展覧会

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  • 2023.12.06

愛らしい表情やぎこちないフォルムに夢中! みちのくの“民間仏”に注目した仏像展 | ananweb – マガジンハウス

多種多様な民間仏に込められた、人々の祈りとは? 仏像展「みちのく いとしい仏たち」をご紹介します。 みちのく いとしい仏たち 「仏」という言葉から連想される一般的な姿とは微妙に異なる愛らしい表情やぎこちないフォルム。それなのに不思議と親近感が湧いてくるこれらの仏像は江戸時代、みちのくの地で作られた“民間仏”。大工や木地師(きじし※ろくろを用い、主に木工品などを作る職人)が製作した民間仏は小さなお堂や祠に祀られ、人々の心の拠り所、そして日常のささやかな祈りの対象として大切にされてきた。 しかし、当時は上方や江戸で修練を積んだ仏師が、立派で端正な姿の仏像を製作し、全国に広がっていった時代。そんな時代に、なぜみちのくでは民間仏が浸透していた? 「立派な仏像・神像は大変ありがたい存在ではありますが、厳しい風土を生きる東北の人々は、生活のなかの小さな愚痴やちょっとした日々の心配ごとなどを聞いてもらう対象として、もっと親しみやすい存在を必要としていたのでしょう。それは必ずしも立派な姿である必要はなく、やさしい姿かたちのお像で十分だったのだと思います。むしろそうしたお像だから悩みを打ち明けやすかったのでは」(東京ステーションギャラリー学芸員・柚花文さん) 民間仏の造形は、シンプルさを追求したようなものから、装飾性のあるもの、立像から坐像までさまざま。 「立派なご本尊も目にしているはずなので、大工さんも仏像の造形の基本を知らなかったわけではないはず。その上で仏像作りのルールに忠実に従うよりも、依頼主の気持ち、たとえば疫病、飢饉、災害などで命を落とした人々への鎮魂などに寄り添い、できる技術の範囲のなかで心を込めて作った結果、生まれた造形なのだと思います」 「笑みをたたえる」「ブイブイいわせる」といったユニークな8つのセクションで構成され、約130の民間仏が展示される本展。歴史ある東京ステーションギャラリーならではのレンガ壁の展示室とマッチした風景も、見どころのひとつになりそう。 「難しい話は抜きにして、人々が民間仏にどのような祈りを込めてきたのかについて、思いを馳せながら楽しんでいただければ」と柚花さん。似ている誰かを想像したり、お気に入りのひとつを見つけたり。仏像展初心者も、ぜひ足を運んでみて。 《六観音立像》江戸時代 宝積寺/岩手県葛巻町良質なカツラの木に彫られたあっさり顔の六観音立像。顔とは対照的に衣のひだからは手が込んでいることがわかる。6体並んだときの祈りの静けさと装飾性を帯びた造形が秀逸。 《山神像》江戸時代 兄川山神社/岩手県八幡平市本展のメインビジュアルにも選ばれた、林業に携わる人々に今なお厚く信仰されている山神様。狭い肩、バランスのとれた3頭身、控えめな合掌ポーズが魅力的。 《不動明王二童子立像》江戸時代 洞圓寺/青森県田子町腰をくねらせた不動明王と、やんちゃそうな筋肉もりもりの童子たち。山深い土地で生まれた味わいあるトリオ。 《鬼形像》江戸時代 正福寺/岩手県葛巻町地獄で亡者の罪を責め苛む鬼が、左手に女性を引きずり得意満面な表情を見せる。楽しそうな表情からは、つらい現世を笑い飛ばしたいという願いも見受けられる。 《童子跪坐像》右衛門四良作 江戸時代(18世紀後半) 法蓮寺/青森県十和田市丸みを帯びた像の底が前後に揺れる可愛らしい仏像。十和田にはこうした武骨で優しい像が多く残されている。 みちのく いとしい仏たち 東京ステーションギャラリー 東京都千代田区丸の内1‐9‐1(JR東京駅 丸の内北口 改札前) 12月2日(土)~2024年2月12日(月)10時~18時(金曜~20時。入館は閉館の30分前まで) 月曜(1/8、2/5、2/12は開館)、12/29~1/1、1/9休 一般1400円ほか TEL:03・3212・2485 ※『anan』2023年12月6日号より。写真・須藤弘敏 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/519150/ Source: ananweb

  • 2023.12.03

還暦を機に人生初の個展開催! 松尾スズキ「わかりやすいものを描いたら負けだなと (笑) 」 | ananweb – マガジンハウス

舞台や映画、小説、コントなど、あらゆる分野で独自の世界観を生み出している松尾スズキさん。還暦を機に人生初の個展を開く。その名も「生誕60周年記念art show『松尾スズキの芸術ぽぽぽい』」。 わかりやすいものを描いたら負け(笑)。ポエムも添えました。 「コロナ禍で時間が空いてしまった時に、部屋に飾る絵が欲しいなとキャンバスに描き始めたんです」 小さい頃から絵が好きで漫画家を目指した時期もあり、美大のデザイン科に進学した。表現のスタートは絵なのだが、演劇の道に進んでから、仕事を離れ、純粋に作品を描いたのは久々の体験だった。 「数年前からiPadで描くことを覚えて、連載しているメールマガジンにイラストを発表したりしていました。そして、自分は絵を描くのが好きだったと思い出したんです。ただ、アクリル絵の具で描きだしてからは、デジタルで描こうという気にならなくなってしまって」 iPadと、紙やキャンバスに描くのでは肉体的な感覚が全く異なる。 「紙の上にペンを走らせる時のカリカリカリというASMR的な気持ちよさ(笑)。はみ出さずに色を塗れた快感や、パレットと紙の上に載せた色が変わって見える驚き。アナログの『失敗できない』という緊張感は、舞台と似ているところがあるのかもしれません」 還暦のイベントとして展示するのはどうか、とスタッフの発案で本展の開催が決まった。2年間ひたすら描き続け、大小合わせて約250点以上の作品が展示される。描く中で気づいたのは、背景よりもキャラクターを描きたいということだった。 「『シン・ヒョットコ』のフォルムを見つけた時は興奮しました」 花瓶のような輪郭の「シン・ヒョットコ」や、ぶ厚い唇の怪獣(?)「トゲくちびる」など、独自のキャラクターがたびたび登場する。 「モンスターのモチーフは多いですね。勝手に頭の中で、松尾の中のアベンジャーズがポーズを決めている感じ(笑)。僕自身、俳優としても動いていたいタイプなので、絵の中でも普通には立たせたくないんです」 横尾忠則さんや岡本太郎さんの作品に惹かれるという松尾さん。 「描かずにいられなかったんだろうと思わせる、己が出ている作品が好きですね。わかりやすいものを描いたら負けだなと思って(笑)」 ただ、意識しているのは「どこか可愛げのある絵」。ポップな色調の自画像や屏風のようなものなど、作品もバラエティに富んでいる。また、本展では作品ごとにポエムのような小さな文章を添えるらしい。 「読み物としても楽しんでもらえたらと、図録にも全て収録します。めちゃくちゃ大変でしたが、自分はやっぱり言葉の人間でもあるのだなと思いました」 豪華ゲストを迎えたトークセッションのほかに、映像や立体作品なども展示する。自ら台本を書き、吉田羊さんとのかけ合いで構成する本人による音声ガイドは必聴だ。タイミングが合えば、会場で松尾さん本人に会えるかも? 人を楽しませることにこだわってきた松尾さんらしいart showになる予感。 「花とおじさん」アクリル/キャンバスボード 横240mm×縦300mm 「トゲくちびる・発射」アクリル/画用紙 横242mm×縦350mm まつお・すずき 1962年、福岡県生まれ。作家、演出家、俳優。’88年に大人計画を旗揚げ。2020年よりBunkamuraシアターコクーン芸術監督、’23年より京都芸術大学舞台芸術研究センター教授に就任。著書に『人生の謎について』『矢印』『ツダマンの世界』など。 「生誕60周年記念art show『松尾スズキの芸術ぽぽぽい』」 絵と作品に添えた文章、音声ガイドの情報から想像を膨らませて、立体的に楽しんでほしい、と松尾さん。作家の脳内探索ができるような展示を目指している。作品の複製画(ジグレー)、銅版画(エッチング)をサイン入りで販売するほか、Tシャツやクリアファイル、豆皿などグッズ展開もある。スパイラルホール(スパイラル3F) 東京都港区南青山5‐6‐23 12月8日(金)~15日(金)11時~17時(8日は13時~20時、9・10日は11時~20時)。日時指定予約制。前売り1900円ほか。松尾スズキさん本人による音声ガイド付き入場券も。当日券あり。大人計画 TEL:03・3327・4312(平日11時~19時) ※『anan』2023年12月6日号より。写真・小笠原真紀 インタビュー、文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/519129/ Source: ananweb

  • 2023.11.28

麻布台ヒルズギャラリー開館記念! オラファー・エリアソンの展覧会が訴えかけるもの | ananweb – マガジンハウス

今月24日に開業する麻布台ヒルズの一角に、麻布台ヒルズギャラリーがオープンする。その開幕を飾るのが注目のアーティスト、オラファー・エリアソンの展覧会だ。 光と水、幾何学形態が描く、自然が秘める美をこの目で。 「本展のねらいは、敷地内にある森JPタワーのオフィスロビーで公開されるパブリックアート、《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》のコンセプトを探求することにあります。ぜひパブリックアートを観賞してからご来館ください」 と森美術館アソシエイト・キュレーターの德山拓一さん。本作は小さな11面体が連なる作品で、リサジュー曲線と呼ばれる数式が導き出す図形を立体にしたもの。環境問題を扱ったテーマで知られるエリアソンだが、幾何学的な形態の研究を長年続け、その集大成ともいえる。会場ではこの作品が生まれたバックグラウンドとして、新作を含む日本初公開の15点が展示される。 エリアソンの名を一躍有名にしたのは、2003年、ロンドンのテート・モダンで発表した大型のインスタレーション《ウェザー・プロジェクト》だ。 「夕焼けを再現した作品で、それ以降も身の回りにある自然現象や光、水などを使い、見る、聞くといった知覚に訴えかける作品を制作しています。非常にシンプルですが、強いインパクトを与えるのが特徴です」 今回も水を使った大規模なインスタレーションや光の反射を用いた作品が展示されるほか、ドローイングマシンを体験できるコーナーも。 「美しさとは人の感覚に直接訴えかけるもので、美しさが人の意識を変えることができると信じている」とは、德山さんが作家にインタビューした際に印象に残った言葉だとか。 「彼の作品は、光はこんなにきれいなんだ、水でこんなに複雑な表現ができるんだと、その本質的な姿を出現させてくれます。そうした個々の気づきを意識の変革につなげるのが素晴らしい。本展もそういう観点から観てもらえれば嬉しいです」 《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》(部分)2023年 展示風景:麻布台ヒルズ森JPタワーオフィスロビー、2023年 撮影:木奥恵三 小さな11面体の特定の面と面をつなぎ合わせることで、リサジュー曲線を描く立体作品。1つでも面がずれると全く異なる形になってしまうとか。 《蛍の生物圏(マグマの流星)》2023年 撮影:Jens Ziehe 3重に重なるガラスの多面体を通過した光の乱反射が七色に変化する。イマーシブル(没入型)な体験ができる美しい作品。 《瞬間の家》2010年 撮影:Christian Uchtmann 展示会場の半分を占める、水を使った大型インスタレーション。自在に形を変えられる水の特性を生かした表現に注目を。 スタジオ・オラファー・エリアソン キッチンでの昼食の様子(2017年) 撮影:Maria del Pilar Garcia Ayensa 会期中、麻布台ヒルズギャラリーカフェでは、ベルリンにあるスタジオ・オラファー・エリアソン キッチンとのコラボレーションメニューを味わえる。 麻布台ヒルズギャラリー開館記念 オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期 麻布台ヒルズギャラリー 東京都港区虎ノ門5‐8‐1 麻布台ヒルズガーデンプラザA MB 階 11月24日(金)~2024年3月31日(日)10時~19時(火曜~17時、金・土・祝前日~20時。入館は閉館の30分前まで) 1月1日休 一般1800円ほか azabudaihillsgallery@mori.co.jp ※『anan』2023年11月29日号より。取材、文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/517978/ Source: ananweb

  • 2023.11.27

日本は“グラフィックデザイン”が豊富! 文字によるデザインの奥深さを体感する企画展 | ananweb – マガジンハウス

ポスターや商品のパッケージといった、平面の媒体に用いられるグラフィックデザイン。写真やイラスト、文字などを配して、必要な情報を伝達するデザインのことだが、とくに“文字”に注目すると、日本のグラフィックデザインのバリエーションは非常に豊か。漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、縦組み、横組みと表現方法が多岐にわたり、文字をレイアウトするうえで様々な選択肢があるからだ。 日本の“文字”によるデザインの多様さを体感しよう。 21_21 DESIGN SIGHTで開催される「もじ イメージ Graphic展」は、そんな日本のグラフィックデザインを、文字とデザインの関係からひもとく企画展。近年のグラフィックデザインの歴史を探りながら、とくにパソコン上でデータ制作を行うDTPが主流となった、1990年代以降のデザインにスポットを当てる。展覧会ディレクターを務めるのは、グラフィックデザインに関する著書を手がける編集者の室賀清徳と、グラフィックデザインの研究を行う後藤哲也、グラフィックデザイナーの加藤賢策の3人。 展示は、佐藤可士和、祖父江慎+コズフィッシュ、立花ハジメ、平林奈緒美ほか、国内外の約50組のグラフィックデザイナーやアーティストによるクリエイションが中心となる。ポスターや書籍、看板の実物展示、壁面を使った大型出力展示など、その数250点以上。街で見かけたことがある作品にも出合えるかも。 ディレクターの一人である室賀は、バリエーション豊かな日本の文字について、「図像と自在に融合するレイアウトデザインにもつながっている」と言う。そんな視点を持つと、普段は何気なく見ていたグラフィックデザインの遊び心や奥深さ、多様さを、改めて感じられるはずだ。 大日本タイポ組合 「トイポグラフィ」(2007) BALCOLONY. 「『魔法少女まどかマギカ』1完全生産限定盤 Blu‐ray」(2011) ©MagicaQuartet/Aniplex・Madoka Partners・MBS 寄藤文平 「東京メトロ マナーポスター『家でやろう』」(2008) 大島依提亜 映画「ヒッチコック/トリュフォー」(2016) イラストレーション:和田 誠 投票ポスタープロジェクト 「投票ポスター」(2022・抜粋) 山田和寛 書籍「作字百景 ニュー日本もじデザイン」(2019) もじ イメージ Graphic展 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2 東京都港区赤坂9‐7‐6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン 11月23日(木)~2024年3月10日(日)10時~19時(入場は閉館の30分前まで) 火曜(ただし12/26は開館)、12/27~1/3休 一般1400円ほか TEL:03・3475・2121 ※『anan』2023年11月29日号より。文・保手濱奈美 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/517964/ Source: ananweb

  • 2023.11.21

色褪せることのない名作を数多く残した、伝説のデザイナー・倉俣史朗に迫る展覧会 | ananweb – マガジンハウス

1960年代以降のデザイン界で、世界的に高い評価を受けたデザイナー倉俣史朗。彼は当時、一世を風靡した飲食店や服飾店の店舗デザインを手がけ、独創的な家具も発表。その作品は日本以上に、ヨーロッパで広く注目された。しかしキャリアの絶頂期だった’91年に、56歳の若さで、心不全により突如亡くなってしまう。その早すぎる死のため「伝説のデザイナー」とも呼ばれた彼の、作品と人物像に迫る展覧会が始まる。 倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙 倉俣は、父の勤務先である本郷の理化学研究所内の社宅で9歳まで育つ。当時の理研は研究棟から工場、テニスコートも完備されたひとつの街で、建物内には当時珍しかった洋式トイレや大理石のエントランスホールがあり、実験用のガラス瓶や金属も身近だった。倉俣と聞いてアクリルやガラスなどの素材を思い浮かべる人も多いが、それには幼少時代が大きく影響していると考えられる。 本展では独立前のアパレル会社「三愛」時代の仕事に始まり、後の年代を4パートに区切り、彼の仕事をテーマごとに紹介する。なかには「倉俣史朗の私空間」として、愛蔵の書籍やレコードなども展示。エピローグでは、イメージ・スケッチとあまり公開されてこなかった夢日記や言葉をまとめて紹介し、倉俣史朗のデザインとその神髄を検証する。 デザイン黎明期の日本にあって、なぜ倉俣は色褪せることのない名作をこれほど数多く残せたのだろうか。本展を見れば、その頭の中も覗くことができるかもしれない。 倉俣史朗 イメージスケッチ「ミス・ブランチ」 1980年代 クラマタデザイン事務所蔵 ©Kuramata Design Office 倉俣史朗 スケッチブック「言葉 夢 記憶」より 1980年代 クラマタデザイン事務所蔵 ©Kuramata Design Office 貴重なスケッチ画も。上は〈ミス・ブランチ〉構想中のスケッチ。下は夢の記憶が記されたもの。ポエティックな文章も魅力的。 倉俣史朗《引出しの家具》1967年 富山県美術館蔵 ©Kuramata Design Office椅子か収納かを問う「引出しの家具」シリーズの1作目。 倉俣史朗 ショップ「スパイラル」 1990年 撮影:淺川敏 ©Kuramata Design Office六本木のAXISビルにあったインテリア店もこの内装で有名に。 倉俣史朗《ミス・ブランチ》1988年 富山県美術館蔵 撮影:柳原良平 ©Kuramata Design Office映画『欲望という名の電車』のミス・ブランチへのオマージュとして作った倉俣の代表作。 倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙 世田谷美術館 1階展示室 東京都世田谷区砧公園1‐2 11月18日(土)~2024年1月28日(日)10時~18時(入場は閉館の30分前まで) 月曜(1/8は開館)12/29~1/3、1/9休 一般1200円ほか TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル) ※『anan』2023年11月22日号より。文・山田貴美子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/516786/ Source: ananweb

  • 2023.10.24

「世界のムナカタ」の全容を紹介! 版画の可能性を拡大した立役者・棟方志功の大回顧展 | ananweb – マガジンハウス

浮世絵以降、最も愛された版画家「世界のムナカタ」の大回顧展。「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」をご紹介します。 ドキュメンタリー映像に残る、板に額をすりつけるように一心不乱に彫る姿は一度見たら忘れられない。現代を代表する版画家・棟方志功の大回顧展が始まる。故郷・青森、疎開先の富山、芸術活動の中心地・東京と、各地域との関わりを軸に、1956年のヴェネチア・ビエンナーレの大賞受賞作をはじめ、ゴッホに憧れた若き日の油彩画、生涯取り組んだ「倭画(やまとが)」(自作肉筆画の呼称)、名デザイナーの一面が覗く装丁まで「世界のムナカタ」の全容を紹介。 子どもの頃から強度の近視で後に左目を失明。わずかに見える右目を頼りに創作を続けた棟方は、「板の声を聞き、板の生命を彫り起こす」という信念から自作の版画を「板画(はんが)」と称した。版木に残る鋸目(のこぎりめ)を生かした墨色の面、丸刀で彫った白い線というスタイルを確立。公共建築の壁画を手がけたことで浮世絵以来、本のように眺めて楽しむものだった版画の可能性を拡大した立役者とも。ドラマや戯曲の主人公として繰り返し演じられ、愛用の眼鏡や彫刻刀が「ムナカタ・モデル」として販売されるなど本人への注目度も高かったよう。幸福な作家人生の秘密はどこに? 本物の熱量から感じて。 棟方志功 《飛神の柵》(とびがみのさく) 1968年 棟方志功記念館 棟方志功 《ホイットマン詩集抜粋の柵》「Perfections」》 1959年(1961年摺) 棟方志功記念館 棟方志功 《華厳松》 1944年 躅飛山光徳寺 むなかた・しこう 1903年、青森県に生まれる。1928年、油画《雑園》で帝展初入選。1932年以降、版画に道を定め、文士や民藝運動のメンバーと交流を深める。1956年、第28回ヴェネチア・ビエンナーレ国際版画大賞受賞。1970年、文化勲章受章。1975年没。撮影:原田忠茂 生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ 東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー 東京都千代田区北の丸公園3‐1 開催中~12月3日(日)10時~17時(金・土曜は~20時。入館は閉館の30分前まで) 月曜休 一般1800円ほか TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル) ※『anan』2023年10月25日号より。文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/511368/ Source: ananweb

  • 2023.09.05

101歳の現役染色家・柚木沙弥郎の作品展。創作に影響を与えた“仲間”にもフォーカス | ananweb – マガジンハウス

今年で101歳を迎える今もなお、染色家として多くの作品を作り続ける柚木沙弥郎(ゆのき・さみろう)。染色家、工芸家、絵本作家とマルチに活躍し続けてきた彼の作品は、どれも愛らしい。そんな彼の創作を語る上で欠かせないのが、同時代を共に歩んできた仲間たちの存在。『柚木沙弥郎と仲間たち』では、柚木の染色作品を中心に、一緒に切磋琢磨してきた陶芸家・武内晴二郎や舩木研兒(ふなき・けんじ)、工芸家・鈴木繁男らの作品も展示。柚木の師である染色家・芹沢銈介(けいすけ)を中心に結成された染色家の団体「萌木会」の仲間たちも取り上げる。 仲間がいたから極められた、作る楽しみと生きる喜び。 東京帝国大学(現・東京大学)で美術史を学んだ柚木は、倉敷にある大原美術館の売店で目にした芹沢の型染カレンダーに感銘を受け、染色に関心を持つように。日本民藝館の創設者・柳宗悦(むねよし)の紹介で芹沢に弟子入りした柚木は、彼に勧められ静岡県由比の染物屋・正雪紺屋(しょうせつこうや)で住み込みの修業を始める。厳しい修業時代にも交流を重ねたのが陶芸家の武内だ。彼とは初対面の日から急速に親しくなり、生涯の友に。同じく陶芸家の舩木は島根県松江市にある布志名(ふじな)焼舩木窯の5代目で、柚木と親交を深めたひとり。英国の伝統的な技法に倣った舩木の動物文様の作品は、スポイトを使って描かれることでも有名。また柳宗悦唯一の内弟子であった工芸家の鈴木は、柚木に民藝の本意を伝え、それは柚木の創作に大きな影響を与えた。 誰にとっても想いを分かち合える仲間の存在は大きい。柚木はその後、師匠が主宰した「萌木会」の活動にも精力的に取り組むように。萌木会が制作した浴衣は「萌木浴衣」と呼ばれ広く支持を集めた。芹沢は当時人気を博していたテキスタイルデザインに負けるな、とメンバーを叱咤激励したとか。彼らはそんな固い結束力のチームでもあった。 そんな彼らが切磋琢磨して作り上げた作品は、どれも創作を楽しんでいる様子が伝わる名作ばかり。改めて「成長する人の陰に、いいライバルあり」は事実だと納得させられる。 切磋琢磨した仲間たちとの日々。 芹沢に弟子入りする契機となった型染カレンダーに、武内晴二郎や舩木研兒、鈴木繁男の作品も紹介。民藝作家の個性にも注目したい。 《注染水玉文布》柚木沙弥郎 1950年代 510.0×91.0cm(部分)日本民藝館蔵 《黄釉鳥文鉢》舩木研兒 1952年頃 11.5×40.0cm 日本民藝館蔵 生活を彩る柚木作品。 量産化できる注染という技法で作られた柚木の布は、洋服や帯だけでなく服地やカーテン、タペストリーなど様々な用途に用いられた。 写真右《型染爪文帯地》柚木沙弥郎 1991年(部分)日本民藝館蔵 写真左《型染飾布「メキシコ人物」》柚木沙弥郎 1970年代(部分)日本民藝館蔵 協業で広まる、萌木会の活動。 師匠の芹沢が主宰した萌木会は個人ではできない幅広い仕事の場。カレンダーやカードなど布以外の制作も、萌木会として行った。 《沖縄笠団扇文着物》芹沢銈介 1960年頃 日本民藝館蔵 柚木沙弥郎と仲間たち 日本橋髙島屋S.C.本館8階ホール 東京都中央区日本橋2‐4‐1 9月6日(水)~25日(月)10時30分~19時30分(最終日は~18時。入場は閉場の30分前まで) 会期中無休 一般1200円ほか TEL:03・3211・4111(代) 柚木沙弥郎 1922年東京生まれ。染色家。型染による染布、染絵などの作品を制作し、国内外で数多くの個展を開催。絵本の仕事や立体作品、グラフィックの仕事にも取り組む。女子美術大学名誉教授。2021毎日デザイン賞受賞。 ※『anan』2023年9月6日号より。文・山田貴美子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/502819/ Source: ananweb