言葉

  • 2023.10.09

訳者別の読み比べも楽しい! 古典文学愛好家が教える、『源氏物語』の魅力 | ananweb – マガジンハウス

多くの作品が親しみのある現代語に訳され、初心者でも読みやすくなっている古典文学。その魅力や楽しみ方について、古典文学愛好家である、書評家・三宅香帆さんと翻訳家・イザベラ・ディオニシオさんが語ります。 最初にハマる古典はやっぱり『源氏物語』。 三宅香帆(以下、三宅):私が古典に興味を持つきっかけとなったのは、実は氷室冴子先生の『なんて素敵にジャパネスク』という少女小説なんです。 イザベラ・ディオニシオ(以下、イザベラ):ライトノベルズや漫画は入り口にぴったりですよね! 三宅:平安時代が舞台の話ですごく面白かったんですが、未完で終わってしまって。その続きが読みたすぎて、あとがきに元ネタになっていると書かれていた『大鏡』や『源氏物語』に手を出して。大学では国文学を勉強して、がっつりと読むようになりました。 イザベラ:私は子供の頃からギリシャ神話に興味があって、それをテーマにした児童書を読んでいたんです。でも、だんだん原文で読みたくなって。高校はクラシック系の学校に入り、ラテン語や古代ギリシャ語を中心に勉強しました。 三宅:え~、すごい! イザベラ:イタリアの高校は、日本の専門学校に近い感じなんです。それで古典作品をいろいろ読み漁って、古代ギリシャやローマの日常生活とか恋愛事情を知りました。 三宅:それで、なぜ日本の古典に興味を持ったんですか? イザベラ:大学に入る時に、軽い気持ちで日本文学の講義をとったんですよね(笑)。でも、歴史から学んでいくうちに、どんどん古典文学にハマっていって。最初に読んだのは『源氏物語』でした。 『源氏物語』は女性キャラが魅力的。 三宅:やっぱり、日本最古の恋愛ロマンスですもんね! イザベラ:のめり込みましたね。登場人物を知り合いに例えたりして、友達と楽しんでいました。 三宅:『源氏物語』は盛り上がりますよね! 私も大学生の時に、ドラマ化するならこの役はあの俳優さんがいいとか、勝手に配役を妄想してました(笑)。 イザベラ:主人公の光源氏よりも、女性キャラクターの方が個性的だし、断然、色鮮やか。だから、想像力を掻き立てられるんですよね。 三宅:『源氏物語』って読む時の年齢によって感情移入するキャラが替わりませんか? 最初は自分がまだ子供だったということもあって、雲居の雁がかわいくて好きだったんですが、大人になった今は朧月夜のような主体的な女性に惹かれる。嫉妬深くて、生き霊を飛ばす六条御息所も、最初はただただ怖い! って思ったけれど、嫉妬しちゃいけないと思うからこそ、生き霊になってしまった気持ちも今なら少しはわかる。 イザベラ:確かに。「自分は身分も教養も容姿も申し分ないはずなのに、なぜ私じゃなくてあの子を選ぶわけ? なんで振り向いてくれないの?」って思ってしまうとか…ね。怨念で死に追いやってしまうのはどうかと思いますが(笑)。 三宅:そんな簡単なものじゃないんですよね、恋愛は(笑)。 イザベラ:恋愛はケミストリーだから、いくら高スペックな女性でも、必ずしも恋が上手くいくとは限らない。作者の紫式部は当時からそういうことをわかったうえで、確信的に書いていたんですよね。 三宅:最愛の妻とは子供ができず、若い愛人にサクッとできてしまう話もすごいなぁと思いました。現代の話だと言ってもまったく違和感ないし、なかなか深いですよね。 読み比べも楽しい。人気作家が手がける『源氏物語』 『源氏物語』1 角田光代 訳 2017年に満を持して出版された、最も新しい角田訳。原文に忠実ながらも非常に読みやすく、昔も今もつながる感情を重視し、小説としての面白さが存分に堪能できる。この秋、待望の文庫化。10/6発売。¥880/河出文庫 『全訳 源氏物語 新装版』1 与謝野晶子 訳 少女の頃から『源氏物語』を愛読してきた与謝野晶子が晩年に書いた54帖全訳の決定版。与謝野版の出版により、一般にも広く普及されるようになった。その現代語訳は格調高い筆致が特徴。¥836/角川文庫 『潤一郎訳 源氏物語』1 谷崎潤一郎 訳 文豪・谷崎潤一郎による現代語訳は、京都の女語りを意識した流麗な雅文体。原文の雰囲気を生かして、継ぎ目のない長文で主語も入らないため、初めて『源氏物語』を読んでみようと思う読者にはやや難しい。¥1,100/中公文庫 『新源氏物語』上 田辺聖子 著 もともと『週刊朝日』に連載されていたもので、男性にもわかりやすい物語を目指して、原書を大幅にリライト。田辺の創作が少し加えられているうえ、会話を多用しているので現代小説のように読める。¥990/新潮文庫 (写真・左)三宅香帆さん 書評家。1994年生まれ、高知県出身。京都大学大学院修士課程修了。著書に『人生を狂わす名著50』『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』ほか多数。いつか『更科日記』を現代語訳することが夢。 (写真・右)イザベラ・ディオニシオさん 翻訳者、エッセイスト。イタリア出身。大学時代より日本文学に親しみ、2005年に来日。著書に『平安女子は、みんな必死で恋してた』『女を書けない文豪(オトコ)たち』『悩んでもがいて、作家になった彼女たち』。趣味はごろごろしながら本を読むこと。 ※『anan』2023年10月11日号より。写真・福森クニヒロ 黒川ひろみ 取材、文・野尻和代 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/508755/ Source: ananweb

  • 2023.10.06

アーティスト・ao、高校生になって作詞に変化が!? “言葉のチカラ”を語る | ananweb – マガジンハウス

小学6年生から作詞を始め、愛聴する洋楽の和訳を読むことが好きだというアーティストのaoさん。言葉と感情のインプットの仕方、そして現在17歳のaoさんにとっての“言葉のチカラ”とは? 小学6年生の時、歌手になるためのオーディションを受け、今の事務所に入ったaoさん。まもなく作詞・作曲を始めた。3曲目にできた「kekka」の歌詞には「仲間とバラバラになっても繋げてくれるのは言葉 Let’s say I’m not scary 私を変えてくれる言葉」というフレーズがある。初めて“言葉のチカラ”を感じた出来事を詞に反映したという。 「当時小学校高学年だったんですが、学校で女の子同士のいざこざが起きて、言葉が持つ攻撃力を人生で初めて感じたんです。当事者それぞれが言うことが違ったり、陰口が聞こえてきたり。それで真実を言葉にすることで自分にとって良い方向に導かれるんじゃないかなと思って書いた歌詞です。結局そのいざこざは解決に向かったので、『自分の言葉で発信することは大事なんだな』ということを知りました」 ストレートで等身大の歌詞は、幼い頃から愛聴する洋楽の影響が大きい。 「和訳を読むことが好きなんです。日本語詞と比べて和訳はストレートなので影響されていると思います。最初は小学校の漢字ノートに詞を書いていて、高校生になって『you too』の歌詞のモチーフになったお兄さんから『音楽活動頑張ってね』という思いを込めて誕生日にプレゼントしてもらったノートに書くようになりました。そのシリーズのノートは5冊目に突入しています。楽しいことも悲しいことも怒りも、感情が高ぶった時にノートにバーッて言葉を書きます。毎週日曜日に一週間で感じたことをまとめて書いていた時期もありました。言葉にすることで自分の気持ちとちゃんと向き合える。作詞は自分の気持ちを整理する時間でもあります」 遊び心を持ってメロディに言葉を乗せられるように。 音の響きに導かれるように英語詞と日本語詞が自然と混在していた歌詞が特徴的だったが、変化が起きている。 「1年ほど前にリリースした『リップル』くらいから日本語中心の歌詞を書くよう意識し始めました。音で楽しむというよりは、言葉で伝える大切さや面白みに興味が出てきました。作詞を始めてから5年ぐらい経ちますが、やっと遊び心を持ってメロディに言葉を乗せられるようになってきた気がしています。以前は『このワードを使いたいな』と思ったら瞬間的に歌詞に取り入れることが多くて、一曲にまとめる時に大幅に書き直すことも珍しくなかったのに、最近は直すことが少なくなりました。パナソニックさんのCMに書き下ろした『Unveil‐Reborn』の歌詞は、自分の中から出てきた言葉をそのまま詞にしていったら一曲できた。どんどん作詞が楽しくなってきています」 高校生になったことも作詞に影響しているそうだ。 「中学生の頃は、人間関係に対する自分の痛みをわかってほしいという気持ちが強くて負のエネルギーで歌詞を書くことが多かったんですが、高校生になって環境が変わったことで、いろいろなことを客観視できるようになりました。俯瞰して、過去の自分の感情や『こんなことを思っている人がいるかもしれない』といったことを考えられるようになった。高校生活がすごく楽しくて、金髪にもなりました(笑)」 リスナーからの反応が一番のモチベーション。 幼い頃から読書が好きで、本から言葉のインスピレーションを受けることも多い。愛読書として挙げたのは辻村深月さんの『かがみの孤城』と、R・J・パラシオさんの『365日のWONDER ブラウン先生の格言ノート』。 「『かがみの孤城』は小さい頃に、祖母が贈ってくれました。心が繊細な人たちがいろいろな時代から集まってくるというストーリーなんですが、音楽活動を始めてから読み直した時に、私の活動に似ているなと思いました。広い世界にポンッと放った曲をいろいろな場所から、いろいろな思いを持った人たちが聴いてくれる。そう感じたことでより好きな本になりました。『格言ノート』には365個の格言が載っていて、読みながら『今日はこの格言をモットーに生きてみよう』と思って過ごしていました。本を読むことで新しい単語がインプットされますね。ただ、感情のインプットは映画の影響が一番大きいと思います。最近観た映画でぐっときたのはNetflixで観た『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』です」 リスナーから歌詞についての反応を直接もらうことがままある。とても嬉しそうに、こんなエピソードを教えてくれた。 「今年『ENCORE』という楽曲をリリースした時に、曲を聴いてくれた方がすごく長い文章をDMで送ってくれたんです。『私はすごい歌手に出合えた』とか『想像できない曲を聴かせてくれた』ということが書かれていて、『共感してくれた人がいた。この曲を作って本当によかった』と強く思いました。リスナーの方から反応をいただけることが音楽活動の一番のモチベーションですね」 アオ 2021年、15歳の時に「Tag」でメジャーデビュー。’22年、Spotifyが選ぶ活躍を期待する次世代アーティスト「RADAR:Early Noise 2022」に選出。最新作はCMソングとしてオンエア中の「ENCORE」。現在放映中のハーゲンダッツとパナソニックのCMソングも担当している。 ビスチェ¥23,100 カーディガン¥60,500(共にフミエタナカ/ドール TEL:03・4361・8240) スカート¥15,900(デシグアル/デシグアル 東京 銀座中央通り TEL:03・6264・5431) コインネックレス¥3,200 チェーンネックレス¥2,900 ピアス¥2,500(以上ショーキー) 左手中指のリング(2個セットリング)¥33,000(共にタジリ) ブーツはスタイリスト私物 ※『anan』2023年10月11日号より。写真・Nae.Jay スタイリスト・岡本さなみ ヘア&メイク・灯(ROOSTER) 取材、文・小松香里 撮影協力・スタジオ バスティーユ (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/508713/ Source: ananweb

  • 2023.10.04

「ひき肉です」「はいー」あなたはいくつ知ってる? 最新流行ワード15選 | ananweb – マガジンハウス

若者たちの間で生まれる言葉から、今の時代を読み解くことができるかも? SNSの動向を熟知する今瀧健登さんと末吉9太郎さんに今の流行ワードを教えてもらい、トレンドを深掘りします! 新しいムーブメントの発信源はTikTok。 トレンドが目まぐるしく変わっていく今の時代。Z世代でリアルに盛り上がっている言葉を、識者のお二人に伺いました。 今瀧健登(以下、今瀧):9太郎さんから見て、今Z世代の間でブームを巻き起こしている流行ワードは何ですか? 末吉9太郎(以下、9太郎):もうこれは絶対的に「ひき肉です」! 周りの人がみんな真似して使ってますから! 今瀧:同感です。異常に流行っていて、ここまでの大ブームは久々。今年は夏にかけて、中学生YouTuber「ちょんまげ小僧」の勢いがすごかったです。 9太郎:ひき肉くんは、「ちょんまげ小僧」のメンバーのひとりなんですよね。毎度お馴染みのあいさつ「ひき肉です」は、言い方や間が絶妙で。両手を広げるポーズや、カメラ目線じゃない感じも、なんだかクセになるんですよ。 今瀧:彼のモノマネをしながら、アレンジを重ねて楽しむ流れができましたね。芸能人や、有名なTikTokerも「ひき肉です」の関連動画をたくさんアップしていましたし。 9太郎:僕自身は、TikTokでトレンドを知ることが多いのですが、今は新たなムーブメントが起こる場所といえばTikTok…なのでしょうか? 今瀧:そうですね。TikTok上に流れてくるものは、基本的にいま世間を賑わせているものばかり。アルゴリズム的に、年齢や属性に関係なく面白いものが見られる傾向にあるので、時代の新潮流が生まれやすいといえるでしょう。 9太郎:毎週、何かしら新しいことが流行ってる気がします(笑)。 今瀧:毎日膨大な量の動画が投稿されていますからね。例えば昭和・平成のコンテンツもTikTokのおすすめ欄に流れてきたりするので、昔流行っていた言葉のリバイバルブームも生まれやすくなっています。 9太郎:なるほど。最近の個人的お気に入りは、わーちゃんという男の子が何気なく言い放った「バナナきた!」。すっごくかわいくて何度も真似しちゃいます。「かわちい」もそうですけど、耳馴染みが良く、言いたくなるフレーズが流行りやすいのかな。 今瀧:それはありそうです。あとは「単純接触効果」といって、繰り返し接すると、好意度や印象が高まるという心理的現象があるんです。SNS自体がこの効果を狙いやすいので、トレンドワードが生まれやすい土壌といえます。 9太郎:確かに! 何気なく見ているうちに、言葉が頭の中で無限ループされて、マイブームになっていることもよくあります(笑)。 今瀧:あとはSNSの場合、コメント欄でのやりとりが活発なので、そこから火がつくことも。 9太郎:どういうことでしょう? 今瀧:例えば「蛙化現象」について話している動画に対して、「このエピソードは蛙化現象なのか」「いや、そうとは言えない」と意見が分かれ、コメント欄で議論が交わされる。その結果、炎上状態になり、さらに言及する人が増えたり…。そうなればリプライなどで、より大勢の人の目に留まりやすくなり、最終的に言葉だけが一人歩きしてしまうなんてことも、よくあるのではないかなと。 9太郎:言われてみればそうですね。僕が思うのは、「知らんけど」「はいー」のように、自分のエピソードを語った時、最後にオチ的に言えるフレーズが使いやすいなって。SNSでも、実際の会話でも、つい言っちゃいます。 今瀧:そうですね。真似しやすいだけではなく、自分らしくアレンジしやすい言葉も今のトレンドといえそうです。 ひき肉です 中学生YouTuberの自己紹介が一気に浸透!今ノリに乗っているのが、今年の夏に登録者数100万人を超えた6人組の中学生YouTuberグループ・ちょんまげ小僧。「メンバーのひき肉さんが自己紹介で行う独特なあいさつを真似する人が続出。音源のリミックスを作る人も登場し、大バズり中です」(9太郎さん) 手遊びすんな 替え歌のフレーズがクラブシーンを席巻。TikTokで人気の盆踊りネキさんが踊る動画に対して、レゲトンシンガーのS.I.さんが「手遊びすんな」とツッコむ替え歌からのパンチライン。「今夏に大ヒット。ネキさんの盆踊りっぽい動きを真似してクラブで踊る人や、SNSに動画を上げる人が続出中」(今瀧さん) 知らんけど 関西弁が全国区に。オチに使うことで会話が盛り上がる。昨年の「新語・流行語大賞」にノミネートされ、もはや全国区に。確証が持てない話のオチに使用することで、ネタっぽくなる魔法の言葉。「ちょこっと責任を回避したい時に便利なフレーズ。不特定多数の人が見るSNSとの相性も良いのかも」(9太郎さん) かわちい・うちゅくちい ASMRの要素を取り入れたコーデ紹介動画が発祥!ジッパーを上げる音や衣擦れの音を生かしながら着替えていく“ASMRコーデ紹介”動画で使われる、定番ワード。「発祥は諸説ありますが、僕は7歳のゆずちゃん&5歳のみつくんが登場するYouTubeチャンネル『ゆずみつといっしょ』で知りました」(今瀧さん) てぇてぇ 推しへの感情が高まった時に用いられるオタク言葉。「尊い」を意味するネットスラング。「好き」や「萌え」には収まりきらない、強い感情を表現。「バーチャルライバーグループ『にじさんじ』のVTuber同士の仲の良さに対して、ファンの方が用いた言葉がじわじわと定着しました」(今瀧さん)。省略して「TT」と表記することもあり。 蛙化現象 自分が思い描いていた理想とのギャップに幻滅。好きな相手から、自分に好意を持たれた途端に嫌悪感を抱いてしまう心理を指す言葉。「最近は、もう少しライトな意味合いで使われるようになり、好意を持っている相手のささいな行動を目撃して、気持ちが冷めてしまった時などに使われたりも」(9太郎さん) キャパだわ “キャパオーバー”がよりタイトなフレーズに。キャパシティを超えた状態を表現する「キャパオーバー」が、さらに短く簡潔化。意味は変わらず、テンパっていたり、いっぱいいっぱいな状態を表す。「お酒を飲みすぎて限界が来た時や、仕事でいっぱいいっぱいになっている時など、マルチに使えます」(今瀧さん) ギャルピ 平成のギャルブーム再燃で、ポーズが大流行。’90年代にギャルの間で流行した、ピースを逆さにして、前へ突き出すポーズ「ギャルピース」が韓国に渡り、K‐POP アイドルの間でブームに。昨年、ファンを通じて日本の若者に逆輸入。「今や、若者たちが写真を撮る時の新定番ポーズといえます」(今瀧さん) おぢ/おじ 「ジジイ」はもう古い? 「おじさん」表現も進化。「おじさん」の略語。親しみを込めて「おぢ」とキュートに表現する時もあれば、ややネガティブなニュアンスが込められる時も。「おじさんぽい言動をしてしまった時に『今のおじだったわ』と自虐的に言ったり、形容詞的に『おじみ』と使うことも」(今瀧さん) 草 「臭っ」と言ってるわけではないんです!ネットスラングで「笑」を表現する「www」が、草が生えているように見えることから。「以前はネット上の書き言葉でしたが、普通の会話の中でも使われるように。『草!』『草すぎん?』とか言います。逆に、笑えない状況の時に言うのも今っぽい用法です」(9太郎さん) タイパ エンタメもサービスも、時間の効率化を最重視。タイムパフォーマンスの略語で、自分が費やした時間に対して、得られた効果や満足感を意味する。「Z世代は、YouTubeやドラマなどの動画を倍速で視聴したり、ショート動画を好んだりと、時間を効率的に使うことをますます重視する傾向です」(今瀧さん) 限界 「やばい」のさらに先を突き詰める究極ワード。極限まで行ってしまった…! そんな状態を一言で言い表す便利ワード。限界までお金や時間をかけない「限界コスメ」や「限界レシピ」など多様に使用可。「感情などが限界を超え、余裕がなくなった状態の人を『限界オタク』『限界OL』と表現することも」(9太郎さん) はいー お笑い芸人・やす子さんのキュートな口グセが流行中。元自衛官であることを生かしたネタを武器に、テレビやSNSで大ブレイク中のお笑い芸人・やす子さんが発する口グセ。「どんなシチュエーションでも使えて、ここ最近真似する人が急増。真面目な場面でも『はいー』と言うだけで場が和む」(9太郎さん) なぁぜなぁぜ? かわいく毒づける最強フレーズ。「なのになの、なぁぜなぁぜ?」と、疑問や不満などに対してキュートにツッコむ、かなり高度な皮肉フレーズがTikTokを中心に大流行中。「ちなみに、元ネタは、FRUITS ZIPPERの楽曲『ハピチョコ』の『なになに?』というフレーズです」(9太郎さん) DNA 9太郎さんのユニークな動きがじわじわと人気に。9太郎さんの「#オタクあるある」シリーズから。「頭の上で両手をくねくねと交差させて、ライブで推しから反応を貰おうとする人のネタなんですが、見た方が『二重らせんじゃん、DNAじゃん』とコメントしてくれて、動きに名前がつきました(笑)」(9太郎さん) 今瀧健登さん SNSネイティブ世代への企画・デジタルマーケティングを得意とするZ世代のヒットメーカー。個人としても多数メディアに出演する。著書に『エモ消費』『Z世代マーケティング』など。 末吉9太郎さん “友情・努力・音楽!”をキャッチフレーズに活動するボーイズユニット「CUBERS」のリーダー。「アイドルオタクあるある動画」がSNSで反響を呼び、アイドルオタクアイドルとして注目を集める。 ※『anan』2023年10月11日号より。イラスト・ばびぶべん 取材、文・鈴木恵美 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/508696/ Source: ananweb

  • 2023.10.04

言語能力は2歳時点でかなり差ができている!? 『言語の本質』著者と言葉の謎に迫る | ananweb – マガジンハウス

認知科学者と言語学者が「オノマトペ」から言葉の謎に迫る『言語の本質』。今年5月の発売からすぐにベストセラーとなった話題の本書の著者である今井むつみさんと秋田喜美さんに、言葉の謎に迫るための様々な疑問に答えていただきました。 ――今年5月に出版された『言語の本質』が話題です。社会的な背景など、そこにはどんな理由があると思われますか? 今井むつみ(以下、今井):やはり言葉は毎日使うものなので、「もっと上手に使えたらいいのに」という思いが誰しもあるからではないでしょうか。それに本書の出版が、ChatGPT(人間のように自然な会話ができるAIチャットサービス)のリリース後だったということも影響しているように思います。驚くほど巧みに言葉を操るAIが登場したことで、自分たちが日頃使っている言葉に対して疑問や不安を抱く人も多かったのかもしれません。 秋田喜美(以下、秋田):同感です。あとはポッドキャスト『ゆる言語学ラジオ』の水野太貴さんのSNSをはじめ、多くの新聞や雑誌の書評で取り上げていただいたことも後押ししてくれていると感じています。 ――本書では言語の本質をひもとくカギとして、“オノマトペ”(何らかの音や状態を表現した言葉)に注目されています。 秋田:例えば「ワンワン」「キラキラ」など、オノマトペをよく使うのは、言葉を覚え始めた子どもや、その周囲にいる大人です。言語の本質に迫るには、言語の起源と言語の習得の謎を明らかにすることが重要です。つまり、オノマトペを研究することが、言語の本質に繋がると考えたのです。 今井:そして子どもが使うオノマトペの言語性は、発達段階に合わせてどんどん深まっていきます。例えば「よろよろ」というオノマトペが、「よろよろする」「よろける」といった形で動詞に組み込まれたり、あるいは副詞的に使われたりすることもあります。オノマトペは、私たちの祖先が言語を作っていった過程になぞらえることができるのでは…。そんな指摘をする研究者もたくさんいます。 秋田:オノマトペは「よろける」のように動詞などの品詞に変化することもあれば、その逆もありますよね。例えば、胸の高鳴りを表す「ワクワク」は、「湧く」という動詞が語源との説があります。 今井:オノマトペが面白いのは、初めて聞く言葉でも、2~3回使ってみると完全に身体化してしまうようなことがあるところ。例えば、若者から生まれた「ぴえん超えてぱおん」は、悲しみを表す昨今の流行語「ぴえん」に、ゾウの鳴き声のオノマトペ「ぱおん」を対比させて、非常に大きい失意を表している言葉だといいます。私はこれを初めて聞いた時、何のことか全くわからなかったのですが、今では思わず使ってしまいそうな気がするほどです(笑)。 ――言葉の変化や、本来の意味と違う使われ方に対して、嘆かわしく思う必要はないのでしょうか。 今井:ある程度、年齢を重ねた人たちにとって、こうした新語は日本語として間違っていると感じられるかもしれません。でも、実は言語の使い方に「間違っている」「合っている」という規定はないのです。ある時代を切り取った時に、その使い方をする人が、どれだけたくさんいるのか。それがマジョリティであれば、新しい言葉は「正しい言葉」として社会に浸透していきます。 ――最近、新語から定着しそうな言葉はありますか? 今井:「むずい」ですかね。私が教えている学生など、若い人たちは「難しい」という言葉を知らないのかと思うくらいに、「むずい」を連発します。「難しい」は長すぎるのかもしれませんね。 秋田:「むずい」もそうですが、ほかにも「痛い」を「イタッ」と言うなど日本語は略す時に2文字だけ残すことがよくあります。すると、「ピカッ」のようなオノマトペに似てくるのです。オノマトペには、物事の一部分をアイコン的に写し取るという特徴がありますが、本来の言葉を2文字に略すことで、そのアイコン性が見出しやすくなるのではないでしょうか。 ――冒頭で、本書が注目されている理由の一つにChatGPTの登場を挙げられていましたが、人間の言語とAIの言語にはどんな違いがあるのかも気になります。 今井:まず、人間の言葉は、ほとんどの場合、感情と結びついているといえるでしょう。例えば、犬や猫という言葉でも、それが好きなのか否かが、言葉の中に含まれている気がします。一方、AIには感情がありません。単なる情報伝達手段というのが、AIの言語です。両者の大きな違いは、そこにあると思います。人間の言葉が感情と結びついている例として顕著なのは、LINEのようなテキスト主体の媒体では、スタンプや絵文字を使おうとしますよね。それはテキストだけだと、気持ちが伝わりにくいからだと思います。 秋田:私は、AIと子どもの言語の違いについて話したいと思いますが、AIの言語は統計情報なので、すでにある膨大なデータベースをもとに、答えが導き出されていくのが特徴です。一方、子どもの言語は、AIほど大量のインプットを受けているわけではないのに、聞いたことがないような文まで話すなど、とても創造的。限られた情報以上のことを、アウトプットできるのです。 ――受け取った情報から、想像を膨らませているのでしょうか。 秋田:はい。例えば「ワンワン」という言葉も、初めて聞いた時は何を指すのかわからないと思います。でも、次第に目の前の犬を指す言葉だとわかり、さらに「あの動物もワンワンだろう」と仮説を広げていくうち、犬というグルーピングができるようになる。このように正しいとは限らない仮説を立てることを「アブダクション推論」といいます。それにより人間の思考や言葉は豊かになるのです。 ――言葉の豊かさといえば、言語能力には個人差があるように思いますが、その差はどこで生まれるのでしょうか。 今井:これは多くの人が抱くクエスチョンで、私も正解を知りたいくらい(笑)。ただ、研究から一つ言えるのは、幼少期にインプットされる言葉の量と質が、その後の言語能力に大きく関わるということです。2歳の時点で、かなり差ができているともいわれています。 ――では、大人になってから言語能力を磨きたいと思っても、子どもの頃にベースがないと難しい? 今井:不可逆的に無理かというと、そんなことはないと思います。自分の語彙力の限界に気づき、不足しているところを補うために、何をすべきか考える。その気持ちさえあれば、向上できるはずです。 ――最後に、ずばり「言語の本質」とは。そのポイントとなることを教えていただけると嬉しいです。 今井:言葉の役割について“豊かなコミュニケーションをとるための道具”といった表現が使われがちですが、実はそうではありません。人はたくさんの思いを伝えたいのに、情報処理能力が限られているため、無意識のうちに言葉を取捨選択しています。聞く人が扱えるだけの情報量に絞って、伝えているのです。ピンポイントだからこそ、相手に“伝わる”。言語の本質的特徴には様々ありますが、これはその重要な要素です。 秋田:人には何かと何かの間に、能動的に類似性を見出そうとする特徴があります。先述した「ワクワク」は「湧く」からきているのに、なぜかしっくりくる。それは、ワクワクという音と、ワクワクした感情の間に私たちが類似性を見出すからではないでしょうか。ワンワンと犬の間に類似性を感じるように。そう考えると、今後も新しいオノマトペが生まれる可能性は、大いにあると思います。 今井むつみさん 慶應義塾大学環境情報学部教授。専門は認知科学、言語心理学、発達心理学。著書に『ことばと思考』(岩波新書)など。近著は元プロ陸上競技選手の為末大さんとの共著『ことば、身体、学び―「できるようになる」とはどういうことか』(扶桑社新書)。 秋田喜美さん 名古屋大学大学院人文学研究科准教授。専門は認知・心理言語学。日本をはじめ世界各国のオノマトペを研究。また、日本語と世界の言語との比較にも関心を寄せている。著書に『オノマトペの認知科学』(新曜社)、共著『言語類型論』(開拓社)などがある。 ※『anan』2023年10月11日号より。イラスト・hakowasa 取材、文・保手濱奈美 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/508691/ Source: ananweb