野呂知功

  • 2024.05.21

imase「才能以外の戦略的な部分で頑張ってきたのかな」 3年間の集大成となる1stアルバム | ananweb – マガジンハウス

1stアルバム『凡才』をリリースしたimaseさん。音楽活動開始から約3年間で生み出してきた楽曲をまとめた、全19曲の充実作だ。 『凡才』なりの“戦略”で頑張ってきました。 「最初は12~13曲で想定していたのですが、1曲が3分前後と短いので、せっかくならばと3年間の集大成としてボリューミーなアルバムにしました」 今作には世界各国でバイラルヒットした「NIGHT DANCER」や映画『SAND LAND』の主題歌「ユートピア」など、自身の音楽活動の軌跡が詰まっている。映画やドラマだけでなく、CMソングなどのタイアップ曲もズラリと並んだ。 「『恋衣』(キリン午後の紅茶「さむいのに あたたかい ミルクティーのうた」キャンペーンソング)は、一般公募された短歌から歌詞のフレーズを作りました。また『Happy Order?』(マクドナルドタイアップソング)では、〈最後の1時間が死ぬほど長く感じる〉という、アルバイトをしている方なら必ず感じる気持ちを歌詞に入れたりと、遊び心を入れて作っています。タイアップ曲を作ると、新しいアイデアやボキャブラリーが出てくるので面白いです」 多彩なポップセンスでバラエティ豊かな曲を生み出してきた彼の、初のアルバムのタイトルは『凡才』。 「特別歌がうまかったわけでも才能があったわけでもない“凡才”の僕が、どうしたらたくさんの方に聴いてもらえるかを考えた曲が詰まっている」という意味で冠された。 「これまでの音楽活動において、自分に対する自信や信念があったわけではなかったので、まずはショート尺でTikTokに投稿して曲を聴いてもらったり、ファルセットだけで歌ったり、模索する中で『これだったら』というものを見つけ出した感覚です。なので、才能以外の戦略的な部分で頑張ってきたのかなと思います」 あらためて自分と向き合って音楽制作をした今作。タイトル・チューンの「BONSAI」には、こんな挑戦があった。 「1曲目の『BONSAI』は、19曲目の『Have a nice day』を作った“初期のimase”を意識した最新曲です。当時の音楽制作を自分なりに再構築して、知識や経験を得て進化した今の自分を見せられる曲になりました」 原点回帰と再構築。それは“imaseらしさとは何なのか”を自分に問う作業だったのでは? 「本当にその通りですね。やっぱり打ち込み感の強いベッドルームミュージックがimaseらしさだなと。『BONSAI』には〈5畳半の部屋〉という歌詞も出てきますが、僕が実家で制作をしていたときのような、狭い空間での響きや音質を意識して作りました。これまで自分について語るような曲はなかったんですが、あらためて自己紹介をするような曲になっています」 6月からはバンコク、香港、台北などを回るアジアツアー、11月からはホールツアーが開催される。 「最近は自分なりのライブのやり方を見つけて、より楽しめるようになりました。初めてライブに来るお客さんも含め、みんなが緊張しない一体感と多幸感溢れるポップなステージを届けられるように意識しています。アジアツアーでは、美味しいものを食べるのも楽しみです(笑)」 1st Album『凡才』。「NIGHT DANCER」など全19曲収録。【初回限定盤(CD+BD/DVD)】¥4,950/¥4,400 BD、DVDにはライブ映像などを収録。副音声付き。【通常盤(CD)】¥2,750(ユニバーサルミュージック) イマセ 2000年生まれ、岐阜県出身の新世代アーティスト。音楽活動開始からわずか1年でTikTokでバイラルヒットを生み、’21年12月にメジャーデビュー。国内外で活躍の場を広げている。 ※『anan』2024年5月22日号より。写真・野呂知功(TRIVAL) ヘア&メイク・向井大輔 取材、文・上野三樹 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/549148/ Source: ananweb

  • 2024.04.29

渡辺謙、アンセル・エルゴートは「好きな俳優さんのひとり」 『TOKYO VICE Season2』でバディ感UP! | ananweb – マガジンハウス

日本の新聞社で警察担当記者となったアメリカ人青年ジェイクを通して’90年代東京のリアルな裏の顔を描くドラマ『TOKYO VICE Season2』がスタート。ジェイクを演じていまやインタビューも日本語のアンセル・エルゴートさんと、刑事・片桐を演じる渡辺謙さん。社会の闇を追うふたりを演じた彼らにはハートフルなバディ感が。 「謙さんといっぱい時間を過ごせたことに感謝です」(アンセル) 左から、渡辺 謙さん、アンセル・エルゴートさん。 ――日本語で演技されたこの作品をご覧になって、ご家族はなんと? アンセル・エルゴートさん(以下、アンセル):「シーズン2も最高ですね」と楽しんでくれてますし、「アンセルは日本に行ってよかった。大人になった」と言ってます。マナーもいろいろ習いましたから(笑)。 渡辺 謙さん(以下、渡辺):彼は真面目なんですよね。役に取り組む方法論や姿勢とあいまって、一緒に過ごすうちに好きな俳優さんのひとりになりましたね。 アンセル:謙さんといっぱい時間を過ごせたことにすごく感謝しています。謙さんは1~2テイクだけで完璧。クリント・イーストウッド監督(早撮りで有名)の作品に出てるから。いや、その前からかもしれない。僕は20テイクとか撮るのが好き。 渡辺:俺は引き出しが少ないんだよ。自分はマテリアルだと思ってるから、表現したもので十分なものが得られたならOKなんだけど、彼は貪欲にいろんな表現をトライする。エネルギーがあるってことでしょうね。 アンセル:エネルギーを無駄にしてるかもしれない(笑)。謙さんは全然無駄にしてない。 ――おふたりともエグゼクティブ・プロデューサーでもあります。 渡辺:僕の役割は、日本語をどうリアルに伝えていくか。字幕にしたときにお客さんがコンフューズしないように、1シーンの中にどうバランスよく英語と日本語を配置するかをアンセルとも話したり。記者や刑事、ヤクザが使う言葉は違うし、それを粗訳からキャラクターの体に乗っけるような台詞にしなきゃいけないので、夜中にも結構、撮影中の台詞を確認する電話が来ました。 アンセル:謙さんはいつも自然な翻訳を考えてくれて、僕の演技の日本語を本当にたくさん手伝ってくれました。 渡辺:彼もシーズン1よりさらに日本語の台詞にトライしようという意識が高かったので、彼から台詞の提案があると、それでいけそうか、もっと簡単なワードにするかというセッションもしてましたね。 ――シーズン2では恋愛も絡んでジェイクはさらなる危険に直面します。片桐の苦悩も深まっていますね。 アンセル:シーズン2ではジェイクは片桐をちゃんと守ろうとします。ジェイクも大人になってる。 渡辺:でも、バカにもなってるよね。いちばんデンジャラスな女を愛しちゃう。「なんで、そこに行くんだよ」ってみんなが思ってる。 アンセル:でも、その関係は大事。だって、それは…。 渡辺:ちょっと、ちょっと!(と、ネタバレを制す) アンセル:ジェイクはデンジャーが大好き。だから、日本に来たし、重要な仕事をしたいと思ってる。みなさんもどんどん次回が待ち遠しくなりますし、シーズン1と違って、今回は「ちゃんと終わりました」な感じになります。 渡辺:完結する感じになる。 アンセル:そう、いい食事でお腹いっぱいな満足感がありますよ。 『TOKYO VICE Season2』 豪華キャストで1990年代東京のリアルで凶暴な裏の姿を描くハリウッド共同制作オリジナルドラマ。WOWOWにて毎週土曜21時~放送、配信中。出演/アンセル・エルゴート、渡辺謙、レイチェル・ケラー、菊地凛子、笠松将ほか わたなべ・けん 1959年10月21日生まれ、新潟県出身。『瀬戸内少年野球団』で映画デビュー。アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた『ラスト サムライ』(2003年)以降はハリウッドでも活躍。 衣装協力・BRUNELLO CUCINELLI アンセル・エルゴート 1994年3月14日生まれ、ニューヨーク市出身。『キャリー』(2013年)で映画デビュー。『ベイビー・ドライバー』(’17年)ではゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされた。 ※『anan』2024年5月1日号より。写真・野呂知功(TRIVAL) スタイリスト・JB(渡辺さん) ヘア&メイク・金 沙知(アンセルさん) 倉田正樹(アンフルラージュ/渡辺さん) インタビュー、文・杉谷伸子 (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/546166/ Source: ananweb

  • 2024.04.29

舘ひろし「頑張ることこそが年を取った男のカッコよさ」 柴田恭兵と語る8年ぶりの『あぶない刑事』 | ananweb – マガジンハウス

刑事ドラマの常識を軽やかにスタイリッシュに覆し、日本ドラマ史上のレジェンド的存在となった『あぶない刑事』が8年ぶりに復活。38年間演じ続けてきた舘ひろしさんと柴田恭兵さんのバディのカッコよさは“あぶ刑事”世代じゃない人も惚れるはず! ――8年ぶりに新作の映画を撮る、と聞いたときは、率直にどう思われましたか? 舘ひろし(以下、舘):僕は正直、前回(2016年公開の映画『さらば あぶない刑事』)で終わったと思ってたんですが、また柴田恭兵という人と『あぶない刑事』ができるということだけで、もう断る理由はありませんでした。とにかく恭サマと、もう一回演やれる。それが本当に嬉しかったんですよ。 柴田恭兵(以下、柴田):右に同じです(笑)。僕的には、舘さんが「全員集合」と言ったら、もう何はさておき馳せ参じますよ(笑)。 舘:何をおっしゃる(笑)。 柴田:いや、実は正直なことを言うと、最初は「映画? もういいでしょ…?」という部分はなきにしもあらずでしたが、「二人のどちらかの娘が登場する話を考えている」と聞いて、これはちょっとおもしろくなりそうだな、と。長い間やってきましたけれど、これまでタカとユージのプライベートが垣間見えるということは、ほぼなかったので。 ――久しぶりの『あぶ刑事(デカ)』の現場だったと思いますが、すぐに雰囲気は掴めましたか? 舘:ええ。会った途端に空白の時間はまったくなかったような感じでした。 柴田:そう。ブランクなんてなかったみたいに。舘さんがダンディーにそこに立っているだけで、みんなが「よし、やるぞ」という気になるんです。 舘:恭サマと僕、オンコ(浅野温子/あつこ)、(仲村)トオルが揃えば怖いものなし。僕は本当に、この4人は最強だと思ってるから。 柴田:安心感も大きいですからね。たぶんそういう雰囲気、映像にも溢れているんじゃないのかな。 ――おっしゃるとおりで、みなさんが楽しく撮影していらっしゃる感じが溢れていました。 舘:そう、めちゃくちゃ楽しかったもん(笑)。 ――舘さんが演じる鷹山敏樹、柴田さんが演じる大下勇次。それぞれの魅力を教えてください。 柴田:タカはとにかくダンディー。世界を代表するダンディー。びっくりするぐらいダンディー。 舘:(笑)。あの、鷹山っていうのはこの作品にとってファンダメンタルな存在で、土台みたいなものだと思ってます。物語の基礎に鷹山という男がいて、その上にユージという建物が立つ。タカの上でユージが走ったり、キラキラ輝いている。僕は土台だからそんなに目立つ男じゃないんです。 柴田:それで言ったら、ユージはセクシーで軽くてただのお調子者。 舘:いやいやいや、そんなことはない(笑)。タカとユージも、舘ひろしと柴田恭兵も同じなんですが、それぞれが長方形の対角線上にいるような、遠い存在なんですよ。でも、そういう二人がバディを組むことでケミストリーが起こり、おもしろいものが出来上がる。それがタカとユージ、そして『あぶない刑事』の魅力なんじゃないのかな。 ――今回の監督・原廣利さんは現在30代半ばで、ご自身でも「再放送で見ていた世代」とおっしゃっていました。若い監督と一緒の現場はいかがでしたか? 柴田:舘さんの初日にハーレーに乗るシーンがあって、それを見た瞬間にみんなが「わぁ、ダンディー鷹山だ!」って大興奮だったんです。そこでまず世界観が出来上がった。芝居に関しては僕たちが、「こんな感じでやりますよ、こんな芝居ですよ」というのをいろいろ提案し、それを監督はじめ若いスタッフがいろいろと拾って、“もっと素敵に、もっとダンディーに、もっとセクシーに!”と頑張って撮ってくれたんです。 舘:原監督のお父さんは原隆仁監督といって、かつて『あぶ刑事』のテレビドラマの監督だった方なんです。原隆仁監督は、ハードボイルドな作品を撮るのが本当に上手かった。 柴田:ハードボイルドのなんたるかがわかっていて、さらに作品がとてもおしゃれだった。 舘:その息子さんである原廣利監督も、そのDNAを受け継いでいるんじゃないのかな。 柴田:本当にそのとおり。その上で、このわがままな二人のやりたい放題を受け止めてくれて(笑)。 ――久しぶりの『あぶ刑事』ということで、現場に入る前に特別な準備などはされましたか? 舘:まったくないです(笑)。 柴田:女性を抱きしめるシーンの準備とかはしてると思いますよ? まあ準備なんてしなくても、お手の物ですけど。 舘:それは確かに練習が必要ね。 柴田:僕が現場で台本を読んでいると、舘さんが横に座ってる。「恭サマ、何考えてるの?」って聞くから、「このセリフのことを、ちょっとね」。で、僕が「舘さんは?」と尋ねると、「女のこと」って(笑)。 舘:(苦笑)。いや、それは、恭サマがセリフも物語もすべて把握しているから、わからないことがあったら恭サマに聞けばいいわけで。すごいんですよ、恭サマは。僕はね、彼の横でふにゃふにゃしてるだけなんです。 ――本当に、タカとユージのようにいいコンビネーション…。 柴田:僕と浅野さんとトオルで、舘さんのわがままを支えているんです(笑)。 ――ちなみにお話ししていただける範囲で、舘さんのわがままエピソードを教えてもらえますか? 舘:「8時からデートだから、6時に撮影を終わらせてほしい」って言ってた日があったんですよ。でもどんどん押しちゃって、全然終わらない。で、我慢できなくなっちゃって、「デートがあるから帰ります」って、帰っちゃった。 ――柴田さんはなんと? 柴田:「しょうがないなぁ」(笑) 舘:優しいでしょ? 恭サマ(笑)。 ――ご自身の俳優ヒストリーの中で、『あぶない刑事』はどんな意味を持つ作品ですか? 舘:僕にとってはまず、「代表作が持てた」という意味で、この作品に出合えたことは本当に幸運だったと思います。俳優の名前を見て「この作品!」というものを持てることって、実はなかなかないんですよ。 柴田:若いときは、この作品がヒットしたからこそ、「もっと違う自分を見せたい」とか「また別の素敵な作品に出合えるだろう」と思っていたんですが、時間が経ってから、『あぶない刑事』は自分が思っていたよりも大きな意味を持つ作品だったことに気がついたというか…。作品はもちろん、出演者、スタッフ、誰一人欠けても生まれなかった作品だと思うんですよ。いろんな意味で、僕にとって素敵な出合いだったと言える作品です。今作のエンディングでユージが振り返って何かを口走るんですが、実は、もう亡くなってしまったスタッフや共演者の名前と“ありがとう”と言ってまして…。毎回本当にいろんな人に支えてもらって、出来上がった作品なんですよね。 ――全編にわたってカッコいいタカとユージ、そして『あぶない刑事』の世界観を満喫できる2時間ですが、あえてお二人から、「特にここを観て!」というところを教えていただけますか? 柴田:年を取った元刑事の二人の、無理して頑張っているカッコよさを観てほしいです。タカとユージってアニメのキャラクターみたいなものだと思っていて、年を取ってもキャラにブレはないんです。 舘:そうそう。頑張ることこそが年を取った男のカッコよさですよ。最近わりとシリアスな映画が多いような気がするんですが、そんな時代に、こういう楽しくてちょっとバカバカしい映画もいいかな、と思います。 柴田:そう。映画って楽しいんですよって言いたいよね。 『帰ってきた あぶない刑事』 定年退職後ニュージーランドで探偵業を営んでいた鷹山と大下が、8年ぶりに横浜に戻り、探偵事務所を開設。最初の依頼人は、タカ&ユージのどちらかの娘?! 彼女の依頼は「母親の捜索」。二人は捜索に乗り出すが、殺人事件が多発、さらにはテロの危機が。母親は見つかるのか、そして街は救われるのか?! 共演に浅野温子、仲村トオル、土屋太鳳、早乙女太一、ベンガル、吉瀬美智子、岸谷五朗ほか。監督/原廣利 脚本/大川俊道、岡芳郎 5月24日より全国公開。©2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会 たち・ひろし(写真・左) 1950年生まれ、愛知県出身。’76年に映画『暴力教室』で俳優デビュー。映画『終わった人』で第42回モントリオール世界映画祭最優秀男優賞を受賞。 しばた・きょうへい(写真・右) 1951年生まれ、静岡県出身。’75年に劇団「東京キッドブラザーズ」に入団し、キャリアをスタート。代表作にドラマ『ハゲタカ』、映画『半落ち』など。 ※『anan』2024年5月1日号より。写真・野呂知功(TRIVAL) スタイリスト・中村抽里(舘さん) 古舘謙介(柴田さん) ヘア&メイク・岩淵賀世(舘さん) 澤田久美子(柴田さん) (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/546124/ Source: ananweb

  • 2024.03.11

上白石萌歌「今と通じるところがあると感じてもらえると思う」 舞台『リア王』に挑戦 | ananweb – マガジンハウス

年老いて退位を考えた王が、自身の3人の娘に対し、孝行者にだけ財産を与えると伝える。それを聞いた姉ふたりは、口先ばかりの甘言を並べるが、正直者の末娘が嘘のない物言いをしたことで父親の怒りを買い追放されてしまう。一方のふたりの姉は、財産を手にした途端に父親を放り出し、老王は悲劇的な結末を迎える――。この世界的に有名なシェイクスピアの『リア王』の物語に、上白石萌歌さんが挑戦する。 大事なテーマや問いかけが、たくさんある作品です。 「大学で演劇学を学んでいたんですが、シェイクスピアは必ず通る道なんですよね。400年以上前の作品がこうして今もいろんな座組で上演されているのは、作品の中に、その時代時代によって大事なテーマや問いかけがたくさんあるからだと思うんです。ふたりの姉は父親から、どれだけ自分を愛しているか語るよう言われ、すごく流暢に父親への愛を語るけれど、三女は口下手でうまく言えない。これって今の日本では“忖度”の物語として受け取れたりもしますよね。そういう社会への投げかけもありつつ、いろんなものを削ぎ落とした先に、真実の愛とはなにかという普遍的なテーマもあって。時代が変わっても人の心は変わらないから、今と通じるところがあると感じてもらえると思います」 何度も上演されてきた戯曲ではあるが、注目すべきは演出をイギリス出身の演出家、ショーン・ホームズさんが手がけるというところ。日本ではこれまで3作の舞台を手がけているが、そのいずれも、斬新さだけではない現代にしっかりリーチした解釈を加えつつ、観客の想像力を刺激する演出が話題になった。 「偶然にも3作とも観ているんですが、なかでも姉と一緒に観に行った『セールスマンの死』は衝撃でした。舞台の真ん中に黄色い冷蔵庫が置かれている演出がされていて、帰りに姉とその演出の意味についてずっと話しながら帰ったくらい。どの作品も、答えは明示されないけれど、しがみついて考えを巡らせたくなる面白さがあるんです。ショーンさんが今回話していたことで印象的だったのが『リアは最後までみんなにとっての王様でいたかった人なんじゃないか』という言葉です。衰退する中でも自分のやってきたこととか、存在を信じたい。その人が正気を失っていく中で、周りがどう変化していくか注目してほしいです」 演じるのは三女のコーディリアだが、江口のりこさん、田畑智子さんという強烈な姉ふたりが顔を揃えた。 「コーディリアは正直ないい子ではあると思うけれど、頑固ですよね。その後、自分の国を離れてフランス王に嫁ぐとか、すごく意志が強くて信念を曲げない人なんだろうなと。江口さんは、役をご自分に引き寄せながらも説得力を感じさせてくださる方。田畑さんとは共演経験は少ないですが、初めましてのときから安心感がありましたから、おふたりについていけば大丈夫だと、勝手に謎の安心感を抱いています(笑)」 幼い頃に舞台に魅了されこの世界に入った上白石さんだけに、「舞台は自分の原点みたいな場所」だという意識もあり、大事にしているそう。 「私はお稽古の時間がすごく好きなんです。映像の現場は、つねに完成されたものを出していかなくてはいけない場ですし、役者さんには役者さんの哲学があって、監督には監督の、撮影の方には撮影の方なりの哲学があって、現場でその足並みを揃えていく難しさを感じます。舞台は、時間をかけてゼロからみんなで作っていけますから、稽古の中で意見がぶつかっても、みんなで同じ方向を向いて進んでいきやすい。その一体感とか、そういう想いも一気にお客様にぶつけられるところもスリルがあって好きなんです。人の体と心ってどんどん変化していくので、作品もどんどん進化していくけれど、お客様に向けてつねに変わらないものを見せていく責任もあって。つねに課題があるからこそ挑戦したくなるんですよね」 PARCO PRODUCE 2024『リア王』 老齢から退位を決めたリア王(段田)は、3人の娘に、自分への愛情が深い者に領土を与えようと告げる。姉たち(江口、田畑)が美辞麗句を並べる中、実直さゆえ想いを言葉にできない末娘のコーディリア(上白石)は父王の怒りを買う。3月8日(金)~31日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス 作/ウィリアム・シェイクスピア 翻訳/松岡和子 演出/ショーン・ホームズ 出演/段田安則、小池徹平、上白石萌歌、江口のりこ、田畑智子、玉置玲央、入野自由、前原滉、盛隆二、平田敦子、高橋克実、浅野和之ほか マチネ1万1000円 ソワレ1万円 U‐30チケット5500円(観劇時30歳以下対象)ほか サンライズプロモーション東京 TEL:0570・00・3337(平日12:00~15:00) 新潟、愛知、大阪、福岡、長野公演あり。 かみしらいし・もか 2000年2月28日生まれ、鹿児島県出身。主な出演作に、ドラマ『パリピ孔明』『義母と娘のブルースFINAL』、映画『羊と鋼の森』など。adieu名義で歌手としても活動中。 ジャケット 参考価格¥64,900 ワンピース 参考価格¥52,800 タンクトップ 参考価格¥42,900(以上GANNI customerservice@ganni.com) イヤリング¥13,200 リング¥18,700(共にIRIS47/フーブス TEL:03・6447・1395) ※『anan』2024年3月13日号より。写真・野呂知功(TRIVAL) スタイリスト・道端亜未 ヘア&メイク・渋沢知美 インタビュー、文・望月リサ (by anan編集部) https://ananweb.jp/news/536589/ Source: ananweb