地震

  • 2024.02.24

「土地を離れると生業そのものを失う」「避難したくても動けない」 能登半島地震に見る避難の課題 | ananweb – マガジンハウス

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「能登半島地震2 避難の課題」です。 1次産業従事者が多いからこそ、難しい県外避難。 能登半島地震は、発生から1か月経った2月5日現在、石川県内で約3万9000戸が断水、能登地方では約1800戸で停電が続いており、厳しい生活を強いられています。石川県内の避難所で生活をしている人は約1万4000人います。 生活を立て直すまで、ホテルや旅館などの2次避難先に移ることを県は推奨しています。しかし、県内と隣県の施設に5000人以上が移ったほかは、27都道府県に確保した2万人以上分の受け入れ先は利用されていません。 それは、被災した能登の多くの人が第1次産業の漁業や畜産業、伝統工芸など、土地に根付いた仕事に就いているため、土地を離れると生業そのものを失うからです。僕が取材に行った時にも、家も牛舎も傾いた危険な状況にもかかわらず、牛を置いていけないと語る被災者の方がいらっしゃいました。 地域をいつくらいまでに再生させるなど、将来の復興計画を示さなければ、土地を離れたら戻ってこられないのではないかと、遠くに避難することを躊躇してしまいます。若い世代も、自分たちの故郷が将来、失われてしまうのではという不安を抱えています。短期的な緊急支援とともに、長期的な町の復興支援を考えなければいけません。 もう一つ明らかになったのは、老老避難の問題です。高齢者がさらに高齢の住民を避難させ、避難所でサポートしなければいけない。輪島市のある地区では、76歳の区長が町内では若手として避難所の運営を任されていました。これまでの豪雨災害や土砂災害でも、高齢者から優先的に避難を促されましたが、実際には避難したくても動けないという問題が頻出していました。 能登では、心を病む、持病が悪化するなど、災害関連死の問題が深刻化しています。避難所の環境も良いとはいえません。学校の体育館を避難所にすることが多いですが、ダンボールを敷いたところで冷たい床で快適に過ごすのは至難の業です。これだけ災害の多い国ですから、既存の施設を避難所に転用するのではなく、避難のための施設をきちんと整備して、逆にそれを平時にどう利用するかという発想に転換する必要があるのではないでしょうか。 ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。 ※『anan』2024年2月28日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/534445/ Source: ananweb

  • 2024.02.17

堀潤「能登半島地震は、地方が抱える問題を集約した災害」 現地入りして見えたもの | ananweb – マガジンハウス

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「能登半島地震」です。 通信手段を失い、幹線道路は1本。半島ゆえの難題。 元日に能登半島で起きた大地震。発生後1か月経っても、地震活動は活発で注意が必要な状態が続いています。 災害時には僕はLINE IDを公開し、「発信支援の必要な方は連絡を」と呼びかけています。地震発生直後に約230件が届きましたが、今回はどの情報が本当に支援を必要としている方からなのかを精査する必要がありました。情報が古かったり、厚意で転送してくださったXなどSNS上のヘルプ要請も真偽の判断がつかないものがありました。インプレッションを増やすために偽の住所を書いて助けを呼ぶ投稿が多数アップされていたからです。直接連絡の取れた方の情報をもとに現地入りしましたが、道路が分断され車が入れないところは徒歩で山を越えなければいけませんでした。 今回、支援の初動が遅れた理由の一つは、情報インフラが途絶えてしまったことです。山中では、電波の入る場所を必死に探す人たちに大勢会いました。震央に近い穴水町は、役所に災害対策本部を立てたものの、通信障害により県庁とのホットラインが使えなくなっていました。NHKですら中継基地局が電力不足で放送不可に。被害状況を伝えることも、災害の全体像を掴むこともできない状態でした。僕も知り合いの議員らに窮状を訴え、ある議員の働きかけで、スペースX社の衛星通信サービス「スターリンク」を能登に提供してもらえることになりました。 もう一つ、今回ネックになったのは、半島という地理的な理由です。東日本大震災も熊本地震や西日本豪雨も、大きな災害でしたが周辺自治体からすぐに支援に入ることができました。しかし能登半島の北端は金沢からも約140km、東京から静岡ほどの距離があります。幹線道路は1本しかなく途中で寸断されました。海岸線は地形が変化し、接岸できる場所が限られ、船で海から支援に入るのも難しい状況でした。 被災したのは、高齢者の多い過疎の僻地で古い家屋が多く、倒壊を免れませんでした。同じような問題を抱える地域は全国にたくさんあり、都市とは違う防災のあり方を考えなければなりません。能登半島地震は、地方が抱える問題を集約した災害といえます。 ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。 ※『anan』2024年2月21日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/532773/ Source: ananweb