松本あかね

  • 2024.04.03

「未来のかけら」を探そう! 身体拡張の実験ほか、最先端の研究と出合える展覧会 | ananweb – マガジンハウス

21世紀が始まって四半世紀もたたないうちに、私たちの生活を一変させる製品やサービスが続々と普及した。例えばパソコン、スマホ、SNSなど。近い将来こうした革新的な発明品が再び登場するとしたら、世界はどんな広がりを見せるだろう? 科学とデザインが出合い、生まれる「未来のかけら」を探して。 本展「未来のかけら:科学とデザインの実験室」のディレクターを務める山中俊治さんは、腕時計から家電、鉄道車両まで幅広くデザインを手掛ける一方、2001年以降は先端技術の研究者たちとプロトタイプ(試作モデル)の作製に取り組んできた。東京大学に着任してからは「Design‐Led X(価値創造デザインプロジェクト)」を始動。実用化以前の科学的知見や技術に形を与え、未来を探る試みに力を注ぐ。 会場では研究室から生まれたプロトタイプやロボットに加え、7組のデザイナー・クリエイターと科学者・技術者によるコラボレーション作品を展示。例えば約100人の研究者が携わる「稲見自在化身体プロジェクト」では、人間がロボットや人工知能と「人機一体」となり、従来の運動能力や知覚を超えて行動する「自在化」を目指す。こうした身体拡張の実験のほかにもバイオ工学、構造形態学などの最先端の研究が具体化、実装化されて現れる。おそらくこのうちのいくつかが未来を形作るピースになるのだ。そのかけらを私たちは見つけられるだろうか。 山中研究室+稲見自在化身体プロジェクト「自在肢」 荒牧悠+舘知宏「座屈不安定性スタディ」 山中研究室+新野俊樹+鉄道弘済会義肢装具サポートセンター他「Rami」(撮影:加藤康) 「未来のかけら:科学とデザインの実験室」 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2 東京都港区赤坂9‐7‐6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内 3月29日(金)~8月12日(月)10時~19時(入場は18時30分まで) 火曜休 一般1400円ほか TEL:03・3475・2121 ※『anan』2024年4月3日号より。文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/540212/ Source: ananweb

  • 2024.03.28

バンクシーからカウズまで! “アーバン・アート”のアイコン的な作品と出合える展覧会 | ananweb – マガジンハウス

今、ヨーロッパで高い人気を誇る“アーバン・アート”。ドイツ・ミュンヘンにあるMuseum of Urban and Contemporary Art(MUCA)のコレクションから、このジャンルを切り拓いてきた10名の作品がやってくる。都市の壁や橋に絵を描く覆面アーティストのバンクシーをはじめ、彼らの大胆な活動を見聞きした人も多いはず。まずアーバン・アートとは何? とMUCA共同創設者のステファニー・ウッツさんに聞いた。 都市を駆け抜けるアーティストの声なき声を聞け。 「今回紹介するアーティストの多くは大規模な絵画であれインスタレーションであれ、都市の公共空間で制作しており、“Urban”という表現はそれを強調しています。振り返れば1968年の五月革命の際、エコール・デ・ボザール(パリ国立高等美術学校)の学生たちが描いたポスターが彼らの初期のインスピレーションだったといえるでしょうし、1980年代のニューヨークで起こったグラフィティ・ムーブメントも大きな影響を与えています」 バスキアやキース・ヘリングと同時代に活躍したリチャード・ハンブルトンの作品が展示に加えられているのも、そうした流れを汲んでのこと。もう一つ触れておきたいのは、アーバン・アート作品の多くが無許可で制作されており、その点が行政の承認を得て作られる「パブリックアート」とは異なること。なぜ彼らはあえて都市景観の中に自らの作品を刻もうとするのだろうか? 「アーバン・アートの共通点は、誰でも見ることができるという民主主義の原則にあります。彼らが世界中の都市の公共の壁に作品を制作するのは、アートに出合ったことのない新しい観客を取り込むことに本質的な関心を持っているからでしょう」 何の権威の後ろ盾もないインディペンデントな立ち位置にありながら、過去20年間に多くの国際的なアーティストが生まれたのは、“新しい観客”たちの熱い支持によるに違いない。なかでも注目したい作品は? 「バンクシーの“Are You Using That Chair?”は芸術の歴史を風刺する見事な例。ヴィルズのポートレートは卓越した技術とメッセージ性を兼ね備えています。インベーダーも要チェック。ポップカルチャーにインスパイアされた彼の作品は、モザイクアートで世界中の壁を『侵略』するプロジェクトと完璧に合致しています」 過去に話題をさらいながら、現在では見ることができない作品も多い。この展覧会でアーバン・アートのアイコン的な作品とぜひ出合って。 NYの街のバスシェルター広告にキャラクターを描き込む「サブバータイジング」によって一躍時の人となったカウズ。「×」印の目が特徴の「コンパニオン」は世代を超えたファンを持つ。カウズ「4フィート・コンパニオン(ディセクテッド・ブラウン)」Photo by ©MUCA / wunderl and media 国籍、年齢など一切不明の覆面アーティストの代表的な彫刻作品。古典的な彫刻の額に生々しい弾痕が。西洋の伝統芸術に強烈なアンチテーゼを突きつけているようにも。バンクシー「ブレット・ホール・バスト」Photo by ©MUCA / wunderland media 壁の表面を爆発物などを利用して削り取るスクラッチ技法で描かれたポートレート。ポルトガル人アーティスト、ヴィルズの代表作で、人々の移動や都市化に伴って起こる社会的な変化がテーマ。ヴィルズ「ディスパーサル・シリーズ #14」Photo by ©MUCA / wunderland media 「スペース・インベーダー」の愛称で親しまれ、1970~’80年代のビデオゲームに影響を受けたモザイクアートを制作。文化的、歴史的に重要とされる場所で作品を発表している。インベーダー「ルービック・アレステッド・シド・ヴィシャス」Photo by ©MUCA / wunderland media 現代のストリートアーティスト、グラフィックデザイナーのなかでも際立った才能を持つ一人。キング牧師の威厳ある姿から正義と平等を求めて非暴力で闘った牧師への敬意がうかがえる。シェパード・フェアリー「MLK JR」Photo by ©MUCA / wunderland media テレビ朝日開局65周年記念 MUCA(ムカ)展 ICONS of Urban Art~バンクシーからカウズまで~ 森アーツセンターギャラリー 東京都港区六本木6‐10‐1 六本木ヒルズ森タワー52F 開催中~6月2日(日)10時~19時(金・土・祝・祝前日、4/27~5/6は~20時。入館は閉館の30分前まで) 会期中無休 一般2400円ほか ※事前予約制  TEL:050・5541・8600 ※『anan』2024年3月27日号より。取材、文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/538915/ Source: ananweb

  • 2024.02.21

伝統的な染織技術×最先端テクノロジーも! テキスタイルの多彩な可能性を感じる展覧会 | ananweb – マガジンハウス

会場に足を踏み入れれば、一枚の布が放つ強いエネルギーやユニークな表情に驚くはず。第一線を走り続けるテキスタイルデザイナー・須藤玲子さんと、彼女がディレクターを務めるテキスタイルデザイン・スタジオ「NUNO」の約40年にわたる活動を振り返る展覧会が開催される。 染織の国から生まれるテキスタイルの物語。 須藤さんのディレクションの真骨頂といえば伝統的な染織技術と最先端テクノロジーの組み合わせだ。 「NUNOの制作を支える工場の多くは織りや染色、その他さまざまな加工に特化しています。一つのテキスタイルを世に送り出すため、複数の産地や工場、職人が協働し、技術を発揮。当たり前のように思われる生産のネットワークですが、実は日本で独特に発展した文化です」 と水戸芸術館現代美術センター・学芸員の後藤桜子さんは話す。 「須藤さん自身、職人のアイデアに背中を押されたり、『私を奮い立たせるアイデアを提供するのがデザイナーの役割』と技術者から鼓舞されることもあったそうです」 展示の核となるのはこうした舞台裏の臨場感が伝わる7つのインスタレーション。特殊な針山を用いるニードルパンチ技法の工程を再現していたり、渦巻き状のリボンが連なるテキスタイルの工程を追うインスタレーションでは、リボンが水に浸される瞬間を捉えた息を呑むような映像を見ることができる。 今にも動き出しそうなダイナミックな演出の展示《こいのぼり》も見逃せない。日本が培ってきた染めと織りの技術が結集した布から生まれるこいのぼりの姿は圧巻。水戸藩に由来する染色技法「水戸黒」を用いたこいのぼりも登場する。そのほか三角形が螺旋のようにねじれながら連続する同館のタワーをモチーフにした新作も。 「考え抜いて作られた一枚の布地はそれ自体が生き生きとして、使う人にも活気をもたらしてくれるもの。人の心を揺さぶるテキスタイルの多彩な可能性に、観る人一人ひとりが楽しみながら近づく機会になればと思います」 須藤玲子&アドリアン・ガルデール《こいのぼり》2008/2019(部分) 展示風景:「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong、2019-2020 ©CHAT(Centrefor Heritage, Arts and Textile)Hong Kong 《糸乱れ筋》に用いられるニードルパンチ機(部分) 展示風景:「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong、2019-2020 ©CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong 須藤玲子《糸乱れ筋》2006年 撮影:林雅之 須藤玲子《カラープレート》1997年 撮影:林雅之 展示風景:「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong、2019-2020 ©CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)Hong Kong 須藤玲子:NUNOの布づくり 水戸芸術館 現代美術ギャラリー、広場 茨城県水戸市五軒町1‐6‐8 2月17日(土)~5月6日(月)10時~18時(入場は17時30分まで) 月曜休(祝日の場合は翌火曜休) 一般900円ほか TEL:029・227・8111 ※『anan』2024年2月21日号より。取材、文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/532821/ Source: ananweb

  • 2024.02.04

来場者が“目撃者”に!? “月へ行く30の方法”がテーマの恵比寿映像祭開催 | ananweb – マガジンハウス

テクノロジーの進化とともに映像の分野でも新しい挑戦が広がるなか、今年16回目を迎える恵比寿映像祭では“月へ行く30の方法”がテーマに。特別プログラムの上映のほか多彩なイベントが開催される。 アーティストと一緒に“月へ行く方法”を探してみる。 本テーマは2018年に開催された現代美術家・土屋信子さんの個展のタイトルからとったもの。最先端の科学技術や理論以上に、アーティストの思考や実践から生まれる発見や創造が月へ向かうためのヒントになるかもしれないとし、サイエンスとは異なる眼差しで現状を超えていこうというコンセプトだ。 映像作家をはじめ、現代美術のアーティスト、パフォーマーなど、総勢30名以上が国内外から参加。写真や映像の展示・上映に加え、参加型パフォーマンス、ラウンドテーブルでのディスカッションなど来場者一人一人が“目撃者”となるような体験がねらいだという。つまり、鑑賞者にとどまらず、記憶し伝えるメディア(媒体)として機能することが期待されているということ。共に感じ、考えることから、私たち自身にも月面着陸を可能にする発想が生まれるかも!? 会期中には日本を拠点に活動する新進アーティストに映像作品の制作を委託する「コミッション・プロジェクト」のファイナリストの発表も。 そのほかイベントが盛りだくさん。ホームページをチェックして、シンポジウムやトークセッションへぜひ参加してみて。 パフォーマンスやライブなども連日開催。ロサンゼルスを拠点とするパフォーマンス作家・荒川ナッシュ医の参加型パフォーマンスでは、アジアが主体形成する未来を推測するため感情や感性の間にあるものを探求。 荒川ナッシュ医《Mega Please Draw Freely》2021年 テート・モダン、ロンドン Photo:Rikard Osterlund アルゴリズムから生まれるシーンの数々。恵比寿ガーデンプレイス センター広場では大型ビジョンを設置、プログラム言語が作り出す映像で大型ビジョンを埋め尽くす。アルゴリズムが織りなす多彩な表現は圧巻。 高尾俊介《CityScape #1》2021年 植物とコミュニケーションは可能?コンセプチュアル・アートの先駆者、バルデッサリの作品。「植物にアルファベットを教える」行為によってアルファベットの意味が無意味に転じる瞬間からユーモアが浮かぶ。 ジョン・バルデッサリ《植物にアルファベットを教える》1972年/18分40秒 John BALDESSARI, Teaching a Plant the Alphabet, 1972. Courtesy Electronic Arts Intermix (EAI), New York. アジア発、アニメーション意欲作に注目。アジア15地域の映像コンペDigiCon6 ASIAより《月へ向かうヒントが得られる? 11のアニメーション》の上映も。2/6、2/9、2/11 18時~20時、東京都写真美術館1Fホール。 フライング モンキーズ プロダクション《Monsoon Blue》2023年/14分19秒 日常の身ぶりに垣間見るシステムの呪縛。ピオトロフスカは家族構造や人間行動と社会・文化的生活を含むシステムとの関係性にフォーカス。優しく親密な日常のジェスチャーが「解放と抑圧」に変換する様を捉える。 ジョアンナ・ピオトロフスカ《Animal Enrichment》2019年/3分8秒 日本初公開含む特別プログラムを上映。写真はアーティスト、デイヴィッド・ハモンズのドキュメンタリー。2/2、2/8 18時~20時、2/11 11時30分~13時30分、東京都写真美術館1Fホールにて上映。 デイヴィッド・ハモンズの芸術と時代《The Melt Goes On Forever》(監督:ジャッド・タリー、ハロルド・クロックス)2022年/101分 ©Michael Blackwood 恵比寿映像祭2024 月へ行く30の方法 東京都写真美術館(東京都目黒区三田1‐13‐3)、恵比寿ガーデンプレイス センター広場(東京都渋谷区恵比寿4‐20 恵比寿ガーデンプレイス内)、地域連携各所ほか 2月2日(金)~18日(日)10時~20時(18日は~18時。入館は閉館の30分前まで) 月曜休(12日は開館、13日休館。※コミッション・プロジェクト〈3F展示室〉のみ3月24日まで) 無料※一部のプログラム(上映など)は有料 TEL:03・3280・0099(代表) ※『anan』2024年2月7日号より。文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/530226/ Source: ananweb

  • 2024.01.29

日本での展覧会は8年ぶり! 村上隆、最新作のテーマは“もののけ”と“京都” | ananweb – マガジンハウス

21世紀のアートワールドの主要プレイヤーとして世界から注視される村上隆さんが、最新作をひっさげて京都の街に降り立つ。日本での展覧会は8年ぶり。“もののけ”、そして“京都”がテーマである。 現代美術の最前線が描く、京に蠢(うごめ)くもののけたち。 岩佐又兵衛《洛中洛外図屏風(舟木本)》、曾我蕭白(しょうはく)《雲龍図》などの村上版超大作をはじめ、京都祭礼行事や茶華道から着想した作品など、170点余りのうち約160点が新作という超人的な構成だ。引用される作品はいずれも江戸期の京都で花開いた琳派や狩野派、そして近年、高い評価を得る曾我蕭白、伊藤若冲(じゃくちゅう)ら「奇想の系譜」の画家たちによる日本絵画史上の傑作ばかり。「村上版」においては、京の町に漂うもののけの気配がより濃厚に描かれる。 全長約13mの大作、村上版《洛中洛外図》は、祭りや遊里、歌舞伎や浄瑠璃に興じる二千数百人の人々が登場。賑やかな都の様子を俯瞰して描くものの、その頭上には禍々しい髑髏(どくろ)の形を帯びた錦雲がたなびいている。平安京のインスタレーションでは、八角形の部屋の東西南北に町を守護する神獣(青龍、白虎、朱雀、玄武)の大型絵画を配置。中央には京都のへそと呼ばれる六角堂から着想を得た《六角螺旋(らせん)堂》がたたずみ、周囲をもののけがさ迷う。華やかな表層を1枚めくるとハレとケガレが隣り合う、もう一つの都の姿が立ち上がってくるようだ。 「村上版」を含め、新作のテーマを設定したのは、京都市京セラ美術館・事業企画推進室ゼネラルマネージャーを務める高橋信也さん。 「村上隆さんが京都で展覧会をする必然性を、私は確信していました。江戸期の京都の美術に並々ならぬ関心を持っていることは、村上さんの絵を見ればよくわかります」 これらの絵画のうちに村上さんが見出したのは、現代のアニメや漫画にも通底する「スーパーフラット」という原理。一点透視図法が浸透する以前、日本の絵師たちは2次元の紙の上でさまざまな構図を試みた。一瞬を切り取る独特のタイミング、四角い平面の中を緊張感を持って成り立たせる事物の配置の仕方など。そして村上さんは現代のアニメや漫画の1シーンやコマ割りでも、同じ方法で効果をあげていることを発見。2000年の「スーパーフラット宣言」以来、自身の創作においてこの原理を用いる姿勢を貫いている。 「現代美術とは1917年にマルセル・デュシャンが発表した《泉》(男性用便器を用いたレディメイド作品)以降、新しい認識をもたらさないものは認めないという、欧米の作ったルールに則って運営される視覚分野の1ジャンルです。その分野で村上さんは、古典的な技術も含めて日本美術のオリジナルな方法、つまり『スーパーフラット』で挑戦し続けるトップランナーなのです」 西洋美術にとって未知の領域として評価されているという、その絵画はどのように作られるのか。 例えば1枚の絵画に対して、シルクスクリーンを何百版と重ねる工程を経る。そして仕上げに透明な樹脂を塗ると、ぺらっと薄いセル画のように見えるのだという。が、横から見るとキャンバスの上にスクリーンを重ねた分の厚みがあり、完全なペインティングであることがわかる。 「海外の人にどうやって描いたのかと聞かれますが、全く新しい視覚体験に近いものだと思います」 村上さんの著書『想像力なき日本』に現代美術とは“作家が生きていた時点での現代”を時代を乗り越えて伝えるもの、という言葉がある。「現代」を一番パワフルに表現しうる手段として「スーパーフラット」で真っ向勝負する村上さんのよりどころが京都にある。この地と向き合って生まれた最新作の数々、気迫と美しさに触れてみてほしい。 日本初公開。全長18mの赤い龍は圧巻。 「奇想の系譜」の画家、曾我蕭白の《雲龍図》に衝撃を受け、筆で描いた。美術史家の辻惟雄氏と共にボストンで開催した展覧会の目玉となった。日本では初公開。村上隆 Takashi Murakami《雲竜赤変図《辻惟雄先生に「あなた、たまには自分で描いたらどうなの?」と嫌味を言われて腹が立って自分で描いたバージョン》》 Dragon in Clouds – Red Mutation:The version I painted myself in annoyance after Professor Nobuo Tsuji told me,“Why don’t you paint something yourself for once?” 2010年 作家蔵 Collection of the Artist ©2010 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. 神獣が守る村上版「平安京」が会場に出現。 (左)平安京を模したインスタレーションでは、さまざまな姿のもののけがさまよい、人間と共存していたさまを描く。村上隆 Takashi Murakami《想像を超えた宇宙の活性を想起する》Invoking the Vitality of a Universe Beyond Imagination 2018年 作家蔵 Collection of the Artist ©2018 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. (右)本作品には髑髏のモチーフがちりばめられ、生と死が隣り合う平安京の不穏な気配を漂わせている。村上隆 Takashi Murakami《竜頭 Gold》 Dragon Heads -Gold  2015年 作家蔵 Collection of the Artist, Courtesy of Galerie Perrotin ©2015 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. 京都で活躍した絵師たちの代表作を大胆に再解釈。 尾形光琳から着想を得た作品。正面を向く顔のある花は「スーパーフラット」の象徴的モチーフ。村上隆 Takashi Murakami《金色の空の夏のお花畑》(参考画像) Summer Flower Field under the Golden Sky 2023年 ©2023 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. 村上隆 むらかみ・たかし 1962年、東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。英国の雑誌『Art Review』が発表する「アート界で影響力のある100人」に10年連続で選出。今年はブルックリン、香港ほか、世界各地で個展を開催予定。撮影:Museum of Fine Arts, Boston ©2017 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. 「京都市美術館開館90周年記念展 村上隆 もののけ 京都」 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ 京都府京都市左京区岡崎円勝寺124 2月3日(土)~9月1日(日)10時~18時(最終入場は17時30分まで) 月曜休(祝日の場合は開館) 一般2200円ほか TEL:075・771・4334 ※『anan』2024年1月31日号より。取材、文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/528872/ Source: ananweb

  • 2024.01.22

たくさんの妖怪たちに会える! 水木しげる生誕100周年を祝う記念展が横浜に! | ananweb – マガジンハウス

全国各地で話題を呼んだ展覧会がついに横浜へ! 昨年秋に公開された映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』をはじめ、盛り上がりを見せているアニバーサリー企画のひとつ、漫画『ゲゲゲの鬼太郎』の作者・水木しげるさんの生誕100周年を祝う記念展「水木しげる生誕100周年記念 水木しげるの妖怪 百鬼夜行展~お化けたちはこうして生まれた~」が開催される。水木さんが生涯で描いた妖怪は日本のものだけで1000点近く。それらはどのように生み出されたのか? 創作の秘密を初めて解き明かすのが本展の試みだ。 鍵の一つに先達の妖怪文化人たちの存在がある。幼い頃から“妖怪感度”が高く、身の回りに目に見えないものたちの存在を感じていたという生い立ちから展示はスタート。妖怪たちと再び邂逅したのは左腕を失い、生死の淵をさ迷う過酷な従軍経験を経て復員した後。東京・神田の古書店街でのことだったという。 このとき出合った書籍が、江戸時代の浮世絵師・鳥山石燕(とりやま・せきえん)の画集『画図百鬼夜行』や昭和初期の民俗学者・柳田國男の著作『妖怪談義』だ。石燕の妖怪画を目にしたとき、これまで感じていた存在がそのまま描き出されていることに驚き、「やっぱり妖怪はいたんだ!」と感動したという。これをきっかけに現代の妖怪絵師としての才能が花開いていく。 「水木しげるが妖怪とどう向き合ってきたのか、順を追ってわかりやすく展示されています。特に水木が大きな影響を受けた『画図百鬼夜行』『妖怪談義』の展示は必見です」 と水木プロダクションの原口尚子さん。これらの資料からわかるのは、水木さんが昔の人が感じた「お化け」の形を大切にしていたということ。 例えば『画図百鬼夜行』に登場する「垢嘗(あかなめ)」、浮世絵師・歌川国芳が描く『相馬(そうま)の古内裏(ふるだいり)』に登場する巨大な骸骨など、先達の絵師たちが描いた妖怪の姿形を尊重し、ほぼそのまま活かしている。伝承として言葉だけで残る妖怪の場合は、さまざまな資料にあたって、丹念にその姿を浮かび上がらせたという。お馴染みの妖怪、「砂かけ婆」の表情が地方に伝わるお面を見て「これだ!」と決まったという具合に。 一方で「怖いだけではダメ」、と常々言っていたというように、よく見ると目元がかわいらしいなど、愛嬌があるのも水木さんの描く妖怪の魅力。会場では妖怪画の原画が100点以上、展示される。たくさんの妖怪たちに会えることに加え、肉筆に触れることで新しい発見もありそうだ。原口さん曰く、 「リアルな背景を描くことで、『妖怪がそこに存在している』という実存感を出そうとしていました」 Gペンで丹念に描きこまれた陰影、墨汁が醸し出す漆黒の味わいなど、妖怪絵師としての画力もじっくり味わいたいところ。 妖怪画を描くたびに心の中で「この形でいいでしょうか」と、その妖怪にお伺いを立てていたという水木さん。その心は妖怪を描き出すことより、その存在を現代に蘇らせることにあったという方が正確なのかもしれない。会場を後にする頃には、妖怪たちの存在がリアルに感じられるほど、私たちの妖怪感度も高まっているに違いない。 一反木綿 一反(約10m)ほどの白く長い布のようなものが空を飛び、時には人を襲うこともあるという。鹿児島県に伝わる妖怪。©水木プロダクション 海坊主 全国各地の海上に現れる妖怪。姿を見て驚いて叫ぼうものなら、たちまち船はひっくり返されてしまうため、船乗りたちから恐れられた。©水木プロダクション がしゃどくろ 埋葬されなかった者の骸骨や怨念が集まり、巨大な骸骨となってガシャガシャと音を立ててさ迷う。幕末の浮世絵師・歌川国芳の作品を参考に。©水木プロダクション あかなめ 鳥山石燕が描いた『画図百鬼夜行』にも登場する妖怪。長い舌で風呂桶の垢をなめるといわれ、つまり風呂掃除をさぼっていると現れる!?©水木プロダクション みずき・しげる 1922年生まれ。鳥取県境港市で育つ。太平洋戦争時、激戦地だったパプアニューギニアのラバウルに出征。爆撃で左腕を失う。復員後、紙芝居作家を経て漫画家に。妖怪研究家としての顔も持つ。代表作に『ゲゲゲの鬼太郎』『日本妖怪大全』など。2015年没。 水木しげる生誕100周年記念 水木しげるの妖怪 百鬼夜行展~お化けたちはこうして生まれた~ そごう美術館 神奈川県横浜市西区高島2‐18‐1 そごう横浜店6F 1月20日(土)~3月10日(日)10時~20時(入館は閉館の30分前まで) 会期中無休 一般1600円 TEL:045・465・5515 ※『anan』2024年1月24日号より。取材、文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/527631/ Source: ananweb

  • 2023.11.28

麻布台ヒルズギャラリー開館記念! オラファー・エリアソンの展覧会が訴えかけるもの | ananweb – マガジンハウス

今月24日に開業する麻布台ヒルズの一角に、麻布台ヒルズギャラリーがオープンする。その開幕を飾るのが注目のアーティスト、オラファー・エリアソンの展覧会だ。 光と水、幾何学形態が描く、自然が秘める美をこの目で。 「本展のねらいは、敷地内にある森JPタワーのオフィスロビーで公開されるパブリックアート、《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》のコンセプトを探求することにあります。ぜひパブリックアートを観賞してからご来館ください」 と森美術館アソシエイト・キュレーターの德山拓一さん。本作は小さな11面体が連なる作品で、リサジュー曲線と呼ばれる数式が導き出す図形を立体にしたもの。環境問題を扱ったテーマで知られるエリアソンだが、幾何学的な形態の研究を長年続け、その集大成ともいえる。会場ではこの作品が生まれたバックグラウンドとして、新作を含む日本初公開の15点が展示される。 エリアソンの名を一躍有名にしたのは、2003年、ロンドンのテート・モダンで発表した大型のインスタレーション《ウェザー・プロジェクト》だ。 「夕焼けを再現した作品で、それ以降も身の回りにある自然現象や光、水などを使い、見る、聞くといった知覚に訴えかける作品を制作しています。非常にシンプルですが、強いインパクトを与えるのが特徴です」 今回も水を使った大規模なインスタレーションや光の反射を用いた作品が展示されるほか、ドローイングマシンを体験できるコーナーも。 「美しさとは人の感覚に直接訴えかけるもので、美しさが人の意識を変えることができると信じている」とは、德山さんが作家にインタビューした際に印象に残った言葉だとか。 「彼の作品は、光はこんなにきれいなんだ、水でこんなに複雑な表現ができるんだと、その本質的な姿を出現させてくれます。そうした個々の気づきを意識の変革につなげるのが素晴らしい。本展もそういう観点から観てもらえれば嬉しいです」 《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》(部分)2023年 展示風景:麻布台ヒルズ森JPタワーオフィスロビー、2023年 撮影:木奥恵三 小さな11面体の特定の面と面をつなぎ合わせることで、リサジュー曲線を描く立体作品。1つでも面がずれると全く異なる形になってしまうとか。 《蛍の生物圏(マグマの流星)》2023年 撮影:Jens Ziehe 3重に重なるガラスの多面体を通過した光の乱反射が七色に変化する。イマーシブル(没入型)な体験ができる美しい作品。 《瞬間の家》2010年 撮影:Christian Uchtmann 展示会場の半分を占める、水を使った大型インスタレーション。自在に形を変えられる水の特性を生かした表現に注目を。 スタジオ・オラファー・エリアソン キッチンでの昼食の様子(2017年) 撮影:Maria del Pilar Garcia Ayensa 会期中、麻布台ヒルズギャラリーカフェでは、ベルリンにあるスタジオ・オラファー・エリアソン キッチンとのコラボレーションメニューを味わえる。 麻布台ヒルズギャラリー開館記念 オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期 麻布台ヒルズギャラリー 東京都港区虎ノ門5‐8‐1 麻布台ヒルズガーデンプラザA MB 階 11月24日(金)~2024年3月31日(日)10時~19時(火曜~17時、金・土・祝前日~20時。入館は閉館の30分前まで) 1月1日休 一般1800円ほか azabudaihillsgallery@mori.co.jp ※『anan』2023年11月29日号より。取材、文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/517978/ Source: ananweb

  • 2023.10.24

「世界のムナカタ」の全容を紹介! 版画の可能性を拡大した立役者・棟方志功の大回顧展 | ananweb – マガジンハウス

浮世絵以降、最も愛された版画家「世界のムナカタ」の大回顧展。「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」をご紹介します。 ドキュメンタリー映像に残る、板に額をすりつけるように一心不乱に彫る姿は一度見たら忘れられない。現代を代表する版画家・棟方志功の大回顧展が始まる。故郷・青森、疎開先の富山、芸術活動の中心地・東京と、各地域との関わりを軸に、1956年のヴェネチア・ビエンナーレの大賞受賞作をはじめ、ゴッホに憧れた若き日の油彩画、生涯取り組んだ「倭画(やまとが)」(自作肉筆画の呼称)、名デザイナーの一面が覗く装丁まで「世界のムナカタ」の全容を紹介。 子どもの頃から強度の近視で後に左目を失明。わずかに見える右目を頼りに創作を続けた棟方は、「板の声を聞き、板の生命を彫り起こす」という信念から自作の版画を「板画(はんが)」と称した。版木に残る鋸目(のこぎりめ)を生かした墨色の面、丸刀で彫った白い線というスタイルを確立。公共建築の壁画を手がけたことで浮世絵以来、本のように眺めて楽しむものだった版画の可能性を拡大した立役者とも。ドラマや戯曲の主人公として繰り返し演じられ、愛用の眼鏡や彫刻刀が「ムナカタ・モデル」として販売されるなど本人への注目度も高かったよう。幸福な作家人生の秘密はどこに? 本物の熱量から感じて。 棟方志功 《飛神の柵》(とびがみのさく) 1968年 棟方志功記念館 棟方志功 《ホイットマン詩集抜粋の柵》「Perfections」》 1959年(1961年摺) 棟方志功記念館 棟方志功 《華厳松》 1944年 躅飛山光徳寺 むなかた・しこう 1903年、青森県に生まれる。1928年、油画《雑園》で帝展初入選。1932年以降、版画に道を定め、文士や民藝運動のメンバーと交流を深める。1956年、第28回ヴェネチア・ビエンナーレ国際版画大賞受賞。1970年、文化勲章受章。1975年没。撮影:原田忠茂 生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ 東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー 東京都千代田区北の丸公園3‐1 開催中~12月3日(日)10時~17時(金・土曜は~20時。入館は閉館の30分前まで) 月曜休 一般1800円ほか TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル) ※『anan』2023年10月25日号より。文・松本あかね (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/511368/ Source: ananweb