるのは、美術館の学芸員や芸術大学の教授、ギャラリー代表など7名の専門家の方々です。 審査員のひとり、東京都現代美術館 学芸員の藪前 知子さんは、一次審査を終えたあと次のように述べています。「今回の審査では、コロナ禍の特殊な環境の中で制作の第一歩を踏み出さなくてはならなかった世代が、どのように独自の表現に到達しているのかにおのずと注目することになりました。空間の欠落や身体の痛み、外界との違和感が一層研ぎ澄まされているのを感じ、とても刺激を受けました」 ラーメンのアートも…! 磯崎海友《ラーメン依存症》Photo: Takafumi Kato では、今回展示される20作品のなかから、いくつかピックアップしてご紹介していきます。 まずは、依存をテーマにしたユニークな版画作品《ラーメン依存症》。色彩や線のタッチなど、一見するとおしゃれなイラスト風なのですが、ラーメンをわしづかみにして口に含む女性の姿はけっこうグロテスク。シャワーからも水の代わりにラーメンが流れていて、異様な光景です。 作者の磯崎海友さん(多摩美術大学 大学院)は、ご自身の制作について次のよう述べています。「依存を描くことを通して、人の生き様を垣間見る。生きることを見つめる。私にとってはその行為自体がとてもポジティブなことだ。」 本展では依存に関する他の作品も展示予定です。 原ナビィ《ぶっちぎり》 続いては、力強い作品《ぶっちぎり》。げんこつの描写にすごいパワーを感じます。作者の原ナビィさん(東京藝術大学)は、本作について「ぶっちぎりの絵。楽しんで描いた。」とコメントを発表。作品もコメントもインパクトがあります。 山口遼太郎《そら ひかり》 また、本展では、絵画だけでなく立体作品も展示されます。《そら ひかり》は、静謐な雰囲気が漂ってくる不思議な陶芸作品です。制作した山口遼太郎さん(京都市立芸術大学 大学院)のコメントは、次のとおり。「日常に溢れる小さなひかりをモチーフに、陶土で小さく繊細な造形を行った。静かな場所にキラッと何かが光る場面や風景を表現した。」 鈴木晴絵《〈あなたのための森〉積み木のチェック》Photo: 古賀 慧道 次の作品《〈あなたのための森〉積み木のチェック》も立体作品。積み重ねた小さな木材の上に、かわいい木のオブジェがちょこんと乗っていて、素朴なフォルムですが何か惹き付けられます。本展では、版画と立体を組み合わせたインスタレーションによって、素朴さの奥に潜む作家の世界を表現します。 作者の鈴木晴絵さん(女子美術大学 大学院)は、次のような詩的なコメントを寄せています。「事物に意味を付け縛るのは私。それを刻み、複製し、重ね合わせる。いつのまにか私から解放され森になる。あなたのための森」 ※2024年3月卒業・修了時点の大学名を明記しています。 アーティストに質問&感想もシェアできる! また、開催中のアートイベントを見つけられるスマートフォンアプリ「PINTOR(ピントル)」を使えば、本展で展示されている作品の解説を読むことができます。 さらに、作品について質問を投稿すると、アーティストから回答をもらうことも可能(※一部参加作家を除く)。ほかの来場者と感想をシェアすることもでき、より深く楽しいアート体験ができます。 ぜひ会場で! 本展では、全20作品が会場でどのように展示されるのかも見どころのひとつです。ネットの画像だけで作品の迫力や魅力は伝えきれないので、ぜひ現地でアートが放つエネルギーを体感していただきたいです。 また、本展会場からすぐ近くにある「丸の内仲通り」付近には、草間彌生、ヘンリー・ムーア、舟越桂など世界的アーティストたちの彫刻やオブジェ全19点があちこちに展示されています。もちろん、これらの作品も無料で鑑賞できますので、ぜひ今回の若手アーティストたちの作品と一緒にご覧ください。 Information 会期:2024年4月25日(木)~5月12日(日)11:00~20:00※最終日のみ18:00まで※観覧可能時間は変更になる場合がございます※4月25日(木)丸ビル1F マルキューブにて表彰式を行います。(16:00~17:00)展示会場:行幸地下ギャラリー ※入場無料 【審査員】(五十音順)今村有策氏(東京藝術大学大学院美術研究科 教授)木村絵理子氏(弘前れんが倉庫美術館 館長)後藤繁雄氏(編集者、クリエイティブディレクター、京都芸術大学 教授)小山登美夫氏(小山登美夫ギャラリー 代表、日本現代美術商協会 副代表理事)建畠晢氏(埼玉県立近代美術館 館長)藪前知子氏(東京都現代美術館 学芸員)野口玲一氏(三菱一号館美術館 学芸員)   https://ananweb.jp/anew/544630/ Source: ananweb

  • 2024.04.03

「未来のかけら」を探そう! 身体拡張の実験ほか、最先端の研究と出合える展覧会 | ananweb – マガジンハウス

21世紀が始まって四半世紀もたたないうちに、私たちの生活を一変させる製品やサービスが続々と普及した。例えばパソコン、スマホ、SNSなど。近い将来こうした革新的な発明品が再び登場するとしたら、世界はどんな広がりを見せるだろう? 科学とデザインが出合い、生まれる「未来のかけら」を探して。 本展「未来のかけら:科学とデザインの実験室」のディレクターを務める山中俊治さんは、腕時計から家電、鉄道車両まで幅広くデザインを手掛ける一方、2001年以降は先端技術の研究者たちとプロトタイプ(試作モデル)の作製に取り組んできた。東京大学に着任してからは「Design‐Led X(価値創造デザインプロジェクト)」を始動。実用化以前の科学的知見や技術に形を与え、未来を探る試みに力を注ぐ。 会場では研究室から生まれたプロトタイプやロボットに加え、7組のデザイナー・クリエイターと科学者・技術者によるコラボレーション作品を展示。例えば約100人の研究者が携わる「稲見自在化身体プロジェクト」では、人間がロボットや人工知能と「人機一体」となり、従来の運動能力や知覚を超えて行動する「自在化」を目指す。こうした身体拡張の実験のほかにもバイオ工学、構造形態学などの最先端の研究が具体化、実装化されて現れる。おそらくこのうちのいくつかが未来を形作るピースになるのだ。そのかけらを私たちは見つけられるだろうか。 山中研究室+稲見自在化身体プロジェクト「自在肢」 荒牧悠+舘知宏「座屈不安定性スタディ」 山中研究室+新野俊樹+鉄道弘済会義肢装具サポートセンター他「Rami」(撮影:加藤康) 「未来のかけら:科学とデザインの実験室」 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2 東京都港区赤坂9‐7‐6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内 3月29日(金)~8月12日(月)10時~19時(入場は18時30分まで) 火曜休 一般1400円ほか TEL:03・3475・2121 ※『anan』2024年4月3日号より。文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/540212/ Source: ananweb

  • 2024.04.01

限定のレアグッズも販売! 誕生55周年記念『セサミストリート』の企画展 | ananweb – マガジンハウス

1969年にアメリカ発の子供向けテレビ教育番組として制作された『セサミストリート』。ニューヨーク・マンハッタンにある架空の通りを舞台に、個性豊かなモンスターと様々な人間たちが繰り広げるこの番組は、子供たちに笑いと学びを届けている。放送開始以来、世界150以上の国と地域でオンエアされ、今では絵本やグッズ、新作アニメーションやYouTubeなども展開。現在でも各地に熱烈なファンを持つ長寿番組だ。 世界150か国以上で愛される長寿番組の世界観に浸る。 その誕生55周年を記念し、世界観と魅力を体感できる企画展「誕生55周年記念 Hello! セサミストリートの世界展」が始まった。会場では、放送開始当時の映像から最新の映像はもちろん、実物のパペット、普段見ることができない舞台裏や貴重な資料などを数多く織り込んだ体感型展覧会となっている。 展示は7つのテーマで構成。例えば、資料や写真、映像で歴史を振り返る「セサミストリートを識る」、番組音楽に注目した「セサミストリートを聴く」、パペットを動かす舞台裏にフォーカスを当てた「セサミストリートの裏側を覗く」のコーナーなど。なかでも注目は、日本初展示となるクッキーモンスターのキッチンカー。これはモンスターお料理隊であるクッキーモンスター&ゴンガーのパペットを乗せたキッチンカーが、特撮用街並み映像の中に登場した立体展示で、本展のアイコンともいえる存在だ。また、住民たちを名場面とともに紹介する「セサミストリートに出会う」では、生後13か月の赤ちゃん時代のかわいいベビーエルモのパペットも日本初展示。現在は3歳半とプロフィールで紹介されているから、これを見れば、キャラクターも番組の中で成長を遂げていることがよくわかるはずだ。 セサミストリートの住人たちは容姿も性格も様々。例えば2017年から番組に新キャラクターとして登場したジュリア。自閉症の特性がある女の子だ。彼女のパペットを操演しているのが、実際に自閉症の息子がいるステイシー・ゴードンであることも話題になった。番組は、様々なバックグラウンドを抱えたキャラクターたちが共存することで、人間とはそれぞれに違っていること、多様な人々からなる社会で、お互いを尊重して生きることの大切さを子供に伝えている。この番組がこれほど長く愛されているのは、そのメッセージが子供だけではなく、実は大人の心にも深く刺さるからかもしれない。 クッキーモンスターのキッチンカー 体感型展覧会の主役ともいえるのがクッキーモンスターのキッチンカー。これを受けてショップでは日本初となるオフィシャル移動物販車「セサミストリートトラック」にてオリジナルグッズも販売。 「セサミストリートを識る」のコーナーでは、キャラクターのスケッチやスタンプ、当時のプロダクトなど様々な資料や写真、映像からセサミストリートの歴史を振り返る。左・スタンプ(切手)原版 1999年右・ジュリアをデザインしたディレクターのクッキーモンスターのスケッチ/Louis Henry Mitchell キャラクタードローイング複製画 看板キャラクター・エルモ。彼は当初は名前もない小さなモンスターだったが、’85年ごろから個性を発揮し始め今では世界的に愛される存在に。クッキーモンスターやビッグバードなど世代を超えてファンが多いキャラの往年の姿にも注目して。 会場内ではエルモやオスカーのぬいぐるみやマグカップをはじめ、多彩なキャラクターのグッズも販売。本展でしか入手できないレアアイテムも揃っているので要チェック。Sesame Street(R) and associated characters, trademarks and design elements are owned and licensed by Sesame Workshop. ©2024 Sesame Workshop. All rights reserved. Season15 1983‐1984年 制作スタッフ 1969年当時の番組制作者たちはテレビを通して子供を教育するアイデアを思いつく。これまでに1000以上の研究で番組が子供の識字率や計算能力、自己表現などに良い効果を与えた事実が示されている。 誕生55周年記念 Hello! セサミストリートの世界展 松屋銀座 8階イベントスクエア 東京都中央区銀座3‐6‐1 開催中~4月8日(月)11時~20時(3/31、4/7は~19時30分、4/8は~17時。入場は閉場の30分前まで) 会期中無休 一般 1800円ほか 松屋銀座 TEL:03・3567・1211(大代表) ※『anan』2024年4月3日号より。文・山田貴美子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/540566/ Source: ananweb

  • 2024.03.28

バンクシーからカウズまで! “アーバン・アート”のアイコン的な作品と出合える展覧会 | ananweb – マガジンハウス

今、ヨーロッパで高い人気を誇る“アーバン・アート”。ドイツ・ミュンヘンにあるMuseum of Urban and Contemporary Art(MUCA)のコレクションから、このジャンルを切り拓いてきた10名の作品がやってくる。都市の壁や橋に絵を描く覆面アーティストのバンクシーをはじめ、彼らの大胆な活動を見聞きした人も多いはず。まずアーバン・アートとは何? とMUCA共同創設者のステファニー・ウッツさんに聞いた。 都市を駆け抜けるアーティストの声なき声を聞け。 「今回紹介するアーティストの多くは大規模な絵画であれインスタレーションであれ、都市の公共空間で制作しており、“Urban”という表現はそれを強調しています。振り返れば1968年の五月革命の際、エコール・デ・ボザール(パリ国立高等美術学校)の学生たちが描いたポスターが彼らの初期のインスピレーションだったといえるでしょうし、1980年代のニューヨークで起こったグラフィティ・ムーブメントも大きな影響を与えています」 バスキアやキース・ヘリングと同時代に活躍したリチャード・ハンブルトンの作品が展示に加えられているのも、そうした流れを汲んでのこと。もう一つ触れておきたいのは、アーバン・アート作品の多くが無許可で制作されており、その点が行政の承認を得て作られる「パブリックアート」とは異なること。なぜ彼らはあえて都市景観の中に自らの作品を刻もうとするのだろうか? 「アーバン・アートの共通点は、誰でも見ることができるという民主主義の原則にあります。彼らが世界中の都市の公共の壁に作品を制作するのは、アートに出合ったことのない新しい観客を取り込むことに本質的な関心を持っているからでしょう」 何の権威の後ろ盾もないインディペンデントな立ち位置にありながら、過去20年間に多くの国際的なアーティストが生まれたのは、“新しい観客”たちの熱い支持によるに違いない。なかでも注目したい作品は? 「バンクシーの“Are You Using That Chair?”は芸術の歴史を風刺する見事な例。ヴィルズのポートレートは卓越した技術とメッセージ性を兼ね備えています。インベーダーも要チェック。ポップカルチャーにインスパイアされた彼の作品は、モザイクアートで世界中の壁を『侵略』するプロジェクトと完璧に合致しています」 過去に話題をさらいながら、現在では見ることができない作品も多い。この展覧会でアーバン・アートのアイコン的な作品とぜひ出合って。 NYの街のバスシェルター広告にキャラクターを描き込む「サブバータイジング」によって一躍時の人となったカウズ。「×」印の目が特徴の「コンパニオン」は世代を超えたファンを持つ。カウズ「4フィート・コンパニオン(ディセクテッド・ブラウン)」Photo by ©MUCA / wunderl and media 国籍、年齢など一切不明の覆面アーティストの代表的な彫刻作品。古典的な彫刻の額に生々しい弾痕が。西洋の伝統芸術に強烈なアンチテーゼを突きつけているようにも。バンクシー「ブレット・ホール・バスト」Photo by ©MUCA / wunderland media 壁の表面を爆発物などを利用して削り取るスクラッチ技法で描かれたポートレート。ポルトガル人アーティスト、ヴィルズの代表作で、人々の移動や都市化に伴って起こる社会的な変化がテーマ。ヴィルズ「ディスパーサル・シリーズ #14」Photo by ©MUCA / wunderland media 「スペース・インベーダー」の愛称で親しまれ、1970~’80年代のビデオゲームに影響を受けたモザイクアートを制作。文化的、歴史的に重要とされる場所で作品を発表している。インベーダー「ルービック・アレステッド・シド・ヴィシャス」Photo by ©MUCA / wunderland media 現代のストリートアーティスト、グラフィックデザイナーのなかでも際立った才能を持つ一人。キング牧師の威厳ある姿から正義と平等を求めて非暴力で闘った牧師への敬意がうかがえる。シェパード・フェアリー「MLK JR」Photo by ©MUCA / wunderland media テレビ朝日開局65周年記念 MUCA(ムカ)展 ICONS of Urban Art~バンクシーからカウズまで~ 森アーツセンターギャラリー 東京都港区六本木6‐10‐1 六本木ヒルズ森タワー52F 開催中~6月2日(日)10時~19時(金・土・祝・祝前日、4/27~5/6は~20時。入館は閉館の30分前まで) 会期中無休 一般2400円ほか ※事前予約制  TEL:050・5541・8600 ※『anan』2024年3月27日号より。取材、文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/538915/ Source: ananweb

  • 2024.02.28

巨匠画家マティス、本邦初公開となる大作も! 晩年の「切り紙絵」に注目した展覧会 | ananweb – マガジンハウス

「色彩の魔術師」と呼ばれた20世紀の巨匠画家アンリ・マティス。彼は20世紀初頭、原色を多用した強烈な色彩による絵画様式“フォーヴィスム(野獣派)”を生み出し、生涯にわたって色とフォルムによる造形美を模索し続けた。1941年、腹部のガンのため車椅子生活となり、絵が描けなくなった彼が精力的に取り組んだのが「切り紙絵」だった。 巨匠マティスの愛した手法「切り紙絵」にフォーカス。 本展「マティス 自由なフォルム」はマティスが晩年に取り組んだ切り紙絵に焦点を合わせた初の展覧会。切り紙絵作品を表紙にしたアートブック『ジャズ』や、《ブルー・ヌードIV》や《クレオールの踊り子》といった切り紙絵の代表作やテキスタイル、晩年に取り組んだヴァンスのロザリオ礼拝堂にまつわる作品など、約150点が一堂に集結。 なかでも見逃せないのは、本邦初公開となる切り紙絵の大作《花と果実》。縦4m・横8mに及ぶ大作だ。これは、もともと別荘の中庭に設置する巨大な装飾として考案されたものだったが、現在ではニース市マティス美術館のメインホールを飾る作品だ。それが本展のために修復を経て初来日したが、巨大かつ華やかな独特の存在感で、会場では早くも本展の象徴として親しまれている。 同様に注目してほしい作品が、マティスの集大成・南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂。この礼拝堂は壁面装飾がきわめてシンプルで、生命の木をモチーフにしたステンドグラスと、聖ドミニクスなどが描かれた3つの陶板壁画で構成されている。彼はこの礼拝堂の内装から典礼用の調度品、祭服に至るまで、ほとんどのデザインを自分で手掛けた。会場では、ステンドグラスや祭服など、ロザリオ礼拝堂にまつわる作品や資料を展示するほか、ステンドグラスの光の移り変わりを体感できるような、礼拝堂の実物大の体感型のインスタレーションも設置されている。 自然が大好きで、様々な花や観葉植物に囲まれた、まるで植物園のようなアトリエで制作を行っていたマティス。鳥も好きで、多い時には300羽も飼っていたこともあったとか。そんな環境が彼の創作の原点。自然のモチーフから生み出された作品は植物や動物を極限まで抽象化したフォルムと、そこからインスピレーションを得た極彩色が特徴。純度を極めた色づかいは、現代のグラフィックアートに繋がる。だからこそ時代を経ても褪せない美しさがある。 「切り紙絵では色彩の中でデッサンすることができる」という言葉を残しているマティス。生涯、色彩を愉しみフォルムと戯れた、豊かな人生をも垣間見られる内容だ。 アンリ・マティス《花と果実》1952‐1953年 切り紙絵 410×870cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo:Francois Fernandez アンリ・マティス《ブルー・ヌード IV》1952年切り紙絵 103×74cm オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託) ©Succession H. Matisse Photo:Francois Fernandez 画家として歩み始めた初期の作品。 第1・2章では法律事務所で働いていたマティスが画家に転身した初期の作品も紹介。その後、様々な画家たちとの出会いから彼は色彩に傾倒してゆく。 アンリ・マティス《マティス夫人の肖像》1905年 油彩/カンヴァス 46×38cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo:Francois Fernandez アンリ・マティス《ロカイユ様式の肘掛け椅子》1946年 油彩/カンヴァス 92×73cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo:Francois Fernandez 大型作品への取り組み。 1920年以降は絵画に限らずテキスタイルや衣装、壁面装飾など大型作品も手掛けたマティス。第3章では記念碑ともいえる大型作品誕生の原点を探る。 アンリ・マティス《パペーテ - タヒチ》1935年油彩/カンヴァス 225×172cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo:Francois Fernandez ロザリオ礼拝堂に向けられた熱意。 晩年のマティスが4年もの歳月をかけ完成させた礼拝堂は、建築家やガラス、陶器職人などたくさんの人が関わって生まれた最高傑作。 アンリ・マティス《ステンドグラス、「生命の木」のための習作》1950年 ステンドグラス 62.3×91.5×2cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo:Francois Fernandez ヴァンスのロザリオ礼拝堂(内観) ©Succession H. Matisse Photo:Francois Fernandez マティス 自由なフォルム 国立新美術館 企画展示室 2E 東京都港区六本木7‐22‐2 開催中~5月27日(月)10時~18時(金・土曜~20時、入場は閉館の30分前まで) 火曜休(4/30は開館) 一般2200円ほか TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル) ※『anan』2024年2月28日号より。文・山田貴美子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/534088/ Source: ananweb

  • 2024.02.21

伝統的な染織技術×最先端テクノロジーも! テキスタイルの多彩な可能性を感じる展覧会 | ananweb – マガジンハウス

会場に足を踏み入れれば、一枚の布が放つ強いエネルギーやユニークな表情に驚くはず。第一線を走り続けるテキスタイルデザイナー・須藤玲子さんと、彼女がディレクターを務めるテキスタイルデザイン・スタジオ「NUNO」の約40年にわたる活動を振り返る展覧会が開催される。 染織の国から生まれるテキスタイルの物語。 須藤さんのディレクションの真骨頂といえば伝統的な染織技術と最先端テクノロジーの組み合わせだ。 「NUNOの制作を支える工場の多くは織りや染色、その他さまざまな加工に特化しています。一つのテキスタイルを世に送り出すため、複数の産地や工場、職人が協働し、技術を発揮。当たり前のように思われる生産のネットワークですが、実は日本で独特に発展した文化です」 と水戸芸術館現代美術センター・学芸員の後藤桜子さんは話す。 「須藤さん自身、職人のアイデアに背中を押されたり、『私を奮い立たせるアイデアを提供するのがデザイナーの役割』と技術者から鼓舞されることもあったそうです」 展示の核となるのはこうした舞台裏の臨場感が伝わる7つのインスタレーション。特殊な針山を用いるニードルパンチ技法の工程を再現していたり、渦巻き状のリボンが連なるテキスタイルの工程を追うインスタレーションでは、リボンが水に浸される瞬間を捉えた息を呑むような映像を見ることができる。 今にも動き出しそうなダイナミックな演出の展示《こいのぼり》も見逃せない。日本が培ってきた染めと織りの技術が結集した布から生まれるこいのぼりの姿は圧巻。水戸藩に由来する染色技法「水戸黒」を用いたこいのぼりも登場する。そのほか三角形が螺旋のようにねじれながら連続する同館のタワーをモチーフにした新作も。 「考え抜いて作られた一枚の布地はそれ自体が生き生きとして、使う人にも活気をもたらしてくれるもの。人の心を揺さぶるテキスタイルの多彩な可能性に、観る人一人ひとりが楽しみながら近づく機会になればと思います」 須藤玲子&アドリアン・ガルデール《こいのぼり》2008/2019(部分) 展示風景:「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong、2019-2020 ©CHAT(Centrefor Heritage, Arts and Textile)Hong Kong 《糸乱れ筋》に用いられるニードルパンチ機(部分) 展示風景:「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong、2019-2020 ©CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong 須藤玲子《糸乱れ筋》2006年 撮影:林雅之 須藤玲子《カラープレート》1997年 撮影:林雅之 展示風景:「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong、2019-2020 ©CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong 須藤玲子:NUNOの布づくり 水戸芸術館 現代美術ギャラリー、広場 茨城県水戸市五軒町1‐6‐8 2月17日(土)~5月6日(月)10時~18時(入場は17時30分まで) 月曜休(祝日の場合は翌火曜休) 一般900円ほか TEL:029・227・8111 ※『anan』2024年2月21日号より。取材、文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/532821/ Source: ananweb

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