石山アンジュ

  • 2023.10.12

シェアライフの第一人者・石山アンジュ「“つながり”はお金には代えられない、重要な資産」 | ananweb – マガジンハウス

個人と個人がつながり、あらゆるものを“シェア”して生きていくという価値観が広がっています。モノや得意なことをシェアすることにより、これまでは無理と思われていたこともいろいろ叶いそう。シェアライフの第一人者、石山アンジュさんとジャーナリストの堀潤さんに「シェアすると、どんなことが叶う?」をテーマにお話しいただきました。 自分の“好き”を仕事に変えられる。 石山アンジュ(以下、石山):「働いて対価を得る」というと、自分の名刺に書いてある肩書の範疇でしかできないと、皆さん思っていらっしゃるのではないでしょうか。でも、これまで需要がそれほど多くなく、なかなか仕事につながらなかったニッチな領域も、シェアすることで対価を得ることができるんですね。たとえばマンホール好きな人が案内する“マンホール巡りのツアー”を個人が企画するとか。 堀潤(以下、堀):いいですねえ! 石山:教えたい人と教えてほしい人をマッチングするシェアサービスを使って、包丁研ぎが得意な人がオンラインで教室を始めたらすごく人気になって、やがて書籍化につながっていくとか。可能性が広がっていきます。 堀:「えっ? これがお金になるんですか?」と、これまで無価値に思われていたようなことも、別の誰かにとっては必要な知恵や経験だったりします。 石山:働き方の概念も変わりますよね。どこかに帰属していなくても、肩書や学歴、専門の資格を持っていなくても、「犬が大好きで、犬の散歩ならできます」「留学経験を活かして、アラビア語を教えられます」など、個人と個人の間で、小さな需要と供給を結びつけることができます。身近なことでシェアできることはいろいろあると思います。 堀:シェアリングサービスという意識はないかもしれませんが、メルカリで自分の持ち物を出品するのも立派なシェアですよね。 石山:そうですね。他にも、自宅の空いている部屋を民泊で貸し出して、いくらかお金を得ることも可能です。これまでの“働く”という感覚とは少し違うかもしれませんが、シェアリングサービスを使って、少しずついろいろなところから収入を得るということができるようになりました。 いくつもの居場所を持ち、“安心”を手に入れられる。 堀:収入を得る方法をいくつも持つというのは、安心にもつながりますよね。従来のように、一つの会社に帰属して、その会社のお給料しか収入口がないとなると、もし、そこで人間関係や働き方に問題があっても、辞めたら無収入になると思ったら、離れるのは難しくなります。でも、たとえ一つ一つは少額でも収入口を複数持っていれば、「一つがダメでも、他がある」と気が楽になります。 石山:“安心”というキーワードはシェアライフにおいてとても重要ですね。安心の概念も変わってきたと思います。昔は家を持ち、終身雇用を前提とした大企業に帰属することが安心・安定のステイタスになっていました。でも、今は自然災害や感染症など、想像外のことが起きます。私は今、東京と大分の2拠点をベースに、他にも家のシェアリングサービスを使って、いろいろな土地で暮らしています。何が起きるかわからない時代では、会社も仕事も住まいも人間関係も、1か所に依存するよりも、小さなものに複数帰属するほうが安心なのではないかと思います。 堀:いろんな居場所に身を置いていたら、場所ごとに自分の役割や活躍の仕方も変わるでしょうし、セーフティネットにもなります。また、働く時間や場所も自由になりますね。 石山:多拠点生活も、昔は別荘を持つような限られたお金持ちが2軒分の家賃を払ってやっていた印象があると思います。でも今は家のシェアリングサービスも多々ありますから、それを利用して、誰でもさまざまな場所で働き暮らすことができるようになりました。 “つながり”という、一生ものの資産を得る。 石山:シェアリングエコノミーは、個人対個人のつながりが無数にできるということですから、“つながり資産”にもなると思います。人とつながることは大切だとわかってはいても、コミュニケーション能力の高い人にしか人脈は作れないと思われていた節があったのではないでしょうか。でも、消費の形を少し変えるだけで叶えられます。 堀:確かにそうですね。 石山:たとえば、旅行先でホテルのスタッフとお友達になることはなかなかないかもしれないけれど、民泊サービスを使って、誰かの自宅に泊まり、一晩一緒にお酒を飲んでSNSでつながったら、一生のつながりを得られるかもしれません。私もそうして、いろいろな国でAirbnbを利用して泊まり、世界中に友達ができました。日本で大きな地震が起きると「うちの国に逃げてきたら?」と言ってもらったこともありました。 堀:いいですね! 石山:お金の価値はものすごく変動します。グローバルな経済の中では、一生懸命貯めた1000万円の価値も、円安になれば不可抗力的にその価値は目減りしてしまいます。でもこれは、個人の努力ではどうにもならないですよね。その点、何かあれば泊まらせてくれる家がある、相談に乗ってくれるお医者さんがいるなど、“つながり”はお金には代えられない、とても重要な資産なのではないかなと思います。 信頼される喜びを得て、ウェルビーイングに。 堀:シェアライフの上では、“信用”や“信頼”も大きな要素になりますね。 石山:はい。近所のお醤油の貸し借りは、顔を知る人同士の中で、信頼が担保されていました。企業が作るお醤油は、企業や行政の審査基準を満たしているかどうかで、安心の判断ができたと思います。シェアリングエコノミーの世界では第3のフェーズに入っていて、お醤油にラベルが貼っていなくても、100人が味見をして、「美味しかった」「安全だった」など、100人分の集合知の記録が信頼の担保になります。自分のスキルや経験などをシェアし、それが多くの人に認められれば、キャリアのステップアップにもつながっていくのかなと思いますね。 堀:いろんな価値観の人から寄せられた感想なので、多様性も生まれます。これまでの社会では、古い価値観がそのまま続くことがありましたけど、シェアライフでは、今を生きる人たちが価値を常にアップデートできるということもすごくいいですね。新陳代謝がおこなわれやすい。 石山:先人の作った価値観に縛られなくていいというのはいいですよね! 堀:メディアのあり方も変わると思います。これまでは権威を検証するのがジャーナリズムでしたが、シェアリングエコノミーによって生まれた価値が、正しく評価されているか、誰かの思惑によって故意に作られてはいないか、みんなの築いてきた信頼が毀損されないよう検証するようになってくるでしょうね。 石山:シェアリングエコノミー協会で実態調査をした時に、「自分が得意な何かをシェアした際、『ありがとう』と相手に感謝をされることがものすごく生き甲斐になった」「生活の充実度の向上につながった」というデータが出ました。シェアライフは、ウェルビーイング、豊かさを感じるきっかけにもなると思います。 堀:孤独や孤立対策にもなりますね。報道の現場で言うと、自分たちの身の回りで起きていることに世の中から関心を向けられなくなると、孤立感や孤独感を深めてしまいます。 石山:わかる気がします。 堀:たとえば災害の現場で、しばらく止まっていた水道が回復したと発表されても、実際には蛇口をひねってもチョロチョロとしか水が出なかった。これはマスメディアではなかなか報道されないけれど、当事者にとっては大事なニュースです。また、それを伝えることで、「回復したといっても、すぐにいつものように使えるわけではないのだな」ということを知って、次の被災者が対策を練ることができます。「こんな些細なことにも目を向けてくれるのですか?」と言われますが、そういう情報こそ伝えるべきこと。今までは、情報のシェアでそういうマッチングは、あまりうまくいっていませんでした。 石山:災害、有事の際にシェアサービスはすごく有効だと思います。行政や支援団体がモノを届けたり支援をしていますが、細かなところにまで手が届きません。シェアリングエコノミーでは、「うちは2人までだったら泊まれます」「A地点からB地点までは私の車に乗せられます」といった、個人間でできる支援が可能になりますよね。 堀:それ、めちゃくちゃいいですね! 誰もが何かの分野の主役になれる。 堀:シェアをすることで、自分が主役になれる“価値の創造の現場”が作れるようになると思いますね。誰もがクリエイターになれる。 石山:そうですね。価値の分散化、“いろんな正解がある”というふうになりますよね。たとえばここ数年、タピオカブームがあり、多くの店が作られて、これまでだったら1番人気の店が街を制覇していたと思います。でも、「私はここのタピオカが好き」と、それぞれが自分の価値観をシェアすることによって、価値の分散化が起きて、個人商店がたくさん並び、どの店にも少しずつお客さんが来るような世界が作っていけると思いました。 堀:選択肢が増えますね。誰かが何かに価値を見出し、その価値が共有されて広がっていく。フェアトレードの商品が市場に出回るようになったのも、環境に優しい、人権を傷つけないというコンセプトが広まったからだと思います。自分の好きなものをシェアすることで、“みんなが好き”のブームの仕掛け人になれる可能性も大いにあります。世の中に価値のないものはない、というのを実感することができる時代。それもシェアリングエコノミー、シェアライフの素敵なところだと思います。 石山アンジュさん 1989年、神奈川県生まれ。デジタル庁シェアリングエコノミー伝道師。一般社団法人シェアリングエコノミー協会代表理事。著書に『シェアライフ 新しい社会の新しい生き方』『多拠点ライフ』。TVのレギュラー番組も多数。 堀 潤さん 1977年、兵庫県生まれ。ジャーナリスト。NPO法人「8bitNews」代表理事、「GARDEN」代表。『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX 月~金曜7:00~)、『JAM THE PLANET』(J-WAVE 水・木曜19:00~)などに出演中。 ※『anan』2023年10月18日号より。写真・中島慶子 ヘア&メイク・村田真弓 イラスト・加納徳博 取材、文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/510108/ Source: ananweb

  • 2023.10.12

堀潤「100人いれば100通りの価値がある」 石山アンジュと語る“シェアライフ”の可能性 | ananweb – マガジンハウス

石山アンジュさんと堀潤さんが考える、“シェアライフが導く未来”。ここでは、シェアリングエコノミーを取り入れた暮らし、“シェアライフ”の概念について解説していただきました。 シェアライフとは? 石山アンジュ(以下、石山):「シェアリングエコノミー(共有型経済)」は、実は世界でも確固たる定義はないんですね。私の解釈ではわかりやすく言うと“分かち合い”。昔、ご近所さんでお醤油の貸し借りをしていたのと同じことを、スマートフォン1台で、インターネットを介して行う。今はお醤油を必要としている人、持っている人、作りたい人が可視化できる時代です。瞬時に100人と分かち合うことも、海外の人と分かち合うことも可能になりました。 堀潤(以下、堀):需要と供給がマッチングされるだけでなく、そのお醤油が他の家を回ることで、そこにコミュニケーションが生まれます。消費したり流通するだけでなく、価値が膨らんでいくというのもシェアライフの面白さですよね。 石山:そうですね。モノに限らず、時間や空間、移動手段、得意なことなど、さまざまなものをシェアできるようになりました。これまでは企業がモノやサービス、情報を生産して、消費者が買うという一方向でした。それが、個人と個人がつながり、あらゆるものを共有して双方向にやりとりできる。それによって、個人がさまざまな形で社会に参画できたり、得意なことを無数の世界の人と共有できるようになるというのは大きな違いですね。 堀:すごく共感します。僕はNHKというマスメディアにいましたが、10年前に辞めて、「8bitNews」という市民参加型ニュースサイトを立ち上げました。これは誰もが発信者になれるニュースのシェアです。社会課題にまつわる根深い問題のひとつが、“政治や企業が解決するもの”と当事者意識を持てない人が多いことだと思います。より多くの人が当事者意識を持って、積極的に関わっていくためには、消費者や受信者ではなく、発信者・生産者になることが一番の近道なんじゃないかなと思ったんです。 石山:本当にそうですね。シェアリングエコノミーは、企業や自治体、社会に合わせて個人が動くのではなく、“個人が主体”というのが基本ベースにありますね。 堀:これまではメディアや企業が価値ありと判断したものだけが世の中に流通していました。でも、素人と言われてきた人も、何かしらの専門家なんですよね。100人いれば100通りの価値がある。私が好きなもの、私がいいと思うもの、それらをシェアし合うのはすごく楽しい世界だと思います。 石山:シェアライフは、働き方や生き方も自由に変えていくウェルビーイングな生き方、幸福感を得られる可能性を秘めています。 石山アンジュさん 1989年、神奈川県生まれ。デジタル庁シェアリングエコノミー伝道師。一般社団法人シェアリングエコノミー協会代表理事。著書に『シェアライフ 新しい社会の新しい生き方』『多拠点ライフ』。TVのレギュラー番組も多数。 堀 潤さん 1977年、兵庫県生まれ。ジャーナリスト。NPO法人「8bitNews」代表理事、「GARDEN」代表。『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX 月~金曜7:00~)、『JAM THE PLANET』(J-WAVE 水・木曜19:00~)などに出演中。 ※『anan』2023年10月18日号より。写真・中島慶子 ヘア&メイク・村田真弓 取材、文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/510088/ Source: ananweb