エッセイ

  • 2024.04.24

辻村深月「言葉の選び方は大人向けのエッセイ以上に時間をかけました」 子どもと本音で向き合ったエッセイ集 | ananweb – マガジンハウス

子どもたち、つまり、かつての私たちが主人公の小説をたくさん書いてきた辻村深月さん。最新エッセイ集『あなたの言葉を』は、そういった物語を読んだ子どもからたびたび寄せられる「大人なのにどうして子どもの気持ちがわかるんですか?」という問いがきっかけになっている。 「自分の言葉」ってそもそも何? 子どもと本音で向き合うエッセイ。 「言われるたびに嬉しい半面、『仲間だよ!』と寂しい気持ちにもなりました。その質問が出てくるには、『大人は自分たちの気持ちがわからなくて当然』という思いがあるはずなので。だとしたら、子どもの頃の悔しかったこと、もやもやしたことなどを覚えているのが私の強みなので、大人の中の子どものスパイとして頑張ってみようと思ったのです」 毎日小学生新聞に連載されたこのエッセイ。言語化や自身の言葉で話すことが尊ばれる昨今、「自分の言葉がある」とはどういうことなのか、辻村さんの子どもの頃の経験や時事問題、読者からの投稿を交えながら深めていく試みでもある。 「大人が思う子どもらしい言葉ではなく、自分の感情や本音の部分を言語化すること。それを表に発さないとしても、心に保つことの大切さについて書きたいと思い、このタイトルにしました。そしてある程度記事が溜まってきて、これは同調圧力に屈しないことについての連載だったのだと、しみじみ思いました」 たとえば、遠足のお弁当の時間、よく知らない子の陰口が始まって、「そうなんだ」と相づちを打ったエピソード。大人の世界でもよくあるシチュエーションといえるが、一緒にいた女の子のとった行動に小学生の辻村さんはハッとさせられる。 「周りに流されず、思ったことはどんどん出したほうがいいとか、大人の思う正しさで語られることが多いけれど、表明することだけが向き合い方ではないと思うんです。子どもに伝えようと思うと表現はよりストレートになるのですが、だからこそ言葉の選び方は大人向けのエッセイ以上に時間をかけました」 迷いが生じたときに本を開きたくなるような、辻村さんが子どもというひとりの人間と真摯に向き合った優しい言葉がちりばめられている。 「作家としていろんな方の言葉や文章に触れる機会が増えてくると、本音で書いてあるものに勝る強さはないと感じます。そのことが、全体を通して伝わったら嬉しいですね」 『あなたの言葉を』 学校生活、出会いと別れ、読むこと、書くこと。かつての子どもたちにも響くエッセイ集。朝倉世界一さんの挿絵が文章に寄り添う。毎日新聞出版 1540円 つじむら・みづき 作家。2004年デビュー。本誌で連載された『ハケンアニメ!』は、舞台・映画・ウェブトゥーン化された。近著『この夏の星を見る』はコロナ禍でつながる中高生の青春物語。 ※『anan』2024年4月24日号より。写真・土佐麻理子(辻村さん) 中島慶子(本) インタビュー、文・兵藤育子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/544373/ Source: ananweb

  • 2023.11.27

ヤマザキマリの人生観や生き方の源! 国際色・個性豊かな人々との出会いのエッセイ集 | ananweb – マガジンハウス

『扉の向う側』はヤマザキマリさんが出会ってきた、忘れがたい人々との関わりを綴ったエッセイ集だ。 思い通りにならない同士が共生する。美しくノスタルジックなエッセイ集。 「14歳のときに初めてひとり旅。ブリュッセルからパリへ向かう列車の中でマルコ爺さんと知り合わなければ、そもそも17歳でイタリア留学していないかもしれないし、彼の孫と結婚していないかもしれない。私の人生観や生き方は、偶然知り合ったりすれ違ったりしてきた人たちとの関わりによってできたと言ってもおかしくないです」 親切で実直なカメオ職人とその夫人、90歳を越えてなおアグレッシブにつばぜり合いをする夫の父方・母方の両祖母、日本行きの飛行機で知り合ったブラジル移民一世の老人、ナポリ愛をとうとうと語った子だくさんのタクシー運転手等々、ヤマザキさんの記憶に深く刻み込まれている人々はみな国際色も個性も豊か。本書は地球人カタログのようだ。 「ボランティアで訪ねたキューバで15人家族の家に居候した話も書きました。お金が一銭も動いてないのにこんなに幸せになれるんだというのは、そこで知ったことです。常々、私の本は全部“縁があった人の観察事典みたいなもの”だと言っていますが、実際、観察学的視点で書くのが私のエッセイのパターンになっていますね。意識しているわけではなくて、自然とそうなってしまう。実はかなりの人見知りなんですが、こういう人と会いたくないとか、これは私に必要ないとか、そういうのはまったくなかった。袖振り合った人とは、絶対に何か縁がある、意味がある、と思う質(たち)で」 また、多くの日本人が安易にイメージするイタリア人――恋愛と美食を楽しむ国民性とは違う、彼らの地に足がついたさまも興味深い。 「須賀敦子さんがお書きになられてきた世界に少し近いものがあるように思っています。不条理な世界と向き合う中で深い思索を重ね研ぎ澄まされた知性を持つ、穏やかで静かなイタリア人もいるのです」 微笑ましかったり、ユーモラスだったりする各回の挿絵もすべて、ヤマザキさんの手による。それらに命を吹き込むのはやはり人との縁だ。 「私の絵って実は人格主張がないというか(笑)、ストーリーに合わせた絵を描くんです。忘れられず、ずっと私を幸せな気持ちにさせてくれる人ってやっぱり人生の財産だなと」 ヤマザキマリ『扉の向う側』 エジプト、シリア、ポルトガル、米国と移り住みながら、再びイタリアと日本に拠点を置くヤマザキさんの記憶に刻まれた人々。マガジンハウス 1760円 ヤマザキマリ 漫画家、文筆家、画家、東京造形大学客員教授。1967年、東京都生まれ。17歳でイタリアに渡る。『テルマエ・ロマエ』『プリニウス』ほか著書多数。2016年、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。 ※『anan』2023年11月29日号より。写真・山崎デルス(ヤマザキさん) 中島慶子(本) インタビュー、文・三浦天紗子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/517958/ Source: ananweb