コミック

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  • 2023.09.18

恋に友情、家族愛…でも登場するのは全員モンスター!? “優しい世界”を描いたコミック | ananweb – マガジンハウス

誰かに淡い恋心を抱いたり、友情を育んだり、家族と過ごす時間を大切にしたり。描かれているのはどこにでもありそうな日常だが、登場するのはすべてモンスターの本作、『月出づる街の人々』。 「こうありたい」が詰まった、モンスターたちのユートピア。 「プロトタイプの短編を描いたのは約10年前。コミティア(自主制作漫画誌展示即売会)で発表しましたが、今、はるみの弟として出てくる飛べないドラキュラが主人公でした」 酢豚ゆうきさんは当時、『宇宙兄弟』の小山宙哉さんのもとでアシスタントをしながら、マンガ家を目指していた。しかしながらプロになるのを断念し、一度は企業に就職。 「それでも趣味で二次創作などをしていたのですが、久しぶりにオリジナルに挑戦しようと思って、現在の第1話を描いたのが2019年。社会人として大変なこともいろいろ経験したので、優しい世界であってほしいなっていう僕自身の願望が、表れているのかもしれません」 モンスターが暮らすのは、ヨーロッパのような石造りの建物と、日本のノスタルジックな雰囲気がミックスされたような街。透明人間のはるみはさっぱりした性格で、同学年の狼男の毛づくろいに癒されている。フランケンのもち子はおっとりしているものの、怪力の持ち主。クールだけど優しいメドゥーサのユイは、頭の蛇たちをいつも気にかけている。家族構成も学校のクラスも、異なる種族が入り交じっているのだが、それぞれの特性を当たり前のように認め合い、他者の困りごとも理解している関係性は、理想郷ともいえる。 「モンスターのキャラクターに関しては、自分が入り込めるかどうかを大事にしています。たとえば巨大な一つ目モンスターとかだと、いきなり感情移入するのは難しかったりしますよね。一見人間っぽいけど造形的にちょっと不思議だったり、日々の悩みは僕たちと大して変わらなかったりなど、モンスター感と身近さを同時に出せればと思っています」 3人の女子高生モンスターを中心に、さまざまなキャラクターが登場するオムニバスなのだが、2巻では新キャラも続々出てくる。ミノタウロスの男子がもち子の筋トレ姿にほれぼれしたり、女子3人でクリスマスマーケットに繰り出したり、はるみが赤ちゃんのとき、ほとんど透明の状態で、子育てに苦労したというほのぼのエピソードも。 「この作品を機に、いろんな国の神話を調べるようになったのですが、モンスターには昔の人たちの考え方などが反映されていることを知り、ますます興味が湧いています。3人のキャラクターを中心に掘り下げつつ、彼らが住む街の様子もより立体的に描いていきたいですね」 『月出づる街の人々』2 透明人間、狼男、フランケン、ドラキュラ、メドゥーサ。種族を超えて心を通わせるモンスターたちの温かな日常を描いた8編のオムニバス。おまけマンガも! 双葉社 726円 ©酢豚ゆうき/双葉社 すぶた・ゆうき マンガ家。2010年頃からコミティアなどで活動を始める。本作で商業誌デビュー。『月刊アクション』(双葉社)で連載中。 ※『anan』2023年9月20日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/505420/ Source: ananweb

  • 2023.09.12

平安時代にタイムスリップ、男女逆転ラブコメ展開に!? 小ネタにも注目の『平家物語夜異聞』 | ananweb – マガジンハウス

幼い頃から同じ屋根の下で暮らし、成長した双樹沙羅(ふたき・さら)と春野夜(はるの・よる)。16歳になったあるとき、二人は平安時代にタイムスリップ。夜は天皇家との外戚関係を望む平清盛のもとで平徳子として、沙羅は奥州・藤原氏の家で源義経として過ごすことに。突如、仇敵同士になってしまった二人の運命は…。そんなユニークな設定で進む黒崎冬子さんの『平家物語夜異聞(へいけものがたりよるくんのはなし)』は、原書に忠実、かつ随所に笑いをちりばめた傑作ラブコメだ。 「特に深い意味もなく、歩いているときに『源義経が女の子だったら可愛いだろうな』というアイデアがふと浮かんで。平家物語も、中学時代に、“滅びの文学”として教わってからずっと気になっていました」 宝塚のファンだという黒崎さんは男女逆転のお話も好物。かくて、世話好きで心優しい夜と暴れん坊なかまってちゃんの沙羅とが“家”に翻弄され、物語が進んでいく。 「平家は、平家物語の中ではわりに悪者として描かれているのですが、調べてみると家族仲や兄弟仲がよくて、宮中の女房たちにもとても優しかったとか。エピソードがいろいろ残っているんですよね。一方、源氏は、頼朝も頼朝の父親も兄弟で殺し合うんです。血を分けた者同士が疑心暗鬼になり家が途絶えるのは、平家とはあまりに対照的。史実をなぞりつつ、血のつながりだけが幸せではないと伝えたかったし、夜くんのような他人が平家の人と心を通わせ家族のようになっていく新しい家族像も描けたらいいなと思いました」 終盤、本書を「異聞」とするにふさわしい仕掛けが用意されている。とりわけ、平家滅亡のその先と沙羅の成長はうれしいサプライズだ。 「いまは変わりましたが、私も20代頃は良妻賢母的な生き方こそ女の幸せだと思い込んでいて、そのくせそれが息苦しかったんです。なので本作でも、夜くんが沙羅ちゃんを“幸せにしてあげる”ような形にはしたくなかった。沙羅の決断を見届けてほしいです」 登場するあまたの平安貴族と武士たちのモダンミックスなファッションも注目ポイントだ。沙羅が馬の代わりにバイクを乗り回したり、BL要素が織り込まれていたり、エンターテインメント性はバッチリ。 「宝塚の舞台では、平安時代の人が膝丈のレザーのブーツを履いて出てきたりしますし、マンガ的なセンスと歴史をミックスさせた舞台も多い、劇団新感線の影響も受けているかもしれません」 黒崎冬子『平家物語夜異聞(へいけものがたりよるくんのはなし)』3 原作はシリアスな歴史モノだが、本書はコマの隅々にまで描き込まれた小ネタ、ハイテンションなギャグがぎっしり! 現代的なキャラデザも魅力。全3巻。KADOKAWA 880円 ©黒崎冬子/KADOKAWA くろさき・ふゆこ マンガ家。2019年2月に読み切りでデビュー。他の著作に4コマねこマンガ『トラと陽子』、ラブコメ『無敵の未来大作戦』がある。 ※『anan』2023年9月13日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/504216/ Source: ananweb

  • 2023.09.05

大人の発達障害についてポジティブに考えるきっかけに! 町田粥の初コミックエッセイ | ananweb – マガジンハウス

最近よく耳にするようになった、「発達障害」という言葉。町田粥さんの初コミックエッセイ『発達障害なわたしたち』は、当事者による当事者へのインタビューがベースになっていて、そもそも発達障害とは何なのか、日常でどんなことに困っているのかを明るく解読している。インタビュアーは限りなく本人に近いキャラクター、マンガ家のM(エム)ちださんと担当編集のK成(ケーなり)さん。ふたりは同時期に発達障害の特性のひとつ、軽度のADHD(注意欠如・多動性障害)の診断を受けている。 当事者もそうでない人も、大人の発達障害について明るく語ろう。 「自分が発達障害だと言われたら、いろんなリアクションがあると思うのですが、私はショックや動揺ではなく『面白い!』と思ったんですよね。劣等感に繋がっていた部分を説明できるようになって救われもしたので、そういう気持ちになれる人はほかにもいるはずだと思いました」 ふたりの事例から始まり、登場するゲストはMちださんの妹、ADHD寄りのASD(自閉スペクトラム症)の特性のあるマンガ家のカメントツさん、性別で見ると圧倒的に少ないASD傾向の女性など。 「子どもの頃からの困り事を軸に、解決するためにどんな動きをして、今どうやって過ごしているのか、それぞれ順を追ってお聞きしました。カメントツ先生の“辛い人は『辛い』って言っていいし、辛くない人は『辛くない』って言っていい”という言葉が印象的で、たしかに大変かどうかは周りが決めることではない。その人と向き合った聞き方をしなければいけないと感じました」 発達障害の特性のある人たちが、日々の困り事を減らすために欠かせないのが、家族や職場など周りの人たちの理解やちょっとした配慮であることも、本作は教えてくれる。たとえば衝動の強い人は、いわゆる失言や余計なことをしてしまいがちなのだが、本人に悪気がないことを知っておくだけで、受け取り方が変わってくるだろう。得手不得手の差が激しいという傾向も、周囲の理解さえあれば、組織内で大きな力を発揮することにも繋がっていく。 「正しい知識がないと、当事者にどう接したらいいかわからないと思うのですが、ネットの情報は結構偏っていたりすることも監修の先生への取材を通して知りました。なので間違った知識や偏見を、丁寧につぶしていくつもりで描いています」 連載中から本作への反響は大きく、このテーマへの関心の高さや、他人事ではない感じもうかがえる。 「2巻以降、お話を聞きたい人がすでに何人かいて、『実は私も…』という声も多くいただいています。そういった繋がりから、さらに話が広がっていくかもしれないですね」 『発達障害なわたしたち』1 軽度のADHDと診断されたマンガ家と担当編集者が、さまざまな症状の当事者にインタビュー。発達障害について、ポジティブに考えるきっかけになる一冊。祥伝社 1034円。©町田粥/祥伝社フィールコミックス まちだ・かゆ マンガ家。『マキとマミ~上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話~』でデビュー。著作に男のみの歌劇団を描いた『吉祥寺少年歌劇』など。 ※『anan』2023年9月6日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/502897/ Source: ananweb

  • 2023.07.14

取るに足らない会話に思わずくすっ! 男子高校生たちのゆる~い日常を描いたコミック | ananweb – マガジンハウス

簡潔に言うと、『サラウンド』は3人の男子高校生の日常を描いたマンガなのだが、最新刊の3巻まで読むと、飽きるどころか、3人への愛着が深まっていることに気づくだろう。 いつまでも眺めていたくなる、男子高校生のゆるくて眩しい日常。 初連載である本作が形になるまでの経緯を、著者の紺津名子さんは次のように語る。 「デビュー後、何を描けばよいかわからず、悩んでいた時期が長かったんです。いろんなマンガ家さんに相談して、好きなことを気軽に描いてみたらとアドバイスをいただき、ツイッターで2~3ページの短いマンガを発表するようになりました」 筆が乗らなかった理由は、風変わりな設定や仕掛けなど何かしら強いフックが必要だと思っていたから。 「だけど私が描きたかったのは普通の人たちで、日常系のマンガだったんですよね。ツイッターではいろんなキャラクターを思いつくままに描いていたのですが、『サラウンド』に登場する3人のうち、最初に描いたのが戸田でした。初っ端からふざけていたので、ユーモアを大切にする人っていうのはそのとき決まった感じで。山口は当初ダウナー系男子のつもりで描いたのですが、今では一番ピュアになってます(笑)。田島は飄々とした戸田と仲良くなれるのってどんな人だろうと考えて、出てきたキャラ。行動力のある田島のおかげで、私も助かっています」 性格も成績も家庭環境も異なる3人は、何となく気が合って、教室やファミレスでいつもダラダラしゃべっている。会話の内容はゲームやバイト、ときに下ネタなど取るに足らないことばかりなのだが、男子高校生らしく能天気でバカっぽくて(もちろんほめ言葉!)、隣でこっそり聞いているようなおかしみが。 「今を生きるリアルな高校生を描こうとは思っていなくて、でも感情の部分はリアルにする必要があるというか、作り手のご都合主義になってはいけない。こういう人がいたらいいな、こういうやり取りがあったらいいなと思えるのがマンガの楽しさだと思っているので、パラレルの世界のどこかで彼らが生活していたらいいなと思いながら描いてます」 3巻では、田島に戸田が勉強を教えたり、山口がバイトを探し始めたり。そしてついに恋の予感も……。 「『サラウンド』というタイトルは、3人を取り巻くものというイメージで、日常の言い換えとしてつけました。個々のエピソードに寄りつつも、3人でいることの魅力を丁寧に描いていきたいので、見守っていただければ嬉しいです」 紺 津名子『サラウンド』3 女子と話すのが苦手な山口、冷静沈着で独自の世界観を持つ戸田、社交的で友達の多い田島。仲良し男子高校生3人のゆるやかな日々と、小さな変化を描く。リイド社 880円  ©紺津名子/リイド社 こん・つなこ マンガ家。2014年、講談社『ITAN』でデビュー。青年誌などで読み切りを発表。本作は「トーチweb」で連載中。Twitterは@kontsunako ※『anan』2023年7月19日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/495290/ Source: ananweb

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