社会のじかん

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  • 2024.01.03

深刻な円安、国民負担率の上昇…「所得税定額減税」は一時的な痛みを取り除くだけに? | ananweb – マガジンハウス

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「所得税定額減税」です。 一時的な処置で将来改善するのか。長期的な政策を! 岸田政権は、2024年度の税制改正で、所得税3万円、個人住民税1万円の定額減税を行うことにしました。6月よりスタートすることになります。 岸田首相は、総裁選の頃は「分配なくして成長なし」と謳っていました。様々な優遇策により国民の暮らしが良くなるという期待感がありました。ところが実際には社会保障費の負担が増え、ガソリンや小麦などの価格高騰もあり物価高が進んでいます。それでも給料は上がらず、生活は苦しいまま。岸田首相は「税には手をつけない」と話していましたが、方々から批判を受けて急に減税に転換しました。ですが、その額は限定的で、期間も1年ですから、一時的な痛みを取り除くことにしかなりません。’24年の総裁選を乗り切るために、自民党内の様々な声を聞く姿勢を示そうと、場当たり的に決めた策のようにも見えてしまいます。経済政策に整合性がとれていないのは、国民としては不信感が募ります。 ただ、ロシアとウクライナの戦争が解決を見ないうちにガザでも戦争が始まり、予想以上に深刻な円安が続いており、デフレからなかなか脱却できない。誰がトップでも難しい政策運営を強いられている状況ではあります。 デフレを抜け出すには、賃金を上げることが求められます。ただ、経営者の側からいえば、賃金を上げればその分、社会保障費の負担も増えてしまう。本当に賃上げしたいなら、社会保障費の方も、優遇なり減額なりしていかないと企業も簡単には上げられません。 個人や企業が稼いだ国民全体の所得に対して、税金と社会保障費の負担の割合を示す「国民負担率」というのがあります。’23年度は46.8%になる見通しです。統計を取り始めた1970年度は24.3%でしたから、実質的にだいぶ負担が増えているのですね。 65歳以上の人の割合が国の人口の21%を超える「超高齢社会」に、日本は2007年から突入しています。2060年には人口の約40%が65歳以上になると予測されます。減税をしても成長には繋がりません。この先どのようなビジョンを描いているのか。岸田政権には原点に立ち返り、未来を見通した政策をとってほしいと思います。 ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。 ※『anan』2024年1月3日‐10日合併号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/524870/ Source: ananweb

  • 2024.01.01

硬直しがちな地域政治が生まれ変わる予感! 2024年は地方創生が花開く!? | ananweb – マガジンハウス

ananで連載中の堀潤&五月女ケイ子「社会のじかん」の特別編。少子高齢化が進む日本。人手不足や地方の過疎化など日本社会が抱える問題にも次第に変化の兆しが…。2024年は、変わりゆく未来の起点となるような年に!? 政治と経済はローカルに注目。「お金と人材が地方に集まる!」 政治に関しては、しばらく混乱が続くかもしれません。2024年は自民党総裁選がありますが、岸田さんが続投する可能性は薄いでしょう。 中央政府があまり盤石ではないなか、実は最近、地方の政治が元気で新しい風が吹いています。例えば広島県安芸高田(あきたかた)市長の石丸伸二さんは、元銀行員。37歳で市長になり、古い体質の議会と積極的に議論し、市政の改革を行おうとしています。会見の場で、老舗メディアの中国新聞が旧体制の議会に近いと記者に抗議したり、SNSを駆使し、透明性のある市議会を目指して人気を博しています。 ’23年の地方選挙では定員割れする自治体が多くありました。今後もそういう地域は増えていくと思います。一見ネガティブな現象ですが、例えば長野県岡谷市議会では、4月の選挙で定員割れになり、元演劇誌編集長だった候補者が無投票で市議会議員になりました。異色の経歴の議員が加わることにより、岡谷市では、学校教育の現場で演劇のワークショップが行われたり、独自の人脈を活かし、芸術関連など多様な人たちが集まってきています。これまでの日本の選挙では、地域の産業や古い地盤に支えられた人しかなかなか当選できず、優秀な人こそ地方政治に関われませんでした。これからはスタープレイヤーたちが育つ可能性が高くなり、硬直しがちな地域政治が生まれ変わりやすくなるかもしれません。 さらに、今、地方移住者が増えています。内閣官房の’20年1月の調査では、東京圏在住の20~59歳の49.8%が、「地方暮らしに関心を持っている」という結果が出ました。特に若年層の関心が高いことがわかっています。コロナ禍を経て、リモートワークの広がった今では、さらに地方に移住することが現実的な選択になっていると思います。 政府も地方創生に力を入れているので、地域のスタートアップが盛り上がっています。地域のベンチャーキャピタル(VC)も勢いを増しています。そのうちの一つが「瀬戸内VC」です。地域には起業したい人が大勢いるのに、投資する人がいない。地域に投資するVCを作ろうと、岡山県出身の酒店の3代目店主と弁護士の二人が立ち上げました。そのような動きに地方銀行が敏感に反応しました。スタートアップに投資するための専門部門を作るなど、地域でのお金の回り方に変化が起き始めています。地域に根付いた事業者の中には、家業を継いだ2代目3代目も多くいます。最近は「アトツギベンチャー」という、後継者でありながら新規事業を始める動きも盛んになっています。中小企業庁が主催する「アトツギ甲子園」というピッチイベントでは、全国のアトツギたちが参加し、新規事業のアイデアを競い合っています。 ’24年は地域VCが各地で立ち上がり、地域生まれの企業がグローバルに飛び立っていく。本当の意味での体温のある地方創生が花開くでしょう。瀬戸内VCが投資している、あるVRゲーム企業は、アメリカのVR市場向けのサービスをリリース予定です。地域発信で、最初からグローバルに展開するという広がりが、自然に根付いていきます。これからはもはや地方が世界の中心になっていくのではないでしょうか。 五月女ケイ子解読員から一言昔、地方の若者が抱いていた東京への憧れや、東京に行かないと何者にもなれない焦燥感は、もうなくなっているんですね。むしろ、東京を飛び越え、地方から一直線に世界へ向かうことができるのか。すごいなあ(元田舎の若者)。 KEYWORD:地方移住者の増加 東京圏在住者の約半数が、地方暮らしに関心あり。グラフの「意向あり」層とは、地方暮らしに「関心があるが何も行動していない関心層」36.1%、「情報収集をしている検討層」11.5%、「条件が整えば移住を考えている計画層」2.2%の合計。平均年齢の分布では「計画層」が最も若く(35.7歳)、若者ほど地方暮らしへの関心が高い。出典/内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局 KEYWORD:アトツギベンチャー アトツギが、新規事業に挑戦するベンチャーに。商売や事業などの家業を継ぐ人(アトツギ)が、世代交代を機に、新規事業や業態転換、新市場への参入などに挑戦する(ベンチャー)こと。起業家と違うのは、親から受け継いだ会社や経営資源を活用してスタートするところ。社会に新たな価値を生み出す存在として注目されている。 ほり・じゅん ジャーナリスト。『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX)などに出演中。スーダンを取材した写真展「#BlueForSudan」が2024年1月14日まで宮城県・多賀城市立図書館(9:00~21:30 TEL:022・368・6226)にて開催中。 そおとめ・けいこ イラストレーター。雑誌や書籍、広告で活躍。オンラインストア「五月女百貨店」では、楽しいオリジナルグッズを多数販売。カレンダーやポチ袋も好評発売中。使える面白LINEスタンプも各種展開している。 ※『anan』2024年1月3日‐10日合併号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 取材、文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/525026/ Source: ananweb

  • 2023.11.29

「年収の壁」対策はあくまで“つなぎ” 成長しない日本経済に負担感は増すばかり? | ananweb – マガジンハウス

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「年収の壁」です。 日本経済の成長が負担感を減らす一番の近道です。 厚生年金保険や共済組合等に加入している会社員や公務員に扶養されている配偶者で、一定の収入のない人は、第3号被保険者といって、厚生年金保険や健康保険などの社会保険料の負担が発生しません。そういう被扶養者がパートやアルバイトで一定額を超えた収入を得ると適用外となり、社会保険料が引かれ逆に手取りが減ってしまうため、働く時間を抑えようとします。それが「年収の壁」です。従業員101人以上の企業で週20時間以上勤務する場合の「106万円の壁」と、「130万円の壁」があります。 現在、政府は社会保険の適用範囲を段階的に広げており、昨年10月から、従業員数が100人超の企業は、パートでも社会保険の加入が義務付けられ、新たに45万人が対象になりました。 しかし、今は空前の人手不足。日本商工会議所のアンケートによると、中小企業で「人手が足りない」と答えた企業は過去最悪の68%に。さらに、今年の10月から全国の最低賃金が約1000円に引き上げられたため、企業は人手を減らさないと回らなくなり、年収の壁を考える人は、働く時間をもっと抑えなければいけなくなります。 この状況を受け、岸田政権では、壁の範囲を超えて働いても不利益にならないような策を打ち出しました。ただそれは、賃上げなど、手取り収入を減らさない取り組みを実施している企業に対して助成金を出す形なので、誰もが優遇されるわけではありません。あくまでつなぎの政策であり、2025年の年金法改正に向けて、抜本的な見直しを進めようとしています。 国民年金第3号被保険者制度ができたのは1985年。専業主婦の世帯が多く、「夫が働き、妻子を養う」という家族像をモデルに設定していましたが、家長の収入が減り、共働きでないと経済的に苦しい家庭が増えている現代にはそぐわないところがあります。扶養控除をなくし、全ての働き手が負担するのが分かりやすいですが、男女の賃金格差を考えたら、女性には収入が少ない上に負担増になります。最も問題なのは、ここ30年は日本経済が成長しておらず、国民の社会保障費の負担感が増していることなんですね。 ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。 ※『anan』2023年11月29日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/517839/ Source: ananweb

  • 2023.11.03

副大臣・政務官に“女性ゼロ”の現状…世界から後れをとる、日本のジェンダー格差 | ananweb – マガジンハウス

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「岸田内閣 副大臣・政務官女性ゼロ」です。 地域の女性議員を増やすことから。意識の変革を望む。 9月13日に第2次岸田第2次改造内閣が発足されました。副大臣26名、政務官28名全てが男性議員。副大臣・政務官制度が導入された2001年から、女性がゼロだったのは初めてのことです。今回の内閣改造では5人の女性閣僚が生まれ、過去最多に。しかし、首相含め20人の大臣のうちの5人ですから、日本のジェンダーギャップは、ますます世界から後れをとるということが明らかになりました。 政治は、多様な背景を持つ当事者たちが関わることが大切だと思います。暮らし方や働き方、人生経験など、バックグラウンドが多様であれば、さまざまな政策を実現可能にします。こども家庭庁を作っていながら、子ども中心の政策がなかなか見えてこないのは、政治の中枢が多様ではなく、当事者たちの声が届いていないせいでしょう。 今回の人事は自民党が抱える構造的な問題もありますが、実は自民党内部からも「女性候補者が足りない」という声はよく聞かれます。党内の女性局と青年局の討論会では、地域の女性候補者の掘り起こし支援に力を入れてほしいという要望が上がっていました。 地域が変わらないと中央も変わっていきません。地方議会は男性中心で、古くからの地元の名士に支えられ、地盤のある候補者に代々引き継がれていくケースが少なくありません。令和3年12月末現在、地方議会の女性の割合は特別区議会で30.7%、政令指定都市の市議会が20.7%、市議会全体では16.8%、都道府県議会で11.8%、町村議会で11.7%でした。 かつて、熊本県議会で、乳児を連れて議会に入ろうとしたら止められバッシングを受けた女性議員がいました。一方、オーストラリア連邦議会では、議場で授乳することも認められています。声を上げて自分たちの権利を勝ち取り、社会を変えていくパワーが諸外国にはありますが、日本はどうしても「仕方がない」と呑み込んでしまうことが多い。ジェンダーギャップの問題は日本経済の衰退や政治の硬直化、政策の非多様性などを生んでいます。今年の統一地方選挙の女性候補者は前回よりも500人増えました。この変化の兆しを伸ばしていけたらと思います。 ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。 ※『anan』2023年11月8日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/514088/ Source: ananweb

  • 2023.10.29

脱ドルの動きが実現化する可能性も? 新たに6か国が参加する「BRICS」について | ananweb – マガジンハウス

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「BRICS」です。 新たに6か国が参加。共通通貨が生まれる可能性も。 「BRICS」とは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5か国で作られたアライアンスです。8月に開かれたBRICSの首脳会議で、新たにアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦が2024年の1月から加わることが発表されました。アラブの主要国が入ることにより、世界の石油取引高の約90%を占めるという大きなインパクトを生むことになります。 BRICSではドル決済に代わり、世界の基軸となる新しい共通通貨を生み出そうという動きが出ていました。中国の人民元を広げようとする動きもあります。もし、脱ドルの動きが実現化すれば、ドルの価値は下がるでしょうし、日本への影響も計り知れません。 もしも、ドル決済から離れることができ、経済的にも軍事的にも援助してもらえるとなれば、今後BRICSに参画を希望する国がアフリカや中東からますます出てくるのは明白です。その動きの象徴的な国がエジプトでした。 エジプトポンドは、対ドルで見ると、この1年で半分くらいの価値に急落してしまいました。これにはロシアによるウクライナ侵攻が大きく影響しています。エジプトは小麦の多くをロシアから輸入していました。戦争によりロシアからの輸入に制限がかけられ、小麦の価格が高騰。自国の産業の育成がうまくいっていなかったこともあり、経済危機を迎えていました。ですから、BRICSのようなアライアンスに属することは必須だったのです。 エジプトは日本にとっても重要な国です。日本に石油を運ぶには、エジプトのスエズ運河を通らねばならないので、ある種生命線のような場所です。岸田首相は4月にエジプトの大統領と首脳会談を行い、これまで以上に強いパートナーシップを築くことを話し合いました。 欧米諸国が指導力を発揮していた頃から、世界の勢力地図は大きく変わってきています。中国やロシアなど権威主義的な国がアフリカや中東諸国を引き込み、アライアンスを拡大しつつあります。この綱引きの中、日本がどのようなイニシアティブを発揮するのかが問われています。 ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。 ※『anan』2023年11月1日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/512504/ Source: ananweb

  • 2023.10.19

日本の研究現場は弱ってきている!? 堀潤「国がきちんと科学分野に投資できないのは問題」 | ananweb – マガジンハウス

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「国立科学博物館クラウドファンディング」です。 クラファンは一時的な対処法。研究にもっと力を。 国立科学博物館は、運営資金の不足を解消するために8月にクラウドファンディングを立ち上げ、目標額の1億円を1日で達成し、2週間余りで7億円超の資金を集めました。“国立”と名前がついていますが、独立行政法人で、独自に運営を任されています。標本や資料は500万点に及び、展示されているのは約2万5000点。多くはつくば市にある収蔵庫に置かれています。化石や動物の骨、剥製、植物など、古く貴重な標本を保存・管理するには莫大なお金がかかり、コロナ禍や光熱費の高騰などにより資金に窮していました。大きな役割は、標本資料の収集と保管、展示・学習支援、調査研究などです。資金不足により、新しい事象が発見されても現場に行けないというような状況にも陥っていました。 現在、日本の研究の現場は大変弱っており、文部科学省科学技術・学術政策研究所が調べた「科学技術指標2023」によると、他の論文に引用される回数をカウントする注目論文の数が、日本はイランに抜かれて13位になりました。かつては4位でしたが、20年の間に次第に順位を下げていったのです。イランは国際的に制裁を課せられているので、自前のインフラ、サービスを作る必要があり、科学分野に積極的に財政を投じてきました。それにより、研究者のレベルが底上げされ、日本を追い越していきました。 クラウドファンディングは、資金集めの持続可能な方法ではありません。国がきちんと科学分野に投資できないのは問題だと思います。また、科学博物館側も所蔵品をツアー形式で見せたり、企業研修に使うなど、稼ぐ方法は見つけられると思います。研究者が経営につくのではなく、マーケティングやPRのプロを経営陣に呼ぶなど、改革の必要があるのではないでしょうか。 すぐに成果に結びつく研究が求められがちですが、草の根的な基礎研究が国の将来を支えます。クラウドファンディングによって、科学博物館に関心を寄せる人が増えたことはすごく良かったと思います。国立科学博物館のクラファンは11月5日まで行っています。研究がその国の国力につながるという意識が広がることを願います。 ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。 ※『anan』2023年10月25日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/511449/ Source: ananweb

  • 2023.10.14

堀潤「認知戦の最前線に立たされている」 バズったニュースに注意が必要と語るワケ | ananweb – マガジンハウス

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「認知戦」です。 私たちも知らずに戦争の最前線に立たされています。 認知戦とは、世論を操作したり、偽の情報を拡散して、人の認知領域に働きかける情報戦のこと。陸、海、空が第1~3の戦場、第4の戦場は宇宙、第5の戦場はサイバー空間。認知戦はその次の第6の戦場と呼ばれています。 元をたどれば、プロパガンダ戦は昔からあります。第2次世界大戦時にはナチス・ドイツがラジオ局のトップに配下の人間を送り込み、ヒトラーは正しいという世論を形成しました。テレビ、ラジオ、新聞しかない時代はそれだけの労力を要しましたが、今は、インターネットやAIを使い、精巧なフェイクニュースを簡単に作れるようになっています。認知戦の恐ろしいところは、誰が主体となって仕掛けているのかが不明なまま、その国の政治指導者の決断を左右させていく大きなパワーを持っているということです。 中国人民解放軍は、積極的に認知戦に関与しているといわれています。たとえば、台湾で不安を煽るような動画が拡散されました。「強盗に襲われました。みんなも気をつけて」と病院のベッドから自撮りした動画が拡散されます。一見認知戦と何の関係が? と思うかもしれません。しかし、こういう動画が大量に流されることにより、「台湾は治安が悪い」「今の政府に任せていたら、未来はないのではないか」という考えを刷り込んでいきます。これがフェイクニュースだと見破ったのは、台湾のCofactsというファクトチェックグループでした。選挙の直前など、ある一時期に膨大な量の動画が流されていたことで判明しました。 カナダのトルドー首相は、2019年と2021年の総選挙に、中国、イラン、ロシアが介入した恐れがあると捜査を開始しました。アメリカでトランプ大統領が誕生した舞台裏ではロシアの関与が疑われています。 私たちは認知戦の最前線に立たされているということを自覚してください。バズったニュースを目にしたときには、「誰発信? 何目的? 本当かな?」といったん立ち止まりましょう。知らず知らずに誰かに仕掛けられて、自分たちの政府を自分たちで倒すことになりかねない危険を孕んでいることを、どうか忘れないでください。 ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。 ※『anan』2023年10月18日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/510153/ Source: ananweb

  • 2023.09.08

AI登場で米俳優労組がストライキ 堀潤「低い対価で仕事を受けざるをえない可能性も」 | ananweb – マガジンハウス

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「米俳優労組ストライキ」です。 AI登場による人間の権利の問題。他人事ではない。 アメリカの俳優の労働組合によるストライキが7月14日に始まりました。脚本家組合のストライキも5月から行われており、AP通信によると俳優労組の組合員のうち約6万5000人が参加。脚本家組合は約1万1500人。この2つの組合が同時にストライキを打つのは63年ぶりのことです。これにより俳優は撮影やプロモーション活動には参加できず、ハリウッドでは多くの撮影現場がストップしています。 動画配信サービスの急速な拡大を受け、組合は、配信作品に対する報酬の引き上げを求めています。また、今回の交渉の大きなポイントはAIなんですね。AIの進歩により、さまざまなものが手軽に作れるようになってしまいました。アイデアを打ち込めば生成AIによって脚本ができてしまったり、俳優の写真データを複製することでいくらでも動画が作れるようになってしまいました。その動画の著作権は誰に帰属するのか。AIで作れるようになったことで、これまでなら受け入れられなかったような低い対価で仕事を受けざるをえない可能性も出てきます。 ルール作りがまだできていないなか、技術だけがものすごい速さで発達してしまう危機感。人間が作るものへの権利をちゃんと保証してほしいと訴えているのです。生成AIに関する規制作りを求めて、組合は映画会社や配信会社と交渉を続けてきましたが決裂し、ストライキに入りました。 本来は日本でもそうした議論が必要なのですが、まだ起きていません。また、これは映像業界だけの問題ではありません。コンサルティング会社マッキンゼーの生成AIに関するレポートによると、2030~2060年の間に半数以上の仕事が自動化されるそうです。まず、マーケティングやプログラミング、コンサルタント業やPR業などが変わるだろうといわれています。 エンターテインメントはアメリカを支えてきた基幹産業の一つであり、アメリカの文化そのもの。それを破壊しないでくれ、という訴えはとてもよくわかります。人間の手で生み出すものにどういう報酬の仕組みを作るのか。皆で知恵を出し合っていかないといけないのだと思います。 ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。 ※『anan』2023年9月13日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/504375/ Source: ananweb

  • 2023.07.28

“異次元の少子化対策”に堀潤「ゼロから子供を産み育てようという人たちへの支援も」 | ananweb – マガジンハウス

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「異次元の少子化対策」です。 子育て支援だけでなく、これから産む人の支援も! 岸田政権は「異次元の少子化対策」を掲げ、6月に「こども未来戦略方針」を発表。2030年までを少子化傾向にストップかけるためのラストチャンスだとして、2024年度からの3年間に年間3.5兆円の予算を投入すると宣言しました。こども家庭庁もスタートし、少子化対策に特化して、大規模に財政的な手当をすると打ち出したのはとても評価できます。 ただ、支援策の中身が、児童手当を所得制限なしにし、対象を高校生まで引き上げる。第3子以降は3万円を支給。親が働いているか否かを問わず、保育施設の利用を可能にする制度の導入を目指す。育児休業の給付金を増額するなど、「子育て支援」の政策が目立ちます。すでに子供のいる家庭で第2子、第3子を産むための対策にはなっても、ゼロから子供を産み育てようという人たちに対しての支援は足りないのではないかと懸念されます。 これまでも子育て支援策を立ち上げてきましたが、少子化に歯止めはかかりませんでした。たとえば不妊治療費用の保険適用が限定的だったり、人工授精が法律上の夫婦間に限られていたり。「異次元」というからには、フランスのように婚外子の社会的偏見をなくすなど、社会で子供を育てるような意識で策を講じないと、状況を改善するのは難しいのではないかと思います。 子供を産もうとしない背景には、雇用が不安定で、若年層に貯蓄の余裕がない、経済的不安が理由で結婚にも踏み切れないという現実もあると思います。ヨーロッパのように、働き方の支援や結婚制度そのものにも柔軟性を持たせることも考えたいです。 参考になる一例として、兵庫県明石市は泉元市長の提言で、「こどもを核としたまちづくり」に舵を切り、子育て世帯が多く移り住む街に変貌を遂げました。子育てのために予算を投入することには反対意見もあり、効果が出るまでに6~7年かかったそうです。今、国の少子化対策のための財源は明確にされていません。今後3年間だけでなく長期的展望が必要となる政策。政権交代するごとに制度や支援がストップするようなことにならないよう、気をつけていただきたいと思います。 ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。 ※『anan』2023年8月2日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/497789/ Source: ananweb

  • 2023.07.21

運用には慎重になるべき! 自身も遭遇した“マイナトラブル”について堀潤が言及 | ananweb – マガジンハウス

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。 今回のテーマは「マイナトラブル」です。 いったん立ち止まり、根本的に見直す勇気を持って。 マイナンバーカードにまつわるトラブルが相次いで起きました。給付金などを受け取る公金受取口座に別人のものが登録されていた。住民票の写しを請求したら別人の証明書が発行された。マイナ保険証で他人の保険記録が見られるようになっていたなど、これらは登録時に人の手で行っているために起きたミスで、デジタル以前の問題です。発注の仕組みやオペレーション、誰がどこまで責任を負うのかというガバナンスのあり方が、日本のデジタル化を阻んでいるということを実感します。 僕自身、自分の納税者番号と他人の銀行口座が紐付けられていたというトラブルに遭いました。確定申告の還付金がいつまでも入らず、税務署に問い合わせて問題が発覚。申告しなければ、登録ミスにも気づかれないというのも大きな問題です。2007年に起きた「消えた年金」問題のころから、同様の問題が繰り返し起きています。 年金に関しては、その後「日本年金機構」を作り、管理を徹底しました。各役所も実際問題、現状の窓口業務だけで手一杯です。民間から人材を導入するなど抜本的な対処をしなければ、改善は難しいのではないかと思います。 マイナンバーカードのシステムを使い、デジタルを活用し、さまざまな作業コストを下げ効率よく行うことには大賛成です。しかし、それを実現するには現場が追いついていないということを直視すべきでしょう。 マイナンバー制度では、税金、保険証、免許証など幅広い国民情報を紐付けようとしています。諸外国での国民IDの紐付けに関する野村総研の調査によると、IDの利用範囲が広いのはアメリカやシンガポール、デンマークなど。しかし、以前アメリカでは詐欺により年間5兆円ほどの国民資産が奪われ、シンガポールでは2018年に150万人分の医療情報が盗まれました。一方フランスやドイツ、カナダはリスクを考え、IDの利用は限定的にしています。日本はサイバー攻撃の標的にもなっているので、安全保障の意味からもマイナンバーの運用には慎重になるべきです。システムを強固にするために1年かけて再点検するというような英断も必要ではないでしょうか。 ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。 ※『anan』2023年7月26日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/496512/ Source: ananweb