展覧会

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  • 2024.05.21

不気味なのになぜかハマる! 日本ホラー漫画家を代表する存在・伊藤潤二の大規模展 | ananweb – マガジンハウス

緻密なタッチでグロテスクな世界を描くホラー漫画家・伊藤潤二。彼の作品は世界30の国と地域で翻訳され、漫画のアカデミー賞とも呼ばれる米アイズナー賞を4度受賞。2023年からNetflixでは彼の漫画をアニメ化した『マニアック』の配信もスタートするなど、今や日本ホラー漫画家を代表する存在だ。 世界が認めるホラー漫画家の不気味と滑稽の世界観に迫る。 そんな伊藤初の大規模展「伊藤潤二展 誘惑」が話題を呼んでいる。「当館には伊藤作品のファンもおり、念願の企画展が実現しました。伊藤作品にはホラー漫画という枠では語り尽くせない面白さがあります。怖さとユーモアを自在に行き来する展開、ユニークなキャラクター造形、何といっても美麗な作画に圧倒されます」(世田谷文学館学芸員・加藤信元さん) そんな魅力を伝えるため、会場では様々なアプローチで空間を演出。序章で伊藤の海外での輝かしい受賞歴に触れた後は、第1章に代表作「富江」を中心に美醜が共存した作品を、第2章では、「死びとの恋わずらい」「うずまき」「双一」「首吊り気球」など、ごくありふれた日常に存在している恐怖をテーマとした作品を取り上げる。第3章では「中古レコード」「アイスクリーム・バス」「血玉樹」などを中心に迫力ある扉絵を、最終章では「伊藤潤二の猫日記 よん&むー」「ノンノン親分」などの作品を通じて、5歳から楳図かずおや古賀新一らの怪奇漫画に熱中し、自らも怪奇漫画を描き始め、歯科技工士から漫画家へと転身した伊藤の幼少期から現在までを、愛用品なども含めて紹介する。 特に今回はメインビジュアル《富江・チークラブ》や《禍々しき桐絵》など描きおろしも多数。また「うずまき」をモチーフとした体験型メディアアートや、作品に登場する身長2m超えの激痩せファッションモデルの“淵さん”と遭遇できるコーナーもユニークだ。 不気味なのになぜかハマる伊藤作品。かつてない規模で開催される本展を見ればさらに、その特異性、唯一無二の世界観の虜になりそうだ。 精緻な画力を満喫できる代表作「富江」。入り口ではメインビジュアル《富江・チークラブ》がゲストを迎える。富江 ©ジェイアイ/朝日新聞出版 「富江」は美しい黒髪とホクロが印象的な妖艶な美女。彼女の魅力に狂った男たちは、異常な殺意を向けるが…。富江の世界 ©ジェイアイ/朝日新聞出版 級友の首吊り自殺後、突然自分そっくりな首の気球が迫ってくる。2023年Netflixでアニメ化された傑作。首吊り気球 ©ジェイアイ/朝日新聞出版 意味もなく謝罪する転校生が来た。彼が土下座するとなぜか脳が溶け出す生徒が続出。謝罪の真意とは…。溶解教室 ©伊藤潤二(秋田書店)2014 伊藤潤二展 誘惑 世田谷文学館 2階展示室 東京都世田谷区南烏山1‐10‐10 開催中~9月1日(日)10時~18時(入場は閉場の30分前まで) 月曜(7/15、8/12は開館)、7/16、8/13休 一般1000円ほか TEL:03・5374・9111 いとう・じゅんじ 1963年、岐阜県生まれ。ホラー漫画家。代表作の「富江」シリーズや「うずまき」など映像化された作品も多数。2023年、第50回アングレーム国際漫画祭で特別栄誉賞を、サンディエゴ・コミコンでインクポット賞を受賞。©東川哲也/朝日新聞出版 ※『anan』2024年5月22日号より。文・山田貴美子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/549131/ Source: ananweb

  • 2024.05.01

矢部太郎「気軽にOKしたのですが… (笑) 」 初の大規模展覧会のために約100点描き下ろし! | ananweb – マガジンハウス

お笑い芸人としての活動はもちろん、平安時代を舞台にした大河ドラマ『光る君へ』の出演や、週刊漫画雑誌での連載「楽屋のトナくん」など、以前にも増して活躍の場を広げているお笑い芸人・矢部太郎さん。そんな彼の新境地ともいえる初の大規模展覧会が、ついに始まった。 大切な人とのふたりの時間を思い起こす展覧会になれば。 「実は展覧会なんて考えたこともなかったんです。オファーをいただき、今まで僕が描いた漫画をまた違った形で紹介するというコンセプトだったので、じゃあ僕が何かすることはなさそうだなと。あ、いいですねと気軽にOKしたのですが…(笑)」 東京・新宿区の外れにある一軒家で暮らす、矢部さんと大家のおばあさんとの交流を描いた漫画『大家さんと僕』。会場には物語の名場面とともに、矢部さんが同展のためにアクリル絵の具で制作した約100点の描き下ろしイラストが展示される。 「冗談で100枚くらい描き下ろします? と言ったら、ぜひやりましょうと即決されてしまって(笑)。でもデジタルで描くのと違って、絵の具で描くのは手を動かすのが楽しすぎて、アドレナリンが出ちゃってもう眠れなくなるほど。きっと紙だから失敗できない緊張感があるんでしょうね。だから毎日早起きして絵を描いて、その後、平安時代(大河ドラマの現場)に行っていました」 また会場では、漫画の中にある「ライトとおやき」の紙芝居が上映されるほか、「空飛ぶふたり」も映像化されるなど、作品をあらゆる方法で体感できるインスタレーションがそこここに。もちろんこの中には、矢部さん発案のプランもあるという。 「僕が大家さんとよく行った蕎麦屋にあった、10円玉を入れて使う昔の公衆電話。これが会場に設置されていて、来場者はその電話を取ると受話器からランダムに僕からのお礼の言葉が聞こえてくる仕掛けです。他にも大家さんの家に設置されていた、思い出の感知ライトも登場します」 と、来場者は作品の名場面を追体験できる演出に。漫画を読んだことがない人でも楽しめる内容だ。 矢部さんが絵を好きになったのは、絵本作家である父・やべみつのり氏の影響が大きい。そこで本展では、彼の作品『ぼくのお父さん』に関するコーナーも展開。父による家族絵日記「たろうノート」や、幼い矢部さんが父の勧めで始めた「たろう新聞」の現物が初公開され、当時住んでいた東京・東村山市での暮らしぶりを体感できる映像インスタレーションも設置。ユニークな矢部さんの生い立ちも知ることができる。 そんな矢部さんの創作意欲をかき立てるものとは一体何なのだろう? 「創作の源は? と聞かれれば、やっぱり大切な人のことが思い浮かびます。例えば大家さんには大家さんなりの人生があって、彼女が大切にしているものがあった。それは世間の価値観とは少し違うかもしれないけれど、すごく素敵だなと僕には思えた。もしかすると、単身で高齢のおばあさんと売れない芸人の話は幸せではないと捉えられることもあるかもしれないけれど、そこには本人が実感している幸せがある。こういったことこそ、描く価値があることなんじゃないかと思うんです」 漫画家になりたかったのではなく、心温まる人との思い出を自分なりの方法で伝えようと思った。そんな思いから絵を描き始めて早7年。そのアプローチは画業のみならず、お笑いや俳優業とも共通していると語る。 「出来上がったものを見てもらう以上に、僕は純粋に創作の過程が面白いタイプ。それはお芝居も同様で、稽古が一番楽しい、みたいな。この展覧会でも初めての経験ができて、一番楽しい思いをしているのは僕なんじゃないかな。観てもらう人には申し訳ないけど(笑)。『ふたり』というタイトルは、僕が漫画を描く時に一番大切にしているキーワード。大家さんやお父さんのように、僕の大切な人との二人の思い出を描いた漫画なので、観る人にとっても、大切な人との二人の時間を思い出すきっかけになれば嬉しいですね」 『大家さんと僕』(新潮社)2017年「おかえりなさい」より 『マンガ ぼけ日和』(かんき出版)2023年「お金盗ったでしょう?」より ふたり 矢部太郎展 PLAY!MUSEUM 東京都立川市緑町3‐1 GREEN SPRINGS W3 2F 開催中~7月7日(日)10時~17時(土・日・祝日~18時、入場は閉館の30 分前まで) 会期中無休 一般1800円ほか TEL:042・518・625 ©Taro Yabe やべ・たろう 1977年生まれ、東京都出身。芸人、漫画家。’97年に「カラテカ」を結成。処女作『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。新刊『プレゼントでできている』(新潮社)も好評発売中。 ※『anan』2024年5月1日号より。写真・土佐麻理子 取材、文・山田貴美子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/546204/ Source: ananweb

  • 2024.04.03

「未来のかけら」を探そう! 身体拡張の実験ほか、最先端の研究と出合える展覧会 | ananweb – マガジンハウス

21世紀が始まって四半世紀もたたないうちに、私たちの生活を一変させる製品やサービスが続々と普及した。例えばパソコン、スマホ、SNSなど。近い将来こうした革新的な発明品が再び登場するとしたら、世界はどんな広がりを見せるだろう? 科学とデザインが出合い、生まれる「未来のかけら」を探して。 本展「未来のかけら:科学とデザインの実験室」のディレクターを務める山中俊治さんは、腕時計から家電、鉄道車両まで幅広くデザインを手掛ける一方、2001年以降は先端技術の研究者たちとプロトタイプ(試作モデル)の作製に取り組んできた。東京大学に着任してからは「Design‐Led X(価値創造デザインプロジェクト)」を始動。実用化以前の科学的知見や技術に形を与え、未来を探る試みに力を注ぐ。 会場では研究室から生まれたプロトタイプやロボットに加え、7組のデザイナー・クリエイターと科学者・技術者によるコラボレーション作品を展示。例えば約100人の研究者が携わる「稲見自在化身体プロジェクト」では、人間がロボットや人工知能と「人機一体」となり、従来の運動能力や知覚を超えて行動する「自在化」を目指す。こうした身体拡張の実験のほかにもバイオ工学、構造形態学などの最先端の研究が具体化、実装化されて現れる。おそらくこのうちのいくつかが未来を形作るピースになるのだ。そのかけらを私たちは見つけられるだろうか。 山中研究室+稲見自在化身体プロジェクト「自在肢」 荒牧悠+舘知宏「座屈不安定性スタディ」 山中研究室+新野俊樹+鉄道弘済会義肢装具サポートセンター他「Rami」(撮影:加藤康) 「未来のかけら:科学とデザインの実験室」 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2 東京都港区赤坂9‐7‐6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内 3月29日(金)~8月12日(月)10時~19時(入場は18時30分まで) 火曜休 一般1400円ほか TEL:03・3475・2121 ※『anan』2024年4月3日号より。文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/540212/ Source: ananweb

  • 2024.04.01

限定のレアグッズも販売! 誕生55周年記念『セサミストリート』の企画展 | ananweb – マガジンハウス

1969年にアメリカ発の子供向けテレビ教育番組として制作された『セサミストリート』。ニューヨーク・マンハッタンにある架空の通りを舞台に、個性豊かなモンスターと様々な人間たちが繰り広げるこの番組は、子供たちに笑いと学びを届けている。放送開始以来、世界150以上の国と地域でオンエアされ、今では絵本やグッズ、新作アニメーションやYouTubeなども展開。現在でも各地に熱烈なファンを持つ長寿番組だ。 世界150か国以上で愛される長寿番組の世界観に浸る。 その誕生55周年を記念し、世界観と魅力を体感できる企画展「誕生55周年記念 Hello! セサミストリートの世界展」が始まった。会場では、放送開始当時の映像から最新の映像はもちろん、実物のパペット、普段見ることができない舞台裏や貴重な資料などを数多く織り込んだ体感型展覧会となっている。 展示は7つのテーマで構成。例えば、資料や写真、映像で歴史を振り返る「セサミストリートを識る」、番組音楽に注目した「セサミストリートを聴く」、パペットを動かす舞台裏にフォーカスを当てた「セサミストリートの裏側を覗く」のコーナーなど。なかでも注目は、日本初展示となるクッキーモンスターのキッチンカー。これはモンスターお料理隊であるクッキーモンスター&ゴンガーのパペットを乗せたキッチンカーが、特撮用街並み映像の中に登場した立体展示で、本展のアイコンともいえる存在だ。また、住民たちを名場面とともに紹介する「セサミストリートに出会う」では、生後13か月の赤ちゃん時代のかわいいベビーエルモのパペットも日本初展示。現在は3歳半とプロフィールで紹介されているから、これを見れば、キャラクターも番組の中で成長を遂げていることがよくわかるはずだ。 セサミストリートの住人たちは容姿も性格も様々。例えば2017年から番組に新キャラクターとして登場したジュリア。自閉症の特性がある女の子だ。彼女のパペットを操演しているのが、実際に自閉症の息子がいるステイシー・ゴードンであることも話題になった。番組は、様々なバックグラウンドを抱えたキャラクターたちが共存することで、人間とはそれぞれに違っていること、多様な人々からなる社会で、お互いを尊重して生きることの大切さを子供に伝えている。この番組がこれほど長く愛されているのは、そのメッセージが子供だけではなく、実は大人の心にも深く刺さるからかもしれない。 クッキーモンスターのキッチンカー 体感型展覧会の主役ともいえるのがクッキーモンスターのキッチンカー。これを受けてショップでは日本初となるオフィシャル移動物販車「セサミストリートトラック」にてオリジナルグッズも販売。 「セサミストリートを識る」のコーナーでは、キャラクターのスケッチやスタンプ、当時のプロダクトなど様々な資料や写真、映像からセサミストリートの歴史を振り返る。左・スタンプ(切手)原版 1999年右・ジュリアをデザインしたディレクターのクッキーモンスターのスケッチ/Louis Henry Mitchell キャラクタードローイング複製画 看板キャラクター・エルモ。彼は当初は名前もない小さなモンスターだったが、’85年ごろから個性を発揮し始め今では世界的に愛される存在に。クッキーモンスターやビッグバードなど世代を超えてファンが多いキャラの往年の姿にも注目して。 会場内ではエルモやオスカーのぬいぐるみやマグカップをはじめ、多彩なキャラクターのグッズも販売。本展でしか入手できないレアアイテムも揃っているので要チェック。Sesame Street(R) and associated characters, trademarks and design elements are owned and licensed by Sesame Workshop. ©2024 Sesame Workshop. All rights reserved. Season15 1983‐1984年 制作スタッフ 1969年当時の番組制作者たちはテレビを通して子供を教育するアイデアを思いつく。これまでに1000以上の研究で番組が子供の識字率や計算能力、自己表現などに良い効果を与えた事実が示されている。 誕生55周年記念 Hello! セサミストリートの世界展 松屋銀座 8階イベントスクエア 東京都中央区銀座3‐6‐1 開催中~4月8日(月)11時~20時(3/31、4/7は~19時30分、4/8は~17時。入場は閉場の30分前まで) 会期中無休 一般 1800円ほか 松屋銀座 TEL:03・3567・1211(大代表) ※『anan』2024年4月3日号より。文・山田貴美子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/540566/ Source: ananweb

  • 2024.03.28

バンクシーからカウズまで! “アーバン・アート”のアイコン的な作品と出合える展覧会 | ananweb – マガジンハウス

今、ヨーロッパで高い人気を誇る“アーバン・アート”。ドイツ・ミュンヘンにあるMuseum of Urban and Contemporary Art(MUCA)のコレクションから、このジャンルを切り拓いてきた10名の作品がやってくる。都市の壁や橋に絵を描く覆面アーティストのバンクシーをはじめ、彼らの大胆な活動を見聞きした人も多いはず。まずアーバン・アートとは何? とMUCA共同創設者のステファニー・ウッツさんに聞いた。 都市を駆け抜けるアーティストの声なき声を聞け。 「今回紹介するアーティストの多くは大規模な絵画であれインスタレーションであれ、都市の公共空間で制作しており、“Urban”という表現はそれを強調しています。振り返れば1968年の五月革命の際、エコール・デ・ボザール(パリ国立高等美術学校)の学生たちが描いたポスターが彼らの初期のインスピレーションだったといえるでしょうし、1980年代のニューヨークで起こったグラフィティ・ムーブメントも大きな影響を与えています」 バスキアやキース・ヘリングと同時代に活躍したリチャード・ハンブルトンの作品が展示に加えられているのも、そうした流れを汲んでのこと。もう一つ触れておきたいのは、アーバン・アート作品の多くが無許可で制作されており、その点が行政の承認を得て作られる「パブリックアート」とは異なること。なぜ彼らはあえて都市景観の中に自らの作品を刻もうとするのだろうか? 「アーバン・アートの共通点は、誰でも見ることができるという民主主義の原則にあります。彼らが世界中の都市の公共の壁に作品を制作するのは、アートに出合ったことのない新しい観客を取り込むことに本質的な関心を持っているからでしょう」 何の権威の後ろ盾もないインディペンデントな立ち位置にありながら、過去20年間に多くの国際的なアーティストが生まれたのは、“新しい観客”たちの熱い支持によるに違いない。なかでも注目したい作品は? 「バンクシーの“Are You Using That Chair?”は芸術の歴史を風刺する見事な例。ヴィルズのポートレートは卓越した技術とメッセージ性を兼ね備えています。インベーダーも要チェック。ポップカルチャーにインスパイアされた彼の作品は、モザイクアートで世界中の壁を『侵略』するプロジェクトと完璧に合致しています」 過去に話題をさらいながら、現在では見ることができない作品も多い。この展覧会でアーバン・アートのアイコン的な作品とぜひ出合って。 NYの街のバスシェルター広告にキャラクターを描き込む「サブバータイジング」によって一躍時の人となったカウズ。「×」印の目が特徴の「コンパニオン」は世代を超えたファンを持つ。カウズ「4フィート・コンパニオン(ディセクテッド・ブラウン)」Photo by ©MUCA / wunderl and media 国籍、年齢など一切不明の覆面アーティストの代表的な彫刻作品。古典的な彫刻の額に生々しい弾痕が。西洋の伝統芸術に強烈なアンチテーゼを突きつけているようにも。バンクシー「ブレット・ホール・バスト」Photo by ©MUCA / wunderland media 壁の表面を爆発物などを利用して削り取るスクラッチ技法で描かれたポートレート。ポルトガル人アーティスト、ヴィルズの代表作で、人々の移動や都市化に伴って起こる社会的な変化がテーマ。ヴィルズ「ディスパーサル・シリーズ #14」Photo by ©MUCA / wunderland media 「スペース・インベーダー」の愛称で親しまれ、1970~’80年代のビデオゲームに影響を受けたモザイクアートを制作。文化的、歴史的に重要とされる場所で作品を発表している。インベーダー「ルービック・アレステッド・シド・ヴィシャス」Photo by ©MUCA / wunderland media 現代のストリートアーティスト、グラフィックデザイナーのなかでも際立った才能を持つ一人。キング牧師の威厳ある姿から正義と平等を求めて非暴力で闘った牧師への敬意がうかがえる。シェパード・フェアリー「MLK JR」Photo by ©MUCA / wunderland media テレビ朝日開局65周年記念 MUCA(ムカ)展 ICONS of Urban Art~バンクシーからカウズまで~ 森アーツセンターギャラリー 東京都港区六本木6‐10‐1 六本木ヒルズ森タワー52F 開催中~6月2日(日)10時~19時(金・土・祝・祝前日、4/27~5/6は~20時。入館は閉館の30分前まで) 会期中無休 一般2400円ほか ※事前予約制  TEL:050・5541・8600 ※『anan』2024年3月27日号より。取材、文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/538915/ Source: ananweb

  • 2024.02.28

巨匠画家マティス、本邦初公開となる大作も! 晩年の「切り紙絵」に注目した展覧会 | ananweb – マガジンハウス

「色彩の魔術師」と呼ばれた20世紀の巨匠画家アンリ・マティス。彼は20世紀初頭、原色を多用した強烈な色彩による絵画様式“フォーヴィスム(野獣派)”を生み出し、生涯にわたって色とフォルムによる造形美を模索し続けた。1941年、腹部のガンのため車椅子生活となり、絵が描けなくなった彼が精力的に取り組んだのが「切り紙絵」だった。 巨匠マティスの愛した手法「切り紙絵」にフォーカス。 本展「マティス 自由なフォルム」はマティスが晩年に取り組んだ切り紙絵に焦点を合わせた初の展覧会。切り紙絵作品を表紙にしたアートブック『ジャズ』や、《ブルー・ヌードIV》や《クレオールの踊り子》といった切り紙絵の代表作やテキスタイル、晩年に取り組んだヴァンスのロザリオ礼拝堂にまつわる作品など、約150点が一堂に集結。 なかでも見逃せないのは、本邦初公開となる切り紙絵の大作《花と果実》。縦4m・横8mに及ぶ大作だ。これは、もともと別荘の中庭に設置する巨大な装飾として考案されたものだったが、現在ではニース市マティス美術館のメインホールを飾る作品だ。それが本展のために修復を経て初来日したが、巨大かつ華やかな独特の存在感で、会場では早くも本展の象徴として親しまれている。 同様に注目してほしい作品が、マティスの集大成・南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂。この礼拝堂は壁面装飾がきわめてシンプルで、生命の木をモチーフにしたステンドグラスと、聖ドミニクスなどが描かれた3つの陶板壁画で構成されている。彼はこの礼拝堂の内装から典礼用の調度品、祭服に至るまで、ほとんどのデザインを自分で手掛けた。会場では、ステンドグラスや祭服など、ロザリオ礼拝堂にまつわる作品や資料を展示するほか、ステンドグラスの光の移り変わりを体感できるような、礼拝堂の実物大の体感型のインスタレーションも設置されている。 自然が大好きで、様々な花や観葉植物に囲まれた、まるで植物園のようなアトリエで制作を行っていたマティス。鳥も好きで、多い時には300羽も飼っていたこともあったとか。そんな環境が彼の創作の原点。自然のモチーフから生み出された作品は植物や動物を極限まで抽象化したフォルムと、そこからインスピレーションを得た極彩色が特徴。純度を極めた色づかいは、現代のグラフィックアートに繋がる。だからこそ時代を経ても褪せない美しさがある。 「切り紙絵では色彩の中でデッサンすることができる」という言葉を残しているマティス。生涯、色彩を愉しみフォルムと戯れた、豊かな人生をも垣間見られる内容だ。 アンリ・マティス《花と果実》1952‐1953年 切り紙絵 410×870cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo:Francois Fernandez アンリ・マティス《ブルー・ヌード IV》1952年切り紙絵 103×74cm オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託) ©Succession H. Matisse Photo:Francois Fernandez 画家として歩み始めた初期の作品。 第1・2章では法律事務所で働いていたマティスが画家に転身した初期の作品も紹介。その後、様々な画家たちとの出会いから彼は色彩に傾倒してゆく。 アンリ・マティス《マティス夫人の肖像》1905年 油彩/カンヴァス 46×38cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo:Francois Fernandez アンリ・マティス《ロカイユ様式の肘掛け椅子》1946年 油彩/カンヴァス 92×73cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo:Francois Fernandez 大型作品への取り組み。 1920年以降は絵画に限らずテキスタイルや衣装、壁面装飾など大型作品も手掛けたマティス。第3章では記念碑ともいえる大型作品誕生の原点を探る。 アンリ・マティス《パペーテ - タヒチ》1935年油彩/カンヴァス 225×172cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo:Francois Fernandez ロザリオ礼拝堂に向けられた熱意。 晩年のマティスが4年もの歳月をかけ完成させた礼拝堂は、建築家やガラス、陶器職人などたくさんの人が関わって生まれた最高傑作。 アンリ・マティス《ステンドグラス、「生命の木」のための習作》1950年 ステンドグラス 62.3×91.5×2cm ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo:Francois Fernandez ヴァンスのロザリオ礼拝堂(内観) ©Succession H. Matisse Photo:Francois Fernandez マティス 自由なフォルム 国立新美術館 企画展示室 2E 東京都港区六本木7‐22‐2 開催中~5月27日(月)10時~18時(金・土曜~20時、入場は閉館の30分前まで) 火曜休(4/30は開館) 一般2200円ほか TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル) ※『anan』2024年2月28日号より。文・山田貴美子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/534088/ Source: ananweb

  • 2024.02.21

伝統的な染織技術×最先端テクノロジーも! テキスタイルの多彩な可能性を感じる展覧会 | ananweb – マガジンハウス

会場に足を踏み入れれば、一枚の布が放つ強いエネルギーやユニークな表情に驚くはず。第一線を走り続けるテキスタイルデザイナー・須藤玲子さんと、彼女がディレクターを務めるテキスタイルデザイン・スタジオ「NUNO」の約40年にわたる活動を振り返る展覧会が開催される。 染織の国から生まれるテキスタイルの物語。 須藤さんのディレクションの真骨頂といえば伝統的な染織技術と最先端テクノロジーの組み合わせだ。 「NUNOの制作を支える工場の多くは織りや染色、その他さまざまな加工に特化しています。一つのテキスタイルを世に送り出すため、複数の産地や工場、職人が協働し、技術を発揮。当たり前のように思われる生産のネットワークですが、実は日本で独特に発展した文化です」 と水戸芸術館現代美術センター・学芸員の後藤桜子さんは話す。 「須藤さん自身、職人のアイデアに背中を押されたり、『私を奮い立たせるアイデアを提供するのがデザイナーの役割』と技術者から鼓舞されることもあったそうです」 展示の核となるのはこうした舞台裏の臨場感が伝わる7つのインスタレーション。特殊な針山を用いるニードルパンチ技法の工程を再現していたり、渦巻き状のリボンが連なるテキスタイルの工程を追うインスタレーションでは、リボンが水に浸される瞬間を捉えた息を呑むような映像を見ることができる。 今にも動き出しそうなダイナミックな演出の展示《こいのぼり》も見逃せない。日本が培ってきた染めと織りの技術が結集した布から生まれるこいのぼりの姿は圧巻。水戸藩に由来する染色技法「水戸黒」を用いたこいのぼりも登場する。そのほか三角形が螺旋のようにねじれながら連続する同館のタワーをモチーフにした新作も。 「考え抜いて作られた一枚の布地はそれ自体が生き生きとして、使う人にも活気をもたらしてくれるもの。人の心を揺さぶるテキスタイルの多彩な可能性に、観る人一人ひとりが楽しみながら近づく機会になればと思います」 須藤玲子&アドリアン・ガルデール《こいのぼり》2008/2019(部分) 展示風景:「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong、2019-2020 ©CHAT(Centrefor Heritage, Arts and Textile)Hong Kong 《糸乱れ筋》に用いられるニードルパンチ機(部分) 展示風景:「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong、2019-2020 ©CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong 須藤玲子《糸乱れ筋》2006年 撮影:林雅之 須藤玲子《カラープレート》1997年 撮影:林雅之 展示風景:「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong、2019-2020 ©CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong 須藤玲子:NUNOの布づくり 水戸芸術館 現代美術ギャラリー、広場 茨城県水戸市五軒町1‐6‐8 2月17日(土)~5月6日(月)10時~18時(入場は17時30分まで) 月曜休(祝日の場合は翌火曜休) 一般900円ほか TEL:029・227・8111 ※『anan』2024年2月21日号より。取材、文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/532821/ Source: ananweb

  • 2024.01.29

日本での展覧会は8年ぶり! 村上隆、最新作のテーマは“もののけ”と“京都” | ananweb – マガジンハウス

21世紀のアートワールドの主要プレイヤーとして世界から注視される村上隆さんが、最新作をひっさげて京都の街に降り立つ。日本での展覧会は8年ぶり。“もののけ”、そして“京都”がテーマである。 現代美術の最前線が描く、京に蠢(うごめ)くもののけたち。 岩佐又兵衛《洛中洛外図屏風(舟木本)》、曾我蕭白(しょうはく)《雲龍図》などの村上版超大作をはじめ、京都祭礼行事や茶華道から着想した作品など、170点余りのうち約160点が新作という超人的な構成だ。引用される作品はいずれも江戸期の京都で花開いた琳派や狩野派、そして近年、高い評価を得る曾我蕭白、伊藤若冲(じゃくちゅう)ら「奇想の系譜」の画家たちによる日本絵画史上の傑作ばかり。「村上版」においては、京の町に漂うもののけの気配がより濃厚に描かれる。 全長約13mの大作、村上版《洛中洛外図》は、祭りや遊里、歌舞伎や浄瑠璃に興じる二千数百人の人々が登場。賑やかな都の様子を俯瞰して描くものの、その頭上には禍々しい髑髏(どくろ)の形を帯びた錦雲がたなびいている。平安京のインスタレーションでは、八角形の部屋の東西南北に町を守護する神獣(青龍、白虎、朱雀、玄武)の大型絵画を配置。中央には京都のへそと呼ばれる六角堂から着想を得た《六角螺旋(らせん)堂》がたたずみ、周囲をもののけがさ迷う。華やかな表層を1枚めくるとハレとケガレが隣り合う、もう一つの都の姿が立ち上がってくるようだ。 「村上版」を含め、新作のテーマを設定したのは、京都市京セラ美術館・事業企画推進室ゼネラルマネージャーを務める高橋信也さん。 「村上隆さんが京都で展覧会をする必然性を、私は確信していました。江戸期の京都の美術に並々ならぬ関心を持っていることは、村上さんの絵を見ればよくわかります」 これらの絵画のうちに村上さんが見出したのは、現代のアニメや漫画にも通底する「スーパーフラット」という原理。一点透視図法が浸透する以前、日本の絵師たちは2次元の紙の上でさまざまな構図を試みた。一瞬を切り取る独特のタイミング、四角い平面の中を緊張感を持って成り立たせる事物の配置の仕方など。そして村上さんは現代のアニメや漫画の1シーンやコマ割りでも、同じ方法で効果をあげていることを発見。2000年の「スーパーフラット宣言」以来、自身の創作においてこの原理を用いる姿勢を貫いている。 「現代美術とは1917年にマルセル・デュシャンが発表した《泉》(男性用便器を用いたレディメイド作品)以降、新しい認識をもたらさないものは認めないという、欧米の作ったルールに則って運営される視覚分野の1ジャンルです。その分野で村上さんは、古典的な技術も含めて日本美術のオリジナルな方法、つまり『スーパーフラット』で挑戦し続けるトップランナーなのです」 西洋美術にとって未知の領域として評価されているという、その絵画はどのように作られるのか。 例えば1枚の絵画に対して、シルクスクリーンを何百版と重ねる工程を経る。そして仕上げに透明な樹脂を塗ると、ぺらっと薄いセル画のように見えるのだという。が、横から見るとキャンバスの上にスクリーンを重ねた分の厚みがあり、完全なペインティングであることがわかる。 「海外の人にどうやって描いたのかと聞かれますが、全く新しい視覚体験に近いものだと思います」 村上さんの著書『想像力なき日本』に現代美術とは“作家が生きていた時点での現代”を時代を乗り越えて伝えるもの、という言葉がある。「現代」を一番パワフルに表現しうる手段として「スーパーフラット」で真っ向勝負する村上さんのよりどころが京都にある。この地と向き合って生まれた最新作の数々、気迫と美しさに触れてみてほしい。 日本初公開。全長18mの赤い龍は圧巻。 「奇想の系譜」の画家、曾我蕭白の《雲龍図》に衝撃を受け、筆で描いた。美術史家の辻惟雄氏と共にボストンで開催した展覧会の目玉となった。日本では初公開。村上隆 Takashi Murakami《雲竜赤変図《辻惟雄先生に「あなた、たまには自分で描いたらどうなの?」と嫌味を言われて腹が立って自分で描いたバージョン》》 Dragon in Clouds – Red Mutation:The version I painted myself in annoyance after Professor Nobuo Tsuji told me,“Why don’t you paint something yourself for once?” 2010年 作家蔵 Collection of the Artist ©2010 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. 神獣が守る村上版「平安京」が会場に出現。 (左)平安京を模したインスタレーションでは、さまざまな姿のもののけがさまよい、人間と共存していたさまを描く。村上隆 Takashi Murakami《想像を超えた宇宙の活性を想起する》Invoking the Vitality of a Universe Beyond Imagination 2018年 作家蔵 Collection of the Artist ©2018 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. (右)本作品には髑髏のモチーフがちりばめられ、生と死が隣り合う平安京の不穏な気配を漂わせている。村上隆 Takashi Murakami《竜頭 Gold》 Dragon Heads -Gold  2015年 作家蔵 Collection of the Artist, Courtesy of Galerie Perrotin ©2015 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. 京都で活躍した絵師たちの代表作を大胆に再解釈。 尾形光琳から着想を得た作品。正面を向く顔のある花は「スーパーフラット」の象徴的モチーフ。村上隆 Takashi Murakami《金色の空の夏のお花畑》(参考画像) Summer Flower Field under the Golden Sky 2023年 ©2023 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. 村上隆 むらかみ・たかし 1962年、東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。英国の雑誌『Art Review』が発表する「アート界で影響力のある100人」に10年連続で選出。今年はブルックリン、香港ほか、世界各地で個展を開催予定。撮影:Museum of Fine Arts, Boston ©2017 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. 「京都市美術館開館90周年記念展 村上隆 もののけ 京都」 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ 京都府京都市左京区岡崎円勝寺124 2月3日(土)~9月1日(日)10時~18時(最終入場は17時30分まで) 月曜休(祝日の場合は開館) 一般2200円ほか TEL:075・771・4334 ※『anan』2024年1月31日号より。取材、文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/528872/ Source: ananweb

  • 2024.01.22

たくさんの妖怪たちに会える! 水木しげる生誕100周年を祝う記念展が横浜に! | ananweb – マガジンハウス

全国各地で話題を呼んだ展覧会がついに横浜へ! 昨年秋に公開された映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』をはじめ、盛り上がりを見せているアニバーサリー企画のひとつ、漫画『ゲゲゲの鬼太郎』の作者・水木しげるさんの生誕100周年を祝う記念展「水木しげる生誕100周年記念 水木しげるの妖怪 百鬼夜行展~お化けたちはこうして生まれた~」が開催される。水木さんが生涯で描いた妖怪は日本のものだけで1000点近く。それらはどのように生み出されたのか? 創作の秘密を初めて解き明かすのが本展の試みだ。 鍵の一つに先達の妖怪文化人たちの存在がある。幼い頃から“妖怪感度”が高く、身の回りに目に見えないものたちの存在を感じていたという生い立ちから展示はスタート。妖怪たちと再び邂逅したのは左腕を失い、生死の淵をさ迷う過酷な従軍経験を経て復員した後。東京・神田の古書店街でのことだったという。 このとき出合った書籍が、江戸時代の浮世絵師・鳥山石燕(とりやま・せきえん)の画集『画図百鬼夜行』や昭和初期の民俗学者・柳田國男の著作『妖怪談義』だ。石燕の妖怪画を目にしたとき、これまで感じていた存在がそのまま描き出されていることに驚き、「やっぱり妖怪はいたんだ!」と感動したという。これをきっかけに現代の妖怪絵師としての才能が花開いていく。 「水木しげるが妖怪とどう向き合ってきたのか、順を追ってわかりやすく展示されています。特に水木が大きな影響を受けた『画図百鬼夜行』『妖怪談義』の展示は必見です」 と水木プロダクションの原口尚子さん。これらの資料からわかるのは、水木さんが昔の人が感じた「お化け」の形を大切にしていたということ。 例えば『画図百鬼夜行』に登場する「垢嘗(あかなめ)」、浮世絵師・歌川国芳が描く『相馬(そうま)の古内裏(ふるだいり)』に登場する巨大な骸骨など、先達の絵師たちが描いた妖怪の姿形を尊重し、ほぼそのまま活かしている。伝承として言葉だけで残る妖怪の場合は、さまざまな資料にあたって、丹念にその姿を浮かび上がらせたという。お馴染みの妖怪、「砂かけ婆」の表情が地方に伝わるお面を見て「これだ!」と決まったという具合に。 一方で「怖いだけではダメ」、と常々言っていたというように、よく見ると目元がかわいらしいなど、愛嬌があるのも水木さんの描く妖怪の魅力。会場では妖怪画の原画が100点以上、展示される。たくさんの妖怪たちに会えることに加え、肉筆に触れることで新しい発見もありそうだ。原口さん曰く、 「リアルな背景を描くことで、『妖怪がそこに存在している』という実存感を出そうとしていました」 Gペンで丹念に描きこまれた陰影、墨汁が醸し出す漆黒の味わいなど、妖怪絵師としての画力もじっくり味わいたいところ。 妖怪画を描くたびに心の中で「この形でいいでしょうか」と、その妖怪にお伺いを立てていたという水木さん。その心は妖怪を描き出すことより、その存在を現代に蘇らせることにあったという方が正確なのかもしれない。会場を後にする頃には、妖怪たちの存在がリアルに感じられるほど、私たちの妖怪感度も高まっているに違いない。 一反木綿 一反(約10m)ほどの白く長い布のようなものが空を飛び、時には人を襲うこともあるという。鹿児島県に伝わる妖怪。©水木プロダクション 海坊主 全国各地の海上に現れる妖怪。姿を見て驚いて叫ぼうものなら、たちまち船はひっくり返されてしまうため、船乗りたちから恐れられた。©水木プロダクション がしゃどくろ 埋葬されなかった者の骸骨や怨念が集まり、巨大な骸骨となってガシャガシャと音を立ててさ迷う。幕末の浮世絵師・歌川国芳の作品を参考に。©水木プロダクション あかなめ 鳥山石燕が描いた『画図百鬼夜行』にも登場する妖怪。長い舌で風呂桶の垢をなめるといわれ、つまり風呂掃除をさぼっていると現れる!?©水木プロダクション みずき・しげる 1922年生まれ。鳥取県境港市で育つ。太平洋戦争時、激戦地だったパプアニューギニアのラバウルに出征。爆撃で左腕を失う。復員後、紙芝居作家を経て漫画家に。妖怪研究家としての顔も持つ。代表作に『ゲゲゲの鬼太郎』『日本妖怪大全』など。2015年没。 水木しげる生誕100周年記念 水木しげるの妖怪 百鬼夜行展~お化けたちはこうして生まれた~ そごう美術館 神奈川県横浜市西区高島2‐18‐1 そごう横浜店6F 1月20日(土)~3月10日(日)10時~20時(入館は閉館の30分前まで) 会期中無休 一般1600円 TEL:045・465・5515 ※『anan』2024年1月24日号より。取材、文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/527631/ Source: ananweb

  • 2023.12.12

もふもふした子犬の姿に思わずきゅん! 若冲や土牛の作品も登場、癒やしの日本美術展 | ananweb – マガジンハウス

大胆な構図と斬新な作風で有名な日本絵画の鬼才・伊藤若冲(じゃくちゅう)や長沢芦雪(ろせつ)。そんな従来のイメージを一新する、ゆるくてユーモアあふれる作品を紹介しているのが、特別展『癒やしの日本美術―ほのぼの若冲・なごみの土牛―』。まるでゆるキャラのような若冲の《布袋図》や、もふもふの描写がたまらない芦雪の《菊花子犬図》など、希少な個人所有品も数多く登場する。 その可愛らしさに、きゅんとする。思わず笑みがこぼれる日本美術。 また奥村土牛(とぎゅう)の《兎》や竹内栖鳳(せいほう)の《鴨雛》といった、ふわふわの動物画、愛らしい子供画など、キュートなモチーフが集まっていて、日本画初心者も気軽に楽しめるはずだ。 伊藤若冲《伏見人形図》1799(寛政11)年 紙本・彩色 山種美術館伏見稲荷の土産物として知られる素朴な伏見人形は、若冲が長年好んで取り上げた絵のモチーフ。 伊藤若冲《布袋図》18世紀(江戸時代) 紙本・墨画 個人蔵特にふくよかな姿の布袋さん。吉祥画題でおなじみの、このテーマの作品も数多く残っている。 長沢芦雪《菊花子犬図》18世紀(江戸時代) 絹本・彩色 個人蔵子犬の絵でも有名な円山応挙の弟子・長沢芦雪。彼の犬の絵は師匠譲りで写実的だったが、次第にゆるくなり、キュートなフォルムの子犬画は江戸時代にも大ブレイクした。 特別展『癒やしの日本美術―ほのぼの若冲・なごみの土牛―』 山種美術館 東京都渋谷区広尾3‐12‐36 開催中~2024年2月4日(日)10時~17時(入場は閉館30分前まで) 月曜(1/8は開館)、12/29~1/2、1/9休 一般1400円ほか TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル) ※『anan』2023年12月13日号より。文・山田貴美子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/520438/ Source: ananweb